7 / 66
二人旅
7
しおりを挟む
「さてと、どうしますか?」
「うーん…もう宿はチェックアウトしちゃったから…。どのみち次の町まで徒歩で三日くらいかかるし、もう出発しちゃおうかな?」
ここから次の目的地、リベートまでは街道をひたすら進まなければならない。確か途中にいくつか宿屋も点在しているはずだ。
「わかりました。それじゃあ、行きましょうか。」
「うん!」
それにしても…。まさか私が誰かと旅をすることになるなんて思いもよらなかった。あんな出来事があってから、皆に避けられるようになって…ずっと孤独だったからかもしれない。無性に泣きたくなってしまった。
例え過去を知らないからこそ一緒にいられるだけの関係だとしても、人知れず疲弊していた私の心には何か染み渡るものがある。
「…?どうかしましたか?」
「ううん、なんでもない!」
それでも…いつかは終わりが来る。きっと、そう遠くない未来、彼は離れていく。ならばそれまでは、仲間でありたいと思う。そんな私の願いを悟られないように、小走りになってセインを追い抜いた。
「早く早く!」
「そんな急がなくても町は逃げませんよ…。」
「ノンノン、町は逃げなくても宿の空き部屋は逃げてくのよ!」
「…ああ、確かに。」
これは一本取られました、と屈託なく笑う彼からは、先程の雰囲気を微塵も感じない。吹っ切れたのかどうかはわからないが、少なくとも今は気が抜けてる感じがした。
「さてと、この街道をひたすらまっすぐね。う~ん、見事に地平線。」
つまり要約すると、何もない。なさすぎる。
「まあとにかく、魔物が出ないとも限りませんし、ほどほどに警戒しながら進みましょうか。
「そうね…ここまで遮るものが何もないんじゃ、「サーチ」も意味ないだろうし。」
「サーチ?」
首を傾げながら説明を求めるセイン。
(あれ、そんなにメジャーな魔法じゃないのかな?)
凄く便利なのに、勿体ない。まさか知らないとは思わず、ちょっと得意になりながら説明する。
「えっとね、範囲内に存在する生命反応の位置を察知したり、簡易的に地形を把握したり出来る魔法だよ。ただし、生命体の種族とかはわからないから敵か味方か判断がつかないんだけどね。」
「なるほど…。そんな便利な魔法もあるんですね。」
「うんうん、そのお陰で大した怪我もなく今まで何とか一人旅出来てたってのもあるかな。」
実際、これがなければ今頃は生きていなかったかもしれない。だって攻撃魔法は使えないし、弓の腕前は人並みだし、そもそも遠距離武器だから接近されてしまえばもう絶望しかない。だからこそ、仲間になってくれたセインの存在はそれはもう有難い。神様だと崇め奉りたい程だ。
「まあ、これからは俺も頼ってくださいね。魔法は使えませんが、一通り武術は嗜んでるので。」
「へえ、てことは銃以外も扱えたり?」
「ええ、それなりには。」
なんと、とてもそうは見えない…なんて言ったら怒られるだろうか。
「じゃあ、期待させてもらいま~す!」
「転ばないように気を付けてくださいよ?」
クルリと半回転してセインの方を向いたら、そう苦笑いを零された。そこまで子供っぽかっただろうか。
「大丈夫です~!もう、早く行くよ!」
「はいはい。」
「うーん…もう宿はチェックアウトしちゃったから…。どのみち次の町まで徒歩で三日くらいかかるし、もう出発しちゃおうかな?」
ここから次の目的地、リベートまでは街道をひたすら進まなければならない。確か途中にいくつか宿屋も点在しているはずだ。
「わかりました。それじゃあ、行きましょうか。」
「うん!」
それにしても…。まさか私が誰かと旅をすることになるなんて思いもよらなかった。あんな出来事があってから、皆に避けられるようになって…ずっと孤独だったからかもしれない。無性に泣きたくなってしまった。
例え過去を知らないからこそ一緒にいられるだけの関係だとしても、人知れず疲弊していた私の心には何か染み渡るものがある。
「…?どうかしましたか?」
「ううん、なんでもない!」
それでも…いつかは終わりが来る。きっと、そう遠くない未来、彼は離れていく。ならばそれまでは、仲間でありたいと思う。そんな私の願いを悟られないように、小走りになってセインを追い抜いた。
「早く早く!」
「そんな急がなくても町は逃げませんよ…。」
「ノンノン、町は逃げなくても宿の空き部屋は逃げてくのよ!」
「…ああ、確かに。」
これは一本取られました、と屈託なく笑う彼からは、先程の雰囲気を微塵も感じない。吹っ切れたのかどうかはわからないが、少なくとも今は気が抜けてる感じがした。
「さてと、この街道をひたすらまっすぐね。う~ん、見事に地平線。」
つまり要約すると、何もない。なさすぎる。
「まあとにかく、魔物が出ないとも限りませんし、ほどほどに警戒しながら進みましょうか。
「そうね…ここまで遮るものが何もないんじゃ、「サーチ」も意味ないだろうし。」
「サーチ?」
首を傾げながら説明を求めるセイン。
(あれ、そんなにメジャーな魔法じゃないのかな?)
凄く便利なのに、勿体ない。まさか知らないとは思わず、ちょっと得意になりながら説明する。
「えっとね、範囲内に存在する生命反応の位置を察知したり、簡易的に地形を把握したり出来る魔法だよ。ただし、生命体の種族とかはわからないから敵か味方か判断がつかないんだけどね。」
「なるほど…。そんな便利な魔法もあるんですね。」
「うんうん、そのお陰で大した怪我もなく今まで何とか一人旅出来てたってのもあるかな。」
実際、これがなければ今頃は生きていなかったかもしれない。だって攻撃魔法は使えないし、弓の腕前は人並みだし、そもそも遠距離武器だから接近されてしまえばもう絶望しかない。だからこそ、仲間になってくれたセインの存在はそれはもう有難い。神様だと崇め奉りたい程だ。
「まあ、これからは俺も頼ってくださいね。魔法は使えませんが、一通り武術は嗜んでるので。」
「へえ、てことは銃以外も扱えたり?」
「ええ、それなりには。」
なんと、とてもそうは見えない…なんて言ったら怒られるだろうか。
「じゃあ、期待させてもらいま~す!」
「転ばないように気を付けてくださいよ?」
クルリと半回転してセインの方を向いたら、そう苦笑いを零された。そこまで子供っぽかっただろうか。
「大丈夫です~!もう、早く行くよ!」
「はいはい。」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる