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第三章:イザンカ王国
3-28:続報
しおりを挟む私とミリアリア姉さんが南側の城壁に到着して五号機の魔光弾ランチャーの調整をしていた時だった。
「伝達! 国境の砦に攻め込んでいたドドス軍が撤退してます!!」
その伝達を聞いて私たちは表情を明るくする。
だって、魔光弾の嵐に確実に「鋼鉄の鎧騎士」が全面に出て砦付近まで進軍すると予想していたからだ。
砦付近まで進軍されたら、こちらも「鋼鉄の鎧騎士」を出すしかない。
そろそろエイジたちレッドゲイルの増援も着くころだろうから、砦の六体とレッドゲイルからの増援だけではどう考えても分が悪い。
しかしドドス軍が撤退を始めたとの報告。
それはまさしく魔光弾ランチャーの効果があった証明となる。
「やりましたわ! きっと魔光弾ランチャーがうまくいったのですわ!!」
「だね! でなければドドス軍が撤退するはずがない。きっと魔光弾ランチャーでドドスの『鋼鉄の鎧騎士』に被害が出たんだ!!」
これで戦況は確実に変わる。
たとえ魔獣の群れを引き連れて対魔防御に強い「鋼鉄の鎧騎士」が出てきても魔光弾ランチャーで被害を与えられるということはここ千年近く主流となっていた戦に大きな変化をもたらすこととなる。
どんな綺麗事を言っても結局は戦いは数だよ、兄さんたち。
この魔光弾ランチャーが量産された暁には「鋼鉄の鎧騎士」なんて怖くはない。
「しかしそうすると次は確実にきますわね」
「そうだね、ドドス内部で国境の砦の情報が回らなければ……」
私がそう言いかけた時だった。
「敵襲っ!! ワイバーンの群れがこちらに飛んできます!!」
そう、西の魔獣が多い森のドドス潜伏部隊が動き出したのだ。
しかも先鋒を魔獣、それも空を飛べるワイバーンで来たか!!
「迎撃せよ! キャノンとタンクは前方へ!!」
南方を預かる将校が号令をかける。
空からの奇襲に対して弓矢や魔法、対防御魔法の準備をしなければならない。
しかし今回は違う。
「目標前方ワイバーンの群れ。構わんそのど真ん中にぶち込め!! 撃てぇーっ!!」
将校の指示で城壁の上のタンクタイプがワイバーンの群れに対して魔光弾を放った。
じじじじじぃぃ……
ばしゅ!
ばしゅ!!
両の肩に装備された長い魔光弾発射装置の先端が輝き、魔光弾を高速で放つ。
それはさながら長距離砲と同じくまだ遠くにその小さな影しか見えないワイバーンの群れに吸い込まれていく。
そして遠くでそれが何かに当たって炸裂して爆発をする。
流石に直撃を受けた個体は燃えながら地面へと落ちてゆく様子が望遠鏡で見て取れた。
正直、ここまで遠くに飛ぶ魔道具はそうそうないだろう。
なので完全に油断していたワイバーンたちは次発をまたもやもろに食らって爆炎を上げながら数体が地面に落ちていった。
「ヒドラです! 大きい!!」
だがすぐに誰かが叫ぶ。
上空だけでなく陸上からもまたほかの魔獣が出現した。
しかもこの辺では珍しいヒドラだ。
像よりも大きな四肢の体。
地竜にも似たそのシルエットだが、そこまで大きくはない。
だが特徴的なのはその体から生えている頭の数が数本と異形の姿をしている。
大型の個体ともなれば炎を吐くことから竜族に見なされているが、実際には亜竜と呼ばれワイバーン同様竜族とは違う。
本来ヒドラはもっと南方の温かい地方に生息する。
それがイザンカ付近に自然にいるはずもない。
ドドスの魔獣を操る術は確実に竜族以外にも適用出来ているらしい。
「あ、あれは…… グリフォンです! グリフォンも群れでやってきます!!」
次いで他の兵士も声を上げる。
やはりグリフォンまでも使役できたか!!
当時からイザンカ領内に魔獣たちを放ち、いろいろと仕掛けてきていたのがこれではっきりした。
この五年以上ドドスは虎視眈々とこちらに攻め入る機会をうかがっていたのだ。
「タンクは上空の連中を、キャノンタイプ、構わん地上の奴らに向かって撃てぇーっ!!」
将校の命令でタンクは引き続き上空の敵を、そしてキャノンタイプは地面をやってくるヒドラとグリフォンを狙って両肩の魔光弾を放ち始める。
じじじじぃ……
ぼしゅっ!
ぼしゅっ!!
放たれた魔光弾は次々とヒドラやグリフォンに着弾する。
流石に大型の魔獣ヒドラには効果が薄いも、その頭を破裂させたり体に炎を上げさせたりと、さすがのヒドラも悶絶している。
グリフォンに至っては直撃を受けた個体は四散し、慌てて飛び上がったも爆裂に吹き飛ばされて森の中に落ちて行く個体もいる。
正直完全にこちらの戦法が有利に動いていた。
だが、やはりここで出てきた。
「ドドスの『鋼鉄の鎧騎士』が出てきました!!」
最初は魔獣たちで様子見だったのだろう。
自国の兵士を使わないのは多分速攻でブルーゲイルを落とすつもりだったからだろう。
イザンカが魔獣たちに右往左往している間に南の城壁か門を破壊してドドスの「鋼鉄の鎧騎士」がなだれ込んできてブルーゲイルを制圧をするという腹づもりだったのかもしれない。
そうすれば簡単にブルーゲールが降伏すると思っていたのだろう。
しかし魔獣たちが全く役に立っていない状況下、対魔防御に特化した「鋼鉄の鎧騎士」を出すしかなくなってしまった。
予想外のことに慌てて「鋼鉄の鎧騎士」を出して決着をつける気になったというところか。
でも!
「ミリアリア姉さん!」
「準備はできていますわ! 魔晶石カートリッジはたくさん準備してありますわ!!」
そう言って五号機に魔光弾ランチャーを構えさせるのだった。
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