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出会い
3(side.??)
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「はあ、くそ…っ。なんで俺がこんな目にあわなきゃいけないんですか…。」
俺は、今朝まで貴族家の執事をしていた。そう、今朝までだ。
朝起きていつものように着替えていると、執事長から唐突に暇の令を出されたのだ。理由を聞いても、「お嬢様のご命令」としか言わない。こんな理不尽なことがあっていいのだろうか。
「物心ついた時から仕えてきて、今までずっと誠心誠意尽くしてきたっていうのに…。」
そよそよと頬を撫でる風が俺の金色の髪を浚う。やや長めの髪を後ろでひとまとめにしているが、いっその事切ってしまおうか。割と邪魔だ。お嬢様に綺麗だから伸ばせと言われてそのままにしていたが、もう必要ないだろう。
「…って、刃物持ってなかったんだった…。」
自棄になって外れの森まで足を踏み入れてしまったが、流石に帰った方が良いだろうか。いや、今の自分は一文無しだ。魔物が落とす核を手に入れるまでは引き返せない。幸いなことに、お嬢様を守る為に一通り武術は学んでいる。腰に差した銃の感触を掌に感じながら、俺は更に奥へと足を進めた。
「グガアアアアッ」
「!?」
突如後ろから魔物の唸り声が聞こえ、咄嗟に俺は振り向きざま銃を発砲した。ビシャっと地面に血が飛び散る。数メートル先に狼型の魔物が転がり落ちる。もし銃を撃たなかったら、今頃…。そう考えただけで、言い知れない恐怖が悪寒となって全身を駆け巡った。
「グルウアアッ!」
「な!?まだいるんですか!?」
辺りを見回すと、ざっと四匹…こちらの様子を窺うようにゆっくりと俺の周りを回るように移動していた。
(囲まれた!?)
これは…まずい。いわゆる絶体絶命というやつではないだろうか。
ああ、俺の20年間の人生って、一体何だったのだろうか。こんな無様な死に方をしなければならない事なんて、何一つしてないというのに。
俺は、自分の最期を脳裏に浮かべ…静かに瞳を閉じた…その時。
「危ない!」
「……え?」
一人の少女の声が耳に入ってきた。思わず目を開けると、狼型の魔物がこちらに牙を向け突進してくる姿が視界に映る。そして…それとほぼ同時、その影と俺の間を阻む障壁が現れた。
「大丈夫ですか!?」
「君は…。」
「話は後です!まずはあなたの武器に魔力を付与します。多分大抵の相手には当たるので、何とかしてください。」
「は、え、?」
そう言って少女は、俺の元に駆け寄り、武器に魔力を流し込む。魔術の知識も一応は学んでいたので存在は知っているが、実際に見たのは初めてだ。
「グアアアアッ」
「!来ます!」
俺は反射的に魔物の体向けて、引き金を引いた。するとどうしたことか、銃弾の周りに魔力がとぐろ巻き、それが炎となって巨大な熱の塊を作り上げた。たまらず魔物は後退するが、間に合わず銃弾が体を焼く。
「…すごい…。」
「まだです!油断しないで!」
「!」
それを見た魔物は激高し、一気に襲い掛かってきた。俺は即座に二発の弾丸を撃ちだし、少女は弓を引き絞り一体の魔物を貫いた。
「…もう、大丈夫そうですね。」
「…ああ、ありがとう。それで、君は…?」
そう尋ねると、赤茶色の髪をした少女は笑いながら名乗った。
「メノウ。メノウ・リファリーです。」
俺は、今朝まで貴族家の執事をしていた。そう、今朝までだ。
朝起きていつものように着替えていると、執事長から唐突に暇の令を出されたのだ。理由を聞いても、「お嬢様のご命令」としか言わない。こんな理不尽なことがあっていいのだろうか。
「物心ついた時から仕えてきて、今までずっと誠心誠意尽くしてきたっていうのに…。」
そよそよと頬を撫でる風が俺の金色の髪を浚う。やや長めの髪を後ろでひとまとめにしているが、いっその事切ってしまおうか。割と邪魔だ。お嬢様に綺麗だから伸ばせと言われてそのままにしていたが、もう必要ないだろう。
「…って、刃物持ってなかったんだった…。」
自棄になって外れの森まで足を踏み入れてしまったが、流石に帰った方が良いだろうか。いや、今の自分は一文無しだ。魔物が落とす核を手に入れるまでは引き返せない。幸いなことに、お嬢様を守る為に一通り武術は学んでいる。腰に差した銃の感触を掌に感じながら、俺は更に奥へと足を進めた。
「グガアアアアッ」
「!?」
突如後ろから魔物の唸り声が聞こえ、咄嗟に俺は振り向きざま銃を発砲した。ビシャっと地面に血が飛び散る。数メートル先に狼型の魔物が転がり落ちる。もし銃を撃たなかったら、今頃…。そう考えただけで、言い知れない恐怖が悪寒となって全身を駆け巡った。
「グルウアアッ!」
「な!?まだいるんですか!?」
辺りを見回すと、ざっと四匹…こちらの様子を窺うようにゆっくりと俺の周りを回るように移動していた。
(囲まれた!?)
これは…まずい。いわゆる絶体絶命というやつではないだろうか。
ああ、俺の20年間の人生って、一体何だったのだろうか。こんな無様な死に方をしなければならない事なんて、何一つしてないというのに。
俺は、自分の最期を脳裏に浮かべ…静かに瞳を閉じた…その時。
「危ない!」
「……え?」
一人の少女の声が耳に入ってきた。思わず目を開けると、狼型の魔物がこちらに牙を向け突進してくる姿が視界に映る。そして…それとほぼ同時、その影と俺の間を阻む障壁が現れた。
「大丈夫ですか!?」
「君は…。」
「話は後です!まずはあなたの武器に魔力を付与します。多分大抵の相手には当たるので、何とかしてください。」
「は、え、?」
そう言って少女は、俺の元に駆け寄り、武器に魔力を流し込む。魔術の知識も一応は学んでいたので存在は知っているが、実際に見たのは初めてだ。
「グアアアアッ」
「!来ます!」
俺は反射的に魔物の体向けて、引き金を引いた。するとどうしたことか、銃弾の周りに魔力がとぐろ巻き、それが炎となって巨大な熱の塊を作り上げた。たまらず魔物は後退するが、間に合わず銃弾が体を焼く。
「…すごい…。」
「まだです!油断しないで!」
「!」
それを見た魔物は激高し、一気に襲い掛かってきた。俺は即座に二発の弾丸を撃ちだし、少女は弓を引き絞り一体の魔物を貫いた。
「…もう、大丈夫そうですね。」
「…ああ、ありがとう。それで、君は…?」
そう尋ねると、赤茶色の髪をした少女は笑いながら名乗った。
「メノウ。メノウ・リファリーです。」
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