悪魔の誓い

遠月 詩葉

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二人旅

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「という訳で、ディルは死んでないの。」
「…悪魔に身体を明け渡すなんて…。」

セインは、片手で目を覆って信じられないと言う様に頭を振った。確かに、有り得ない事だったのかもしれない。だが、少なくともあの時の私にとっては、それは当然の行動だと思えたのだ。

「じゃあ、その時からずっと彼は、あなたと共に…?」
「うん。」
「よく今まで無事でしたね。そのまま乗っ取られてもおかしくないのに。」
「…ディルは、そんな事しないよ。」

やはり、世間一般的にはそれが当たり前の認識なのだ。でも、ずっと一緒だった私には分かる。彼自身もそれは認めないけれど、本当は優しいんだって。ただ…人間の常識を知らないだけで。

「…すみません。俺としたことが、先入観だけで物を言ってました。謝罪します。」
『へぇ、随分と素直だね。別に気にしてないからどうでも良いけど。』
「…気にしてないだって。」

ディルはやはり少し捻くれている。

「で、何で彼はボロボロの姿で倒れていたんですか?それも、弟からは人間に殺されたと勘違いされて。確か、姉もそう思い込んでる様ですが…。」
「うーん…私も、ディルの事はあんまり詳しく知らないんだよね。それで、どうなの?」

また私は彼に問いかける。しかし、ディルは沈黙したままだ。

「ちょっと、何にも説明しないつもり?」
『そういう自分だって、彼に事情を話してないじゃないか。』
「っ!それは…っ!」

ディルの言う通りだ。相手にだけ一方的に尋ねるのはマナー違反じゃないだろうか。ならば自分もセインに過去を告白するか?…そんな事、出来る訳がなかった。

「…ごめんセイン、どうしても言いたくないっぽい。」
「ふぅ…。仕方ありませんね。今回だけは見逃します。が、もしまたディランとか言う悪魔が襲ってきたら…今度こそ聞かせてもらいますよ。」
『はいはい。』
「分かっただって。」

そんな事起きなければ良いが、それは難しいとも分かってしまう。近い未来に、彼はまた目の前に現れるだろう。

「さてと、今日はもう休みましょう。明日の昼頃には街に着くでしょうから、それから人探しですね。」
「うん、ありがとう。宜しくね。」
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