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カネール
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「さて、これからどうしますか?」
「あ、それなんだけど、弟を探そうにもこの騒ぎじゃそれどころじゃないでしょ?だから、一旦次の街に行こうかと思って。」
「なるほど。次の街と言えば…カネールですかね。」
カネール。別名水の都とも言われ、綺麗な真水が地下から湧いているらしい。その湧き水は生活に幅広く活用され、周辺の町村にも魔道転送ポンプを用いて水を引いてるのだとか。
魔道転送ポンプとは、水を引き上げ、その先にある魔法陣によって別の場所に転移させる魔道具だ。時代は進歩したものだ。
「ここからカネールまでは…徒歩で五日ほどでしょうか。」
「そうだね。また準備しないと。あ、お金も稼がなきゃ…。」
「あ、それなんですが。スタンピードの討伐報酬として、一人辺り十万シルドを分配したらしいです。ほら、俺達にも。」
そう言ってセインは小袋を私に渡す。中を見てみると、確かに十万シルドが入っている。
「…すごいね。」
「はい。一ヶ月分の生活費を余裕で賄えます。」
「これならお金の心配はいらないかな。よし、じゃあ準備しようか!」
「とは言っても、宿は道中にあるでしょうし、そこまで買うものもないと思いますが…。」
魔道結界石と呼ばれる魔道具が一般に普及してから三十年。そこからの人々の行動は早かった。まず、街と街を繋ぐ道の整備。そして、宿屋とそれに付随する道具屋の設置。これによって野宿する心配がなくなり、安心して旅ができるようになったのだ。…まぁ、魔道結界石は半径二百メートル程にしか効果がないし、値段も五十万シルドとお高い。それ故に、街道にもポツポツとしか配置出来ず、宿屋以外は危険なのは変わらないのだが。
「まあまあ。それにしても…。」
周りを見てふと考える。カルヴァーンを倒せなかったら、今笑いあっている親子も、話に花を咲かせているおばさん達も、皆ここにはいなかったのだ。そう思うと、改めて心底ホッとした。
「…守れましたね。」
「…うん。」
「あの魔法は…どんなものなんですか?」
「あれはね、簡単に言うと防壁を張って、結界内にいる対象に治癒効果をもたらす魔法だよ。発動する時に込めた魔力量によって強度と、防壁の停滞時間が変動するの。」
「なるほど。……つまり、全魔力をつぎ込んだ訳ですね?」
「う…。お、怒らないって言ったじゃん!」
笑顔で圧をかけてくるセインに精一杯反論する。しかし黒い笑顔は崩れない。なんだろう、セインって実は…S…?
「今なにかとっても失礼なこと思われた気がするんですが、気のせいですか?」
「き、気のせいだよ!あはは!」
「…はぁ、まあ良いです。」
その後買い物を済ませた私達は、明日街を出ることを決め宿に戻った。
「あ、それなんだけど、弟を探そうにもこの騒ぎじゃそれどころじゃないでしょ?だから、一旦次の街に行こうかと思って。」
「なるほど。次の街と言えば…カネールですかね。」
カネール。別名水の都とも言われ、綺麗な真水が地下から湧いているらしい。その湧き水は生活に幅広く活用され、周辺の町村にも魔道転送ポンプを用いて水を引いてるのだとか。
魔道転送ポンプとは、水を引き上げ、その先にある魔法陣によって別の場所に転移させる魔道具だ。時代は進歩したものだ。
「ここからカネールまでは…徒歩で五日ほどでしょうか。」
「そうだね。また準備しないと。あ、お金も稼がなきゃ…。」
「あ、それなんですが。スタンピードの討伐報酬として、一人辺り十万シルドを分配したらしいです。ほら、俺達にも。」
そう言ってセインは小袋を私に渡す。中を見てみると、確かに十万シルドが入っている。
「…すごいね。」
「はい。一ヶ月分の生活費を余裕で賄えます。」
「これならお金の心配はいらないかな。よし、じゃあ準備しようか!」
「とは言っても、宿は道中にあるでしょうし、そこまで買うものもないと思いますが…。」
魔道結界石と呼ばれる魔道具が一般に普及してから三十年。そこからの人々の行動は早かった。まず、街と街を繋ぐ道の整備。そして、宿屋とそれに付随する道具屋の設置。これによって野宿する心配がなくなり、安心して旅ができるようになったのだ。…まぁ、魔道結界石は半径二百メートル程にしか効果がないし、値段も五十万シルドとお高い。それ故に、街道にもポツポツとしか配置出来ず、宿屋以外は危険なのは変わらないのだが。
「まあまあ。それにしても…。」
周りを見てふと考える。カルヴァーンを倒せなかったら、今笑いあっている親子も、話に花を咲かせているおばさん達も、皆ここにはいなかったのだ。そう思うと、改めて心底ホッとした。
「…守れましたね。」
「…うん。」
「あの魔法は…どんなものなんですか?」
「あれはね、簡単に言うと防壁を張って、結界内にいる対象に治癒効果をもたらす魔法だよ。発動する時に込めた魔力量によって強度と、防壁の停滞時間が変動するの。」
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「今なにかとっても失礼なこと思われた気がするんですが、気のせいですか?」
「き、気のせいだよ!あはは!」
「…はぁ、まあ良いです。」
その後買い物を済ませた私達は、明日街を出ることを決め宿に戻った。
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