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「う、ううん…。」
「!メノウ!気が付きましたか?」
「あ、あれ…セイン。……あ、そっか、私…。」
あの時、サンクチュアリを発動した瞬間気絶したことを思い出した。やはり魔力欠乏症で倒れたのだ。という事は、もしかしたら一週間くらい経っているかもしれない。
「あ、あのセイン…あれからどのくらい経った…?」
「メノウが倒れたのは昨日ですよ。今は夜。まだ身体がダルいでしょうから横になってなさい。」
「え、あ、うん…。」
驚いた。まさかそんなに早く目が覚めるとは。以前一度だけ使った時は十日間眠っていたのに。密かにそう考えていると、じっとこちらを見つめるセインと目が合う。
「メノウ…。あなたは約束を破りました。」
「……。」
これは…もしかしなくてもお説教タイムだ。正直聞きたくない…しかし心配かけたのも事実なので甘んじて受けようではないか。
さあ、どんとこいと開き直って構えていたら、次に来たのは意外な言葉だった。
「でも…あの場でメノウがやらなかったら、恐らく全滅していたでしょう。それ程の強敵で、危機的状況でした。だから、今回は特別に許してあげます。」
仕方ないですね、とため息を吐きながら許しの言葉を紡ぐ。私はと言えば、お目目パチクリ。
「改めて…メノウ。俺達を助けてくれて、ありがとうございます。」
「い、いえそんな、お粗末さまです。」
いやなんだお粗末さまって。自分で自分にツッコミを入れるが、それ程テンパっていた。まさかのお咎めなしからの不意打ちお礼。てっきり怒られると思っていたのだから、無理もない。
私の気持ちが伝わったのか、セインはクスリと笑う。
「助けられたらお礼を言うのは人として当然のことですよ?まあでも、もっと自分を大切にしないとダメですけどね。」
「…はい。」
助けられたらお礼を言うのは当然…。そっか…そうだよね。
考えてみれば当たり前のことなのだが、今の私にとっては目からウロコのような心境だった。
「それでは、俺は自分の部屋に戻るのでメノウも休んでください。」
「あ、うん、ありがとう。」
セインが退室した途端、静けさに包まれる室内。はっきり言って眠気はゼロだ。
「ねえ、ディル。」
『……なに。』
「………ずっと、言えなかったんだよね。あの時も、この前も…私を助けてくれて、ありがとう。」
『っ!』
「ダメだなあ、私。助けられたのに、むしろあなたを責めて…本当、嫌になる。」
『……。』
「ねぇ、ディル。確かにもう少し方法はあったんじゃないかってまだ思ってるのも事実だけど、あの時あなたが出てこなかったら、私は間違いなく死んでた。ディルは命の恩人だよ。」
『…馬鹿じゃないの。悪魔に心を開くから、あんな事になったんじゃないの?』
ディルは、言葉のトゲで私を遠ざけようとしている。そう直感的に分かってしまった。きっと、あの出来事は、そして私の態度もディルをきっと傷付けたのだ。
「それは違うよ。」
だから、今度は逃げない。そのトゲすらも掴んで、彼に歩み寄る。
「悪魔だからとか関係ない。ディルは、あの時確かに私を守ろうとした。ううん、守ったんだよ。」
『メノウ、僕は…。』
「ディル。あなたは間違いなく私の一番の理解者で、友人で、仲間だから。」
『…っ!?』
「それだけ言いたかったの。だから…これからも…私の……傍、に…。」
瞼が重い。意外と体力が底をついていたのかもしれない。
『メノウ?……おやすみ。』
そんな彼の、久しぶりに聞く挨拶と共に私の意識は闇に沈んでいった。
「!メノウ!気が付きましたか?」
「あ、あれ…セイン。……あ、そっか、私…。」
あの時、サンクチュアリを発動した瞬間気絶したことを思い出した。やはり魔力欠乏症で倒れたのだ。という事は、もしかしたら一週間くらい経っているかもしれない。
「あ、あのセイン…あれからどのくらい経った…?」
「メノウが倒れたのは昨日ですよ。今は夜。まだ身体がダルいでしょうから横になってなさい。」
「え、あ、うん…。」
驚いた。まさかそんなに早く目が覚めるとは。以前一度だけ使った時は十日間眠っていたのに。密かにそう考えていると、じっとこちらを見つめるセインと目が合う。
「メノウ…。あなたは約束を破りました。」
「……。」
これは…もしかしなくてもお説教タイムだ。正直聞きたくない…しかし心配かけたのも事実なので甘んじて受けようではないか。
さあ、どんとこいと開き直って構えていたら、次に来たのは意外な言葉だった。
「でも…あの場でメノウがやらなかったら、恐らく全滅していたでしょう。それ程の強敵で、危機的状況でした。だから、今回は特別に許してあげます。」
仕方ないですね、とため息を吐きながら許しの言葉を紡ぐ。私はと言えば、お目目パチクリ。
「改めて…メノウ。俺達を助けてくれて、ありがとうございます。」
「い、いえそんな、お粗末さまです。」
いやなんだお粗末さまって。自分で自分にツッコミを入れるが、それ程テンパっていた。まさかのお咎めなしからの不意打ちお礼。てっきり怒られると思っていたのだから、無理もない。
私の気持ちが伝わったのか、セインはクスリと笑う。
「助けられたらお礼を言うのは人として当然のことですよ?まあでも、もっと自分を大切にしないとダメですけどね。」
「…はい。」
助けられたらお礼を言うのは当然…。そっか…そうだよね。
考えてみれば当たり前のことなのだが、今の私にとっては目からウロコのような心境だった。
「それでは、俺は自分の部屋に戻るのでメノウも休んでください。」
「あ、うん、ありがとう。」
セインが退室した途端、静けさに包まれる室内。はっきり言って眠気はゼロだ。
「ねえ、ディル。」
『……なに。』
「………ずっと、言えなかったんだよね。あの時も、この前も…私を助けてくれて、ありがとう。」
『っ!』
「ダメだなあ、私。助けられたのに、むしろあなたを責めて…本当、嫌になる。」
『……。』
「ねぇ、ディル。確かにもう少し方法はあったんじゃないかってまだ思ってるのも事実だけど、あの時あなたが出てこなかったら、私は間違いなく死んでた。ディルは命の恩人だよ。」
『…馬鹿じゃないの。悪魔に心を開くから、あんな事になったんじゃないの?』
ディルは、言葉のトゲで私を遠ざけようとしている。そう直感的に分かってしまった。きっと、あの出来事は、そして私の態度もディルをきっと傷付けたのだ。
「それは違うよ。」
だから、今度は逃げない。そのトゲすらも掴んで、彼に歩み寄る。
「悪魔だからとか関係ない。ディルは、あの時確かに私を守ろうとした。ううん、守ったんだよ。」
『メノウ、僕は…。』
「ディル。あなたは間違いなく私の一番の理解者で、友人で、仲間だから。」
『…っ!?』
「それだけ言いたかったの。だから…これからも…私の……傍、に…。」
瞼が重い。意外と体力が底をついていたのかもしれない。
『メノウ?……おやすみ。』
そんな彼の、久しぶりに聞く挨拶と共に私の意識は闇に沈んでいった。
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