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第三章:イザンカ王国

3-4:レッドゲイル

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 レッドゲイルはイザンカ王国首都、ブルーゲイルに何か有った時の為に存在する第二都市だ。
 なのであそこはあそこでいろいろな施設がそろっている。


「イザーガ兄さんの所の工房、魔晶石をたくさん送り込めば魔鉱石の精製が出来るね!!」

 私はミリアリア姉さんにそう言って早速準備をする。
 魔鉱石は市場に出回っている物を買い集めれば何とかなる。
 そして今や魔晶石の再充填の責任者となっているエマニエルさんの所に私が手伝いに行けば、いくらでも使い終わった魔晶石が復活できる。

 ちなみに、エマニエルさんは私の教育係としての仕事は一年前に解任されて、主に魔晶石再充填の仕事をさせられている。


「そうですわね……でも、そうなると一度レッドゲイルに行かなくてはですわ。魔力伝達が良い素材を作るにはそれ相応の指導をしなければですわ……」

 そう言うミリアリア姉さんの表情はあまり良くない。
 不思議に思い、私は聞いてみる。

「どうしたのミリアリア姉さん? なんか浮かない顔をして」

「今レッドゲイルに戻ると、又お父様がうるさいのですわ……」

 そう言ってそっぽを向く。
 一体何がそんなにうるさいと言うのだろうか??

「マルクス叔父さんがどうしたの?」

 私が更にそう聞くとミリアリア姉さんはキッとこちらを睨んで言う。


「アルムが私を娶らないのがいけないのですわ!!」

「はぁっ? なんで僕がミリアリア姉さんを娶らないのが悪いんだよ??」


 いきなりとんでもない事言い出すミリアリア姉さん。
 なんで私がミリアリア姉さんを娶る必要があるってんだろう?


「実家に戻ると私はもう十八歳、あれやこれやと縁談の話が有ってお父様のお目にかなう殿方とお見合いをさせられるのですわ! もしお父様がその殿方を御気に召したら私の意思など関係なくそこへ嫁がされるのですわ!!」


 少し涙目になってミリアリア姉さんは私を睨む。
 私は思わずため息を吐きながら言う。

「そりゃぁ、好きでも無い人と結婚させられるのは嫌だってのは分かるけど、なんで僕がミリアリア姉さんの相手になるんだよ?」

「それは、王家の第三王子ですし将来有望ですし、王位継承権争いにはあまり関係しないので安定していそうだしですわ……」

 なるほど、ミリアリア姉さんがしょっちゅう私に迫っているのは周りに自分の意思表示をしてお見合いとかを回避するためだったのか。

 確かにいとこ同士なら結婚できる。
 でもミリアリア姉さんみたいに美人が八つも年下の男の子相手に本気で恋愛をするわけがない。
 もしかしたら、ブルーゲイルに本命がいたりするとか?

 あ、もしかして魔道技師のイケメンなエザリクさんとか??
 いや、私だったらちょっと年上だけど今年三十歳になるガナルさんも捨てがたい。
 ガナルさんって男性としての魅力が高いもんなぁ~。

 ぐふっ♡

 考えてみれば一緒に「鋼鉄の鎧騎士」作ってる魔道技師たちにもイケメンぞろいなんだよなぁ~♪
 そんな事を思いながら私はミリアリア姉さんに言う。


「つまり、ミリアリア姉さんはまだ結婚とかしたくないって事なんでしょ? ちゃんと好きな人がいるってわけだから、そう言ったお見合いは断りたいと」

「そ、そうですわよ! だからアルムが協力してくれればですわ///////」

 なるほど、今の私はまだ十歳。
 口約束でもそう取り付けていればマルクス叔父さんも当分は何も言えなくなると言う事か。
 ミリアリア姉さんはミリアリア姉さんでその間に本当に好きな人と仲を進展させてと。

 う~ん、分かる!

 私も前世では恋愛に苦労した口だからね~。


「だったら、僕も一緒にレッドゲイルに行ってあげるよ。そして僕とミリアリア姉さんが仲が良くて将来を考えているって言えばマルクス叔父さんも当分はミリアリア姉さんに対してお見合いだのなんだの言わなくなるでしょ?」


「アルムっ////////♡!!!!」


 私がミリアリア姉さんの為に協力を申し出ると、ミリアリア姉さんは大喜びで私に抱き着いてくる。
 まぁ、アプリリア姉さんに引けを取らないスキンシップが多い姉だから、今更ではあるけど。

「本当に協力してくれるのですわね? 私、本気で頑張りますわよ!?」

「はいはい、ミリアリア姉さんが困ってんだもんね、僕も可能な限り協力するよ。ミリアリア姉さんが本当に好きな人と一緒に居られるようにね」


「アルムぅ♡!」


 そう言ってミリアリア姉さんは更に感謝の抱擁を強めるのだった。
 

 * * *


「レッドゲルにか?」

「はい、今開発中の『鋼鉄の鎧騎士』の素材となる魔鉱石の加工をレッドゲイルの工房でしたいので」


 私は今アマディアス兄さんの所へ来ていた。
 横でイータルモアが幸せそうな顔してお腹を擦っている。

  
「こちらでの精製は難しいのか?」

「うん、こっちだとばらつきが酷いんですよ」

「今回レッドゲイルで出来あがった工房の魔力炉は魔力投入さえ出来れば容易に魔鉱石の溶解が出来るほどですわ。今のブルーゲイルの魔力炉はそこまでの温度が保てずばらつきが出てしまいますの。なので既にレッドゲイルのイザーガ兄様にはその旨を連絡してあちらでの魔力炉の使用は許可されていますわ」

 私とミリアリア姉さんがそろってそう言うと、アマディアス兄さんはしばし考えこんでから言う。

「しかし魔力炉となるとその魔力供給はどうするのだ?」

「うちの再生魔晶石を提供します。あ、再充填は僕も手伝いますから、商用の魔晶石に関しては問題無いですよ」

 ニコニコしながらそう言う私にアマディアス兄さんは隣のミリアリア姉さんを見てから言う。

「ミリアリアも一緒に行くのだな?」

「はい、そのつもりですわ」

 アマディアス兄さんはそれを聞いてから軽くため息を穿いてから言う。


「実はな、『草』とジマの国のローグの民から情報が入っている。ドドス共和国がガレント王国から量産型の『鋼鉄の鎧騎士』を再購入し始めたとな。従来の入れ替えで無く大幅な増強となるらしい。ミリアリアが同伴とは言え、アルムよマリーやアビス、カルミナも必ず同伴させるんだ。良いな?」

「はぁ、分かりました」

 アマディアス兄さんはそれだけ言ってミリアリア姉さんを見る。
 そして念を押すように言う。

「ミリアリア、アルムの事を頼むぞ」

「はい? ええ、勿論ですわ! アルムは私にとっても大切な人ですからですわ!!」



 こうして私とミリアリア姉さんが新型の「鋼鉄の鎧騎士」作成の為、久しぶりにレッドゲイルへと向かう事となるのだった。

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