悪魔の誓い

遠月 詩葉

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二人旅

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「それにしても、不思議だよね。なんで魔物って、倒したら体が消えちゃうんだろう。」
「さあ…。でもそのお陰で、核を取り出す手間が省けていますし。結果オーライじゃないですか?」

それもそうだ。とてもじゃないが体の中に手を入れて引きずり出すなんてことはしたくない。
五つ目の核を拾い終わったところで、当初の目的である薬草の採取を再開した。

「えっと、多分この袋いっぱいまで集めれば十分だと思う。」
「わかりました。」

どうやらセインは敬語がデフォルトらしく、中々砕けた口調にするのは難しいらしい。無理をさせる必要もないのでそのまま喋ってもらっているが、もしかしたら彼は貴族家かなんかの使用人だったのだろうか。動きの一つ一つが洗練されている気がする。

「どうかしましたか?」
「あ、ううんなんでもない。」

いけないいけない。私だって彼に詮索されたくない事情がある。それなのにこちらが勘ぐってしまうのはフェアじゃない。まあ、彼の方は隠そうとしてるわけではないのかもしれないが、それでも不用意に聞くことではないはずだ。

「セイン、そろそろ引き上げよう。」
「はい、それじゃあこの袋は俺が持ちますね。」
「え、いいよ!元々私が引き受けた依頼だし、このくらい全然持てるから!」
「でも、メノウの得物は弓でしょう?俺は銃ですから、片手が塞がってても瞬時に動けます。こういうのは適材適所でしょう。」

そう言われたら断りづらい。さてはセイン、策士なのか。
でも確かに彼の申し出は有難いので、お言葉に甘えることにした。

「じゃあ…よろしくお願いします。」
「はい。それじゃ、戻りましょうか。」

そうしてセインは私の前を歩きだす。ふわりと揺れる一房の金髪が、木漏れ日を浴びてキラキラと輝いていた。
まるで宝石みたいだ。私はそんな風に思いながら、彼の後ろをついて歩く。

「そういえば、町に着く頃には正午になっているでしょうが、お昼はどうしますか?」
「え?うーん…別に良いかなあ…。あ、でもセインが食べたければ…。」

そこまで言って、思わず口をつぐんだ。セインが立ち止まってこちらを振り返ったからだ。

「別に良いって…そんなわけないでしょう?人並み以上に動いているんですから、ちゃんと食事は摂らないと。倒れたらどうするんですか。」
「え、ええ…でも今までほとんど一日一食…。」
「はあ!?何考えてるんですか!そんなんじゃいつか行き倒れますよ!良いですね、今日から一日三食きっちり食べること。異論はないですね?」
「いや、えっと…。」
「な、い、で、す、ね?」

(ひい!笑顔なのに怖い!)

「わ、分かった分かったから!ちゃんと食べます!」
「宜しい。」

これからセインには逆らわないようにしよう…。そう決意した瞬間であった。
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