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兄に先に行ってと伝えたのに、兄は玄関の外で待っていて、私達は一緒に登校することになった。歩きながら、学校へと向かう。
「カルホなんか元気ないな」
あなたのせいですよ。
「うーん、今日の授業がクソつまらない感じとか?」
違います。
兄は腕を組みながら歩いて、私の思考の中を探ろうとしている。
「うーん、朝ご飯が気に入らなかったのか?」
全然違います。
兄の頭のキレの良さはここでは通じないようだ。
兄は腕を組むのをやめた。そして、困惑している顔になった。どうやら空気は読めるようだ。
「学校……楽しいか?カルホ……」
投げ掛ける質問が、たどたどしくなった。
しょうがなく私は首を縦に振った。
その瞬間、兄の顔が一気に明るくなる。
「お!そうか!それはよかったぞ」
兄は私が首を縦に振ると喜び、私は聞かれないように小さいため息を吐く。
学校なんて、義務じゃなければ行かないところだ。地獄のようなところだ。勉強は苦ではないが、知らない人達と勉強するのは苦である。
なんて、言ったとしたら、兄はどんな顔をするだろうか。
兄の顔をちらりと見て、目をそらす。
あんまり見ていると、なんだ?カルホ~とか言ってきそうなのだ。だから、チラ見程度にすることにした。
兄は安堵した顔になっていた。
学校まで近いため、しばらく歩いていると、いつの間にか校門の前に着き、校門の前に立っている人達から挨拶を受ける。
「あ!おはようございます!」
元気よく挨拶をしてきた生徒。それに対して兄はそれとなく返す。
「……おはようございます」
兄の発する言葉のトーンは、他人向けの時のトーンに切り替わっている。
そして、私は兄が言った言葉にすぐさま乗っかるように、軽く頭を下げる。
挨拶をしてきた生徒の顔を見ると、私のことを何も不思議がってはいないようだ。
よかった。
今日も心の中で安心する。私は声が出ない以外では、至って普通なのだと。
兄が私の手前を歩く。
すると、さらに前の方から元気な男子生徒の声が耳に入る。
「おーい!カルホ、おはよう!」
顔の前で手を振りながら、私に挨拶してくれる碧がいた。
今日は挨拶運動の当番だったのだろう。
挨拶運動は1年以外の学年であれば、回ってくる恒例当番であった。
兄は碧の近くまで歩くと、なんだ、こいつと言わんばかりに、碧の顔をまじまじと見る。
「カルホ、知り合いなのか?」
私に目を向け、兄が聞いてくる。
「カルホ、佐伯が兄ちゃんだったのか?」
私が反応するより先に碧が喋る。
兄のことを佐伯と呼んでいるらしい。
私も佐伯であるのだが、私のことは下の名前で呼んでいることに少し特別感を感じる。
「なんで、結城弟とカルホが知り合いになってるんだ?」
兄はまるで独り言のように、呟いている。私と碧が知り合っていることが、納得いかないようだ。
結城弟と兄が言っているのは、この前知ったことだが、碧には双子のお兄さんがいるからだ。その双子のお兄さんを一度見たことはあるのだが、碧とはかけ離れているくらい容姿も性格も似ていない。
私は無言のままでやり過ごそうとした。
そしたら、兄が急に私の手を取る。
!
驚いた。
そして、そのまま私の手をひっぱり、競歩のように歩いていく。
お兄ちゃん!?
「なんだ、あいつは。全く馴れ馴れしい」
兄は怒った口調で、私の手をひっぱりながら、どんどん歩いていく。
下駄箱まで着く間に、いろんな生徒達が私達の方を見てはいたが、兄はそんなのお構い無しだった。周りなど見えていなかった。
「カルホなんか元気ないな」
あなたのせいですよ。
「うーん、今日の授業がクソつまらない感じとか?」
違います。
兄は腕を組みながら歩いて、私の思考の中を探ろうとしている。
「うーん、朝ご飯が気に入らなかったのか?」
全然違います。
兄の頭のキレの良さはここでは通じないようだ。
兄は腕を組むのをやめた。そして、困惑している顔になった。どうやら空気は読めるようだ。
「学校……楽しいか?カルホ……」
投げ掛ける質問が、たどたどしくなった。
しょうがなく私は首を縦に振った。
その瞬間、兄の顔が一気に明るくなる。
「お!そうか!それはよかったぞ」
兄は私が首を縦に振ると喜び、私は聞かれないように小さいため息を吐く。
学校なんて、義務じゃなければ行かないところだ。地獄のようなところだ。勉強は苦ではないが、知らない人達と勉強するのは苦である。
なんて、言ったとしたら、兄はどんな顔をするだろうか。
兄の顔をちらりと見て、目をそらす。
あんまり見ていると、なんだ?カルホ~とか言ってきそうなのだ。だから、チラ見程度にすることにした。
兄は安堵した顔になっていた。
学校まで近いため、しばらく歩いていると、いつの間にか校門の前に着き、校門の前に立っている人達から挨拶を受ける。
「あ!おはようございます!」
元気よく挨拶をしてきた生徒。それに対して兄はそれとなく返す。
「……おはようございます」
兄の発する言葉のトーンは、他人向けの時のトーンに切り替わっている。
そして、私は兄が言った言葉にすぐさま乗っかるように、軽く頭を下げる。
挨拶をしてきた生徒の顔を見ると、私のことを何も不思議がってはいないようだ。
よかった。
今日も心の中で安心する。私は声が出ない以外では、至って普通なのだと。
兄が私の手前を歩く。
すると、さらに前の方から元気な男子生徒の声が耳に入る。
「おーい!カルホ、おはよう!」
顔の前で手を振りながら、私に挨拶してくれる碧がいた。
今日は挨拶運動の当番だったのだろう。
挨拶運動は1年以外の学年であれば、回ってくる恒例当番であった。
兄は碧の近くまで歩くと、なんだ、こいつと言わんばかりに、碧の顔をまじまじと見る。
「カルホ、知り合いなのか?」
私に目を向け、兄が聞いてくる。
「カルホ、佐伯が兄ちゃんだったのか?」
私が反応するより先に碧が喋る。
兄のことを佐伯と呼んでいるらしい。
私も佐伯であるのだが、私のことは下の名前で呼んでいることに少し特別感を感じる。
「なんで、結城弟とカルホが知り合いになってるんだ?」
兄はまるで独り言のように、呟いている。私と碧が知り合っていることが、納得いかないようだ。
結城弟と兄が言っているのは、この前知ったことだが、碧には双子のお兄さんがいるからだ。その双子のお兄さんを一度見たことはあるのだが、碧とはかけ離れているくらい容姿も性格も似ていない。
私は無言のままでやり過ごそうとした。
そしたら、兄が急に私の手を取る。
!
驚いた。
そして、そのまま私の手をひっぱり、競歩のように歩いていく。
お兄ちゃん!?
「なんだ、あいつは。全く馴れ馴れしい」
兄は怒った口調で、私の手をひっぱりながら、どんどん歩いていく。
下駄箱まで着く間に、いろんな生徒達が私達の方を見てはいたが、兄はそんなのお構い無しだった。周りなど見えていなかった。
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