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カネール
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「で、あなたが使ったあの魔法、何?」
「え、ええと…。」
翌日。シャーネさんから呼び出された私達は、現在尋問を受けている。
「あんなすごい魔法見たことないわ!まあ、その分魔力消費がえぐそうだけど。んで、あれは何?派生魔法?それとも…継承魔法?」
「うーんと…なんか実家にあった本に書いてあったんですよ…。」
「実家?あなたの名前は確か、メノウ・リファリー…リファリー、リファリー…。」
ポクポクポク、チーン!何故かそんな効果音が聞こえた気がした。
「ああ思い出したわ!確かリファリー家って、対悪魔派閥のリーダー格の家柄よね。何でも、和平を結んでる現状に異を唱えて、徹底抗戦を明言してたとか。」
「え…。」
驚く私に気付かず、シャーネさんは一人でうんうんと頷いている。
「それなら納得ね!継承魔法の一つや二つあっても、何の不思議もない。でも、確か三年前に火事で…。」
「火事…?ってメノウ、大丈夫ですか?」
「あ、ごめんなさい…。あなたの前でこの話は酷だったわね…。」
「い、いえ…。」
口が、声が震える。指先が冷たい。この人は、核心とまでは言わなくとも、事情を把握している。もしかしたら、あまりここに居たらあの事がバレるかもしれない。それはまずい。
「えっと…用事はこれで終わりでしょうか…?それなら、私達は失礼させて頂きますが…。」
「あー、うん。最後に一つだけ。私は、あなた達の味方よ。」
「…ありがとうございます。」
きっと、彼女も悪魔に対して否定的なのだろう。だからこそリファリー家の人間である自分の味方であると言った。正直、全く嬉しくないし喜べない。
「…本当よ?ね、あなたからも言ってやって。」
「…え?」
この流れから言うと、シャーネさんの言う「あなた」とはセインの事だ。しかし、彼女は真っ直ぐ私を見ている。
「事情は分からないけど、あなたはこの子のこと、大切なんでしょ?ね、悪魔さん」。
「…っ!?」
思わず身動ぎしてしまった。だって、彼女が放った言葉が余りにも想定外すぎて。
「ずーっと不思議だったのよ。最初にあなたと対面した時は、微かに闇属性の魔力を感じたの。でも、カルヴァーン戦の時の魔法は光属性。普通、闇に適性がある人は強力な光属性魔法は扱えない。なのにあなたは使ってみせた。それでね、失礼だとは思ったけど、あなたの部屋にエアピックの魔法を仕込ませて貰ったわ。あなたは誰もいない部屋で会話していた。そしてその会話の中に…悪魔という単語が出てきた。そこから導き出される解答は一つ。」
何も、言葉が出てこない。なにか反論しなければと思えば思うほどドツボにハマっていく。
「…あなたは悪魔憑きだけれど、乗っ取られている訳じゃない。しかもあろう事か意志を通じ合わせている。あなたのあの言葉だけで分かったわ。二人が信頼し合ってるって事がね。」
「……。」
「いつもは身体の支配権をメノウ側が握っていると仮定しても、悪魔さんが乗っ取るつもりであったのなら、魔力欠乏症になった時点でそうするはず。でもそうはならなかった。つまり、悪魔さんはメノウの身体をどうこうするつもりがない。だから、私はあなたの味方と言ったのよ。もしも困ったことがあったら、私を頼りなさい。」
「…ありがとう、ございます…っ。」
全く同じ言葉なのに込められた思いは先程と全く違う、心からの感謝。まさか、味方してくれる人がいるとは思わなかったのだ。セインも否定はしなかったが、中立的な立ち位置だった。だからこそ、嬉しくて仕方なかったのだ。
「さあ、もう行きなさい。ほかの隊員や隊長に知られたら面倒なことになるからね。」
「はい…!」
泣きたい衝動を堪え、頭を下げて退室した。
「…味方が、いる。」
「……良かったですね、メノウ。」
横に立つセインは困ったような、寂しそうな笑みを浮かべていた。自分が全面的な味方になれない葛藤、理解者の登場による歓喜、それらが混ざってこその表情だろう。
「うん!」
そして私達はシャーネのいる仮拠点を後にしたのだった。
「え、ええと…。」
翌日。シャーネさんから呼び出された私達は、現在尋問を受けている。
「あんなすごい魔法見たことないわ!まあ、その分魔力消費がえぐそうだけど。んで、あれは何?派生魔法?それとも…継承魔法?」
「うーんと…なんか実家にあった本に書いてあったんですよ…。」
「実家?あなたの名前は確か、メノウ・リファリー…リファリー、リファリー…。」
ポクポクポク、チーン!何故かそんな効果音が聞こえた気がした。
「ああ思い出したわ!確かリファリー家って、対悪魔派閥のリーダー格の家柄よね。何でも、和平を結んでる現状に異を唱えて、徹底抗戦を明言してたとか。」
「え…。」
驚く私に気付かず、シャーネさんは一人でうんうんと頷いている。
「それなら納得ね!継承魔法の一つや二つあっても、何の不思議もない。でも、確か三年前に火事で…。」
「火事…?ってメノウ、大丈夫ですか?」
「あ、ごめんなさい…。あなたの前でこの話は酷だったわね…。」
「い、いえ…。」
口が、声が震える。指先が冷たい。この人は、核心とまでは言わなくとも、事情を把握している。もしかしたら、あまりここに居たらあの事がバレるかもしれない。それはまずい。
「えっと…用事はこれで終わりでしょうか…?それなら、私達は失礼させて頂きますが…。」
「あー、うん。最後に一つだけ。私は、あなた達の味方よ。」
「…ありがとうございます。」
きっと、彼女も悪魔に対して否定的なのだろう。だからこそリファリー家の人間である自分の味方であると言った。正直、全く嬉しくないし喜べない。
「…本当よ?ね、あなたからも言ってやって。」
「…え?」
この流れから言うと、シャーネさんの言う「あなた」とはセインの事だ。しかし、彼女は真っ直ぐ私を見ている。
「事情は分からないけど、あなたはこの子のこと、大切なんでしょ?ね、悪魔さん」。
「…っ!?」
思わず身動ぎしてしまった。だって、彼女が放った言葉が余りにも想定外すぎて。
「ずーっと不思議だったのよ。最初にあなたと対面した時は、微かに闇属性の魔力を感じたの。でも、カルヴァーン戦の時の魔法は光属性。普通、闇に適性がある人は強力な光属性魔法は扱えない。なのにあなたは使ってみせた。それでね、失礼だとは思ったけど、あなたの部屋にエアピックの魔法を仕込ませて貰ったわ。あなたは誰もいない部屋で会話していた。そしてその会話の中に…悪魔という単語が出てきた。そこから導き出される解答は一つ。」
何も、言葉が出てこない。なにか反論しなければと思えば思うほどドツボにハマっていく。
「…あなたは悪魔憑きだけれど、乗っ取られている訳じゃない。しかもあろう事か意志を通じ合わせている。あなたのあの言葉だけで分かったわ。二人が信頼し合ってるって事がね。」
「……。」
「いつもは身体の支配権をメノウ側が握っていると仮定しても、悪魔さんが乗っ取るつもりであったのなら、魔力欠乏症になった時点でそうするはず。でもそうはならなかった。つまり、悪魔さんはメノウの身体をどうこうするつもりがない。だから、私はあなたの味方と言ったのよ。もしも困ったことがあったら、私を頼りなさい。」
「…ありがとう、ございます…っ。」
全く同じ言葉なのに込められた思いは先程と全く違う、心からの感謝。まさか、味方してくれる人がいるとは思わなかったのだ。セインも否定はしなかったが、中立的な立ち位置だった。だからこそ、嬉しくて仕方なかったのだ。
「さあ、もう行きなさい。ほかの隊員や隊長に知られたら面倒なことになるからね。」
「はい…!」
泣きたい衝動を堪え、頭を下げて退室した。
「…味方が、いる。」
「……良かったですね、メノウ。」
横に立つセインは困ったような、寂しそうな笑みを浮かべていた。自分が全面的な味方になれない葛藤、理解者の登場による歓喜、それらが混ざってこその表情だろう。
「うん!」
そして私達はシャーネのいる仮拠点を後にしたのだった。
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