アルム~アラ40女子がいきなり異世界の第三王子に転生して無意識に無双してプチハーレム状態なんだけど、私はBL要素が見たいの!!~

さいとう みさき

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第三章:イザンカ王国

3-12:ブルーゲイル帰還

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「ただいま戻りました!」


 私はブルーゲイルの城に戻ってアマディアス兄さんの執務室に行く。
 すると、机で書類の処理をしていたアマディアス兄さんが慌てて立ち上がり、私の元までやって来てガシッと両の方を掴んで聞いてくる。


「アルム! ミリアリアと婚約したって本当かっ!?」

「はいッ!?」


 てっきり魔鉱石の精製が上手く行ったかどうかを一番最初に聞かれると思っていた。


「イザーガから連絡があった、アルムがミリアリアと婚約するつもりだと! マルクス叔父さんはそれを快諾して、アルムがもう少し大きくなったら正式に発表すると父王に連絡が来ていたぞ!!」


 うっわぁ~
 何と言うフットワーク。
 これ絶対にイザーガ兄さんが絡んでるよ。
 何と言うか、うちの長兄たちはそう言った悪だくみが巧みだ。
 しっかりと打算をしてたとえそれが婚姻などでも利用できるところはとことん利用する。

 まぁ、最初は嫌がっていたアマディアス兄さんも最近はイータルモアと仲が良くなっているってエシュリナーゼ姉さんも言ってたけどね。


「どうなんだ…… まさかミリアリアにエシュリナーゼ同様襲われたのか?」

「なんでそうなるの!? と言うか、エシュリナーゼ姉さんが僕を襲うってどう言う事!?」

 私が慌ててそう言うとアマディアス兄さんは意外そうな顔をして言う。

「いや、王族なので異母兄弟は一緒になれるからな。私としてはアルムにこのブルーゲイルにずっといて欲しいから父王にもエシュリナーゼとの事を進言したのだが?」


 うぉおおぉぉぃぃいいいぃっ!
 エシュリナーゼ姉さんをけしかけていたのはあんたか―ぃいいぃっ!!!!


「なんで僕がエシュリナーゼ姉さんと結婚しなきゃならないんだよ!!」


「それは弟はすべからく姉の奴隷だからよ!」


 アマディアス兄さんとそんなやり取りをしていると後ろからエシュリナーゼ姉さんの声が聞こえて来たぁ!?
 ビクッとして恐る恐る振り返ると髪の毛を逆立てているエシュリナーゼ姉さんがいた。


「アルム……あれだけ言ったのにぃ……」


 あ、これ本気で怒ってるやつだ。
 流石に付き合いが長いのでエシュリナーゼ姉さんのとさかに来る度合い位理解している。
 私は黙って【絶対防壁】を周りに展開する。


「ダメって言ったでしょ! アルムは私の! ミリアリアなんかに渡さないんだからぁッ!!!!」


 どッカーンっ!!


 はい何時もの来ました!
 エシュリナーゼ姉さんは火炎系の呪文を高速で唱える。
 そしていきなり私に向かってファイアーボールが数発撃ちこまれる。
 正直、並の魔法使いでは一個出すのが関の山。
 それを数発出せるのだから、ミリアリア姉さんには届かないけどエシュリナーゼ姉さんも相当なものだ。


「ごほごほ、エシュリナーゼ! いきなり魔法を使うなっ!!」

「だって、アルムがぁッ!!!!」


 アマディアス兄さんの言葉に、なんかいつになくエシュリナーゼ姉さんが我が儘だ。
 と言うかアマディアス兄さん、あなた私がいるの分かっていたから自分で防御魔法かけてませんね?
 もし当たってたら火傷じゃすまないのよ、今の魔法。


 ばんッ!

「アマディアス様どうしたですぅ!?」


 隣の部屋に続く扉が開いてイータルモアが慌ててやって来る。


「刺客ですぅ!? それとも魔物の襲撃ですぅ!?」

「落ち着けモア、エシュリナーゼの癇癪だ」

「エシュリナーゼちゃんですぅ?」


 アマディアス兄さんにそう言われ、イータルモアは扉の所で涙目になっているエシュリナーゼ姉さんを見る。
 そして慌ててハンカチを取り出してエシュリナーゼ姉さんの元へ行く。


「どうしたですぅ? エシュリナーゼちゃんでっすぅ!?」

「ううぅ、アルムがアルムがぁ!!」


 エシュリナーゼ姉さんはそう言って自分より年下(?)のはずのイータルモナの胸に泣きつく。

 するとイータルモアはきっとこちらを睨んで言う。


「アルム君なにしたですぅ!? 女の子泣かすなんていけないですぅ!!」


「あ、あのねイータルモア……」

 完全にエシュリナーゼ姉さんの味方になっているイータルモア。
 私はため息を吐きながら仕方なく説明をするのだった。

 
 *


「つまりかくかくしかじかで、ミリアリア姉さんを手助けするつもりが実はミリアリア姉さんも本気で僕が好きだったと」

「なるほどですぅ。ならばアルム君もアマディアス様と同じく複数の奥さんを持てばいいのですぅ!」

 ドヤ顔でとんでもない事を言うイータルモア。

「あ、あのねえイータルモア、僕まだ十歳だよ?」

「大丈夫です、子供が作れるようになれば立派な大人ですぅ! お母様なんか小さな頃に竜変化して理性が吹き飛んだらお婆様にぶんなぐられて鐘突き堂に人の姿のまましばらく貼り付けの刑にされたですぅ。小さくても大丈夫ですぅ!」

「いやそれ竜族だからだよ! 人族でそれされたら死んじゃうって!!」

「でもおかげでお母様はお父さんと出会えたですぅ。その頃お母様はまだ初潮も来ていない幼女だったですぅ。でもお婆様に許可もらってお父さんの所に押しかけ女房したですぅ!」

 いや、竜族って一体……

 私は頭痛を覚えてからエシュリナーゼ姉さんを見る。


「とにかく、今は僕は誰かと一緒になるつもりなんて無いからね!」

「ダメヨ! アルムは私のぉっ!」

「やめないさい、姉さんなんでしょ? 駄々こねない!!」


 十歳の弟に諭される二十歳の姉の姿がそこにあったのだった。


 * * *


「こほん、少し感情的になってしまった。アルムがレッドゲイルに取られてしまうのではないかと焦ってしまってな」

「なぜそうなるかは今は聞きません。それで、魔鉱石を精製して魔鉄の生産に成功しました。ミリアリア姉さんからこれを」


 そう言ってミリアリア姉さんたちが立てた「ヴィ作戦」の書類を手渡す。
 アマディアス兄さんはそれを走り読みして顔をあげて聞く。


「出来るのか、アルム?」

「ミリアリア姉さんと僕が協力すればいけます。ただ、問題は二号機となるあの白銀のオリジナルですが……」


 言いながらイータルモアを見る。
 もともと連結型魔晶石核がオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」に搭載されていたという情報はイータルモアからだった。
 彼女の性格から言ってふざけているような態度が多いけど嘘は言わない。
 だからそれは事実なのだろう。
     
 でも……


「オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』はツインドライブシステムを搭載してたってエマニエルさんから聞きました」


 私がそう言うと、イータルモアはきょとんとする。
 そして首をかしげしばし考えこむ。

「そう言えば、その昔お婆様から聞いたようなですぅ…… あ、でもそれってティアナ姫の赤いやつで、あれは特別で沢山の魔結晶石核搭載型のスペシャルだって聞いたような……」


 ん?
 それどう言う事??


「確か、赤い機体はスペシャルで空も飛べたと言ってましたですぅ。赤竜のセキおばさ……セキお姉ちゃんが負けたって言ってたやつですぅ!」


 ちょと待て、おばさんをお姉さんに言い直したのは置いといて、今「赤竜」とか言わなかったか?

 確か今は女神様の下僕に収まっていると言う黒龍に並ぶ「女神殺しの竜」じゃなかったのか?
 伝説では確かにティアナ姫の駆る「鋼鉄の鎧騎士」が赤竜を退治したって言われてるけど、それって史実だったの!?


「じゃ、じゃぁツインドライブシステムにしたらうちにあるオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』も?」

「あ、それは無理ですぅ。ツインドライブシステムを扱える操縦者は特別で、普通の人が乗ったらたちまち魂を吸い取られて干乾びてしまうですぅ。だから扱える者がいなくなって危ないからってお婆様が封印したですぅ!」

 ここでいうお婆様って女神様の事だろう。

 しかし、そんな危ないものなのか、連結型魔晶石核って?


「私も昔聞いただけで詳しくはないですうぅ。が、一個だけでも通常の「鋼鉄の鎧騎士」の五倍の出力は出るってお婆様が言ってたですぅ。だから今の人族が扱えるのはここが限界だろうって言ってたですぅ」


 ほほぉ~。
 今の技術力じゃそれさえ扱うのが難しいと?
 過去に出来て今は出来ないとおっしゃりますかぁ~?


『ふふふふふ、面白い。今までどれだけの修羅場を乗り越えてきたと思ってるのよ?』


 思わず日本語でそう言ってしまう。
 それにイータルモアはぴくんと反応するけど、首をかしげるだけだった。


「はぁ~、イザンカ王もご理解いただけて大満足ですわぁ♡」

「アルム君、ここにいるの!? ミリアリア姉さんとの事って本当ですか!?」

「お兄様っ! どう言う事か説明してください!! でないと私はお兄様を刺してしまいそうです!! そして自分も自害します!!」


 私が技術者魂に火がついてやる気がモリモリと出て来た頃、父王に挨拶に行くと単独で行ってしまったミリアリア姉さんと、ここで登場のアプリリア姉さんにエナリア。

 口々に何か言っている様だけど、今の私は新型の「鋼鉄の鎧騎士」作成に燃えていた。


「ミリアリア姉さん、早速作るよ!!」

「まっ//////! アルムなんて大胆ですの!? でも、私たちにはまだ子供は早いですわよ♡」

「そうじゃないってば! 『鋼鉄の鎧騎士』! 見てろよぉ、連結型魔晶石核をフル活用してやる!!」



 ミリアリア姉さんのボケはさらっとはじいて、私はやる気まんまになるのだった。 

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