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二人旅
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「ああ、お帰りお嬢ちゃん…と、さっきは見かけなかったお兄さん。なんだ、一人って言ってたのに連れがいたのかい?」
「あ、違うんです。外れの森で偶然出会って…。あ、これ依頼の品です。」
「へえ、お嬢ちゃんに任せたやつ以外に森へ行く依頼なんてなかったがねえ…。まあいいや、お疲れ。これが報酬だよ。」
受付の人から渡された小袋には、四千シルドが入っていた。意外と良い額だ。
「あ、すみません。あと、この魔物の核を換金したいんですが…。」
そう言い、セインは核を五つともカウンターの上に並べた。それを見た瞬間、受付の女性が片眉を釣り上げる。
「ほう…。この大きさは、中型の魔物のものだね。ランクは…D級と言ったところか。まさか外れの森で?」
「そうですけど…。」
「どんな魔物だった?あそこは普段、小型の、それもE級程度の魔物しか生息してないんだよ。」
私とセインは顔を見合わせた。いきなり生息分布が変わるなんて、まさかそんなことがあるのだろうか。
「狼型の魔物でした。多分、五匹とも群れで行動してたのだと思いますが…。」
「狼型…。ありがとう、こちらで上に報告書を送っておくよ。それで換金だったね。情報料も上乗せさせて貰うよ。ほら、受け取りな。」
セインが渡された小袋の中を覗くと、なんと一万シルド。いくら何でも多すぎやしないかと、愕然としてしまう。
「…言っておくがな、正式な討伐依頼の場合その倍の報酬は支払われるよ。」
「なんですと!?」
初めて知った。今まで討伐依頼なんて見ようとも思わなかったから知らなかった。まさかここまで格差があるとは。
「逆に言うと、討伐以外で美味しい話と言えば、さっき貼りだされた様な貴族家絡みくらいのもんだよ。」
親指で依頼ボードを指しながら女性は言う。その貼り紙には、「急募!エクセトラン家の執事を雇います。試験を受ける方は下記連絡先まで。日給四万シルド」とあった。
「よ、四万…。日給四万とか世界が違うわあ…。ねえ、セイ…。」
振り向いた先には、険しい顔をして貼り紙を見つめてる…否、睨みつけているセインがいた。一瞬、ゾクリと肌があわだつ。怖い顔をしているセインにどう声をかけていいか分からず視線を右往左往させる。すると、そんな私の様子に気づいたのか、ハッと我に返ったかのように彼は申し訳なさそうに表情を繕った。
「すみません、なんでもないですから…。さあ、行きましょう?」
「え、うん…。」
何かあることは容易に想像つくが、それを聞く気にはならなかったし、これからも私から尋ねることはないだろう。まるで過去と決別するかの如く、毅然とした態度で踵を返すセイン。そんな彼の背中を追いかけ、私は依頼所を後にした。
「あ、違うんです。外れの森で偶然出会って…。あ、これ依頼の品です。」
「へえ、お嬢ちゃんに任せたやつ以外に森へ行く依頼なんてなかったがねえ…。まあいいや、お疲れ。これが報酬だよ。」
受付の人から渡された小袋には、四千シルドが入っていた。意外と良い額だ。
「あ、すみません。あと、この魔物の核を換金したいんですが…。」
そう言い、セインは核を五つともカウンターの上に並べた。それを見た瞬間、受付の女性が片眉を釣り上げる。
「ほう…。この大きさは、中型の魔物のものだね。ランクは…D級と言ったところか。まさか外れの森で?」
「そうですけど…。」
「どんな魔物だった?あそこは普段、小型の、それもE級程度の魔物しか生息してないんだよ。」
私とセインは顔を見合わせた。いきなり生息分布が変わるなんて、まさかそんなことがあるのだろうか。
「狼型の魔物でした。多分、五匹とも群れで行動してたのだと思いますが…。」
「狼型…。ありがとう、こちらで上に報告書を送っておくよ。それで換金だったね。情報料も上乗せさせて貰うよ。ほら、受け取りな。」
セインが渡された小袋の中を覗くと、なんと一万シルド。いくら何でも多すぎやしないかと、愕然としてしまう。
「…言っておくがな、正式な討伐依頼の場合その倍の報酬は支払われるよ。」
「なんですと!?」
初めて知った。今まで討伐依頼なんて見ようとも思わなかったから知らなかった。まさかここまで格差があるとは。
「逆に言うと、討伐以外で美味しい話と言えば、さっき貼りだされた様な貴族家絡みくらいのもんだよ。」
親指で依頼ボードを指しながら女性は言う。その貼り紙には、「急募!エクセトラン家の執事を雇います。試験を受ける方は下記連絡先まで。日給四万シルド」とあった。
「よ、四万…。日給四万とか世界が違うわあ…。ねえ、セイ…。」
振り向いた先には、険しい顔をして貼り紙を見つめてる…否、睨みつけているセインがいた。一瞬、ゾクリと肌があわだつ。怖い顔をしているセインにどう声をかけていいか分からず視線を右往左往させる。すると、そんな私の様子に気づいたのか、ハッと我に返ったかのように彼は申し訳なさそうに表情を繕った。
「すみません、なんでもないですから…。さあ、行きましょう?」
「え、うん…。」
何かあることは容易に想像つくが、それを聞く気にはならなかったし、これからも私から尋ねることはないだろう。まるで過去と決別するかの如く、毅然とした態度で踵を返すセイン。そんな彼の背中を追いかけ、私は依頼所を後にした。
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