81 / 150
第三章:イザンカ王国
3-12:ブルーゲイル帰還
しおりを挟む「ただいま戻りました!」
私はブルーゲイルの城に戻ってアマディアス兄さんの執務室に行く。
すると、机で書類の処理をしていたアマディアス兄さんが慌てて立ち上がり、私の元までやって来てガシッと両の方を掴んで聞いてくる。
「アルム! ミリアリアと婚約したって本当かっ!?」
「はいッ!?」
てっきり魔鉱石の精製が上手く行ったかどうかを一番最初に聞かれると思っていた。
「イザーガから連絡があった、アルムがミリアリアと婚約するつもりだと! マルクス叔父さんはそれを快諾して、アルムがもう少し大きくなったら正式に発表すると父王に連絡が来ていたぞ!!」
うっわぁ~
何と言うフットワーク。
これ絶対にイザーガ兄さんが絡んでるよ。
何と言うか、うちの長兄たちはそう言った悪だくみが巧みだ。
しっかりと打算をしてたとえそれが婚姻などでも利用できるところはとことん利用する。
まぁ、最初は嫌がっていたアマディアス兄さんも最近はイータルモアと仲が良くなっているってエシュリナーゼ姉さんも言ってたけどね。
「どうなんだ…… まさかミリアリアにエシュリナーゼ同様襲われたのか?」
「なんでそうなるの!? と言うか、エシュリナーゼ姉さんが僕を襲うってどう言う事!?」
私が慌ててそう言うとアマディアス兄さんは意外そうな顔をして言う。
「いや、王族なので異母兄弟は一緒になれるからな。私としてはアルムにこのブルーゲイルにずっといて欲しいから父王にもエシュリナーゼとの事を進言したのだが?」
うぉおおぉぉぃぃいいいぃっ!
エシュリナーゼ姉さんをけしかけていたのはあんたか―ぃいいぃっ!!!!
「なんで僕がエシュリナーゼ姉さんと結婚しなきゃならないんだよ!!」
「それは弟はすべからく姉の奴隷だからよ!」
アマディアス兄さんとそんなやり取りをしていると後ろからエシュリナーゼ姉さんの声が聞こえて来たぁ!?
ビクッとして恐る恐る振り返ると髪の毛を逆立てているエシュリナーゼ姉さんがいた。
「アルム……あれだけ言ったのにぃ……」
あ、これ本気で怒ってるやつだ。
流石に付き合いが長いのでエシュリナーゼ姉さんのとさかに来る度合い位理解している。
私は黙って【絶対防壁】を周りに展開する。
「ダメって言ったでしょ! アルムは私の! ミリアリアなんかに渡さないんだからぁッ!!!!」
どッカーンっ!!
はい何時もの来ました!
エシュリナーゼ姉さんは火炎系の呪文を高速で唱える。
そしていきなり私に向かってファイアーボールが数発撃ちこまれる。
正直、並の魔法使いでは一個出すのが関の山。
それを数発出せるのだから、ミリアリア姉さんには届かないけどエシュリナーゼ姉さんも相当なものだ。
「ごほごほ、エシュリナーゼ! いきなり魔法を使うなっ!!」
「だって、アルムがぁッ!!!!」
アマディアス兄さんの言葉に、なんかいつになくエシュリナーゼ姉さんが我が儘だ。
と言うかアマディアス兄さん、あなた私がいるの分かっていたから自分で防御魔法かけてませんね?
もし当たってたら火傷じゃすまないのよ、今の魔法。
ばんッ!
「アマディアス様どうしたですぅ!?」
隣の部屋に続く扉が開いてイータルモアが慌ててやって来る。
「刺客ですぅ!? それとも魔物の襲撃ですぅ!?」
「落ち着けモア、エシュリナーゼの癇癪だ」
「エシュリナーゼちゃんですぅ?」
アマディアス兄さんにそう言われ、イータルモアは扉の所で涙目になっているエシュリナーゼ姉さんを見る。
そして慌ててハンカチを取り出してエシュリナーゼ姉さんの元へ行く。
「どうしたですぅ? エシュリナーゼちゃんでっすぅ!?」
「ううぅ、アルムがアルムがぁ!!」
エシュリナーゼ姉さんはそう言って自分より年下(?)のはずのイータルモナの胸に泣きつく。
するとイータルモアはきっとこちらを睨んで言う。
「アルム君なにしたですぅ!? 女の子泣かすなんていけないですぅ!!」
「あ、あのねイータルモア……」
完全にエシュリナーゼ姉さんの味方になっているイータルモア。
私はため息を吐きながら仕方なく説明をするのだった。
*
「つまりかくかくしかじかで、ミリアリア姉さんを手助けするつもりが実はミリアリア姉さんも本気で僕が好きだったと」
「なるほどですぅ。ならばアルム君もアマディアス様と同じく複数の奥さんを持てばいいのですぅ!」
ドヤ顔でとんでもない事を言うイータルモア。
「あ、あのねえイータルモア、僕まだ十歳だよ?」
「大丈夫です、子供が作れるようになれば立派な大人ですぅ! お母様なんか小さな頃に竜変化して理性が吹き飛んだらお婆様にぶんなぐられて鐘突き堂に人の姿のまましばらく貼り付けの刑にされたですぅ。小さくても大丈夫ですぅ!」
「いやそれ竜族だからだよ! 人族でそれされたら死んじゃうって!!」
「でもおかげでお母様はお父さんと出会えたですぅ。その頃お母様はまだ初潮も来ていない幼女だったですぅ。でもお婆様に許可もらってお父さんの所に押しかけ女房したですぅ!」
いや、竜族って一体……
私は頭痛を覚えてからエシュリナーゼ姉さんを見る。
「とにかく、今は僕は誰かと一緒になるつもりなんて無いからね!」
「ダメヨ! アルムは私のぉっ!」
「やめないさい、姉さんなんでしょ? 駄々こねない!!」
十歳の弟に諭される二十歳の姉の姿がそこにあったのだった。
* * *
「こほん、少し感情的になってしまった。アルムがレッドゲイルに取られてしまうのではないかと焦ってしまってな」
「なぜそうなるかは今は聞きません。それで、魔鉱石を精製して魔鉄の生産に成功しました。ミリアリア姉さんからこれを」
そう言ってミリアリア姉さんたちが立てた「ヴィ作戦」の書類を手渡す。
アマディアス兄さんはそれを走り読みして顔をあげて聞く。
「出来るのか、アルム?」
「ミリアリア姉さんと僕が協力すればいけます。ただ、問題は二号機となるあの白銀のオリジナルですが……」
言いながらイータルモアを見る。
もともと連結型魔晶石核がオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」に搭載されていたという情報はイータルモアからだった。
彼女の性格から言ってふざけているような態度が多いけど嘘は言わない。
だからそれは事実なのだろう。
でも……
「オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』はツインドライブシステムを搭載してたってエマニエルさんから聞きました」
私がそう言うと、イータルモアはきょとんとする。
そして首をかしげしばし考えこむ。
「そう言えば、その昔お婆様から聞いたようなですぅ…… あ、でもそれってティアナ姫の赤いやつで、あれは特別で沢山の魔結晶石核搭載型のスペシャルだって聞いたような……」
ん?
それどう言う事??
「確か、赤い機体はスペシャルで空も飛べたと言ってましたですぅ。赤竜のセキおばさ……セキお姉ちゃんが負けたって言ってたやつですぅ!」
ちょと待て、おばさんをお姉さんに言い直したのは置いといて、今「赤竜」とか言わなかったか?
確か今は女神様の下僕に収まっていると言う黒龍に並ぶ「女神殺しの竜」じゃなかったのか?
伝説では確かにティアナ姫の駆る「鋼鉄の鎧騎士」が赤竜を退治したって言われてるけど、それって史実だったの!?
「じゃ、じゃぁツインドライブシステムにしたらうちにあるオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』も?」
「あ、それは無理ですぅ。ツインドライブシステムを扱える操縦者は特別で、普通の人が乗ったらたちまち魂を吸い取られて干乾びてしまうですぅ。だから扱える者がいなくなって危ないからってお婆様が封印したですぅ!」
ここでいうお婆様って女神様の事だろう。
しかし、そんな危ないものなのか、連結型魔晶石核って?
「私も昔聞いただけで詳しくはないですうぅ。が、一個だけでも通常の「鋼鉄の鎧騎士」の五倍の出力は出るってお婆様が言ってたですぅ。だから今の人族が扱えるのはここが限界だろうって言ってたですぅ」
ほほぉ~。
今の技術力じゃそれさえ扱うのが難しいと?
過去に出来て今は出来ないとおっしゃりますかぁ~?
『ふふふふふ、面白い。今までどれだけの修羅場を乗り越えてきたと思ってるのよ?』
思わず日本語でそう言ってしまう。
それにイータルモアはぴくんと反応するけど、首をかしげるだけだった。
「はぁ~、イザンカ王もご理解いただけて大満足ですわぁ♡」
「アルム君、ここにいるの!? ミリアリア姉さんとの事って本当ですか!?」
「お兄様っ! どう言う事か説明してください!! でないと私はお兄様を刺してしまいそうです!! そして自分も自害します!!」
私が技術者魂に火がついてやる気がモリモリと出て来た頃、父王に挨拶に行くと単独で行ってしまったミリアリア姉さんと、ここで登場のアプリリア姉さんにエナリア。
口々に何か言っている様だけど、今の私は新型の「鋼鉄の鎧騎士」作成に燃えていた。
「ミリアリア姉さん、早速作るよ!!」
「まっ//////! アルムなんて大胆ですの!? でも、私たちにはまだ子供は早いですわよ♡」
「そうじゃないってば! 『鋼鉄の鎧騎士』! 見てろよぉ、連結型魔晶石核をフル活用してやる!!」
ミリアリア姉さんのボケはさらっとはじいて、私はやる気まんまになるのだった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

領地育成ゲームの弱小貴族 ~底辺から前世の知識で国強くしてたらハーレムできてた~
黒おーじ
ファンタジー
16歳で弱小領地を継いだ俺には前世の記憶があった。ここは剣と魔法の領地育成系シュミレーションゲームに似た世界。700人の領民へ『ジョブ』を与え、掘削や建設の指令を出し、魔境や隣の領土を攻めたり、王都警護の女騎士やエルフの長を妻にしたりと領地繁栄に努めた。成長していく産業、兵力、魔法、資源……やがて弱小とバカにされていた辺境ダダリは王国の一大勢力へと上り詰めていく。
※ハーレム要素は無自覚とかヌルいことせずにガチ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる