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第二章:ジマの国
2-30:オリジナルの鋼鉄の鎧騎士
しおりを挟む街の中心に有るのは女神神殿だった。
ブルーゲイルにもあるけど、この世界では女神様を祀った神殿が沢山有る。
イザンカ王国のように古い国の神殿には古い女神様の記録もある。
ただ現在は十三番目の女神様を「女神様」と称し、崇めている。
その女神様は「破壊と創造の女神」と言われていて、なんでも今までの女神様の中でも一番力を持っている女神様だとか。
そしてイータルモアの祖母(?)に当たる訳だけど、タルメシアナさんやイータルモアを見ている限りなるべく関わり合いを持ちたくはない相手だ。
そんな事を頭の片隅で思いながら、エイジに連れられて神殿に入る。
そして司祭様を見つけてエイジは言う。
「司祭様! 来たぜ!! 親父殿から話は来ているよね? オリジナルを見せてくれよ!!」
「エイジ様! 神殿では大声を出さぬよう何度言ったら分かるのですか!?」
司祭様はお婆ちゃんだった。
年の頃六十歳くらいかな?
貫禄のある感じだけど、エイジとは顔見知りの様ですぐにエイジをとっ捕まえて説教を始める。
「悪い悪い、でも今日は勘弁してくれよ。実はアルムが来てるんだ! 他にもエシュリナーゼ姉ちゃんやシューバッド兄ちゃん、アプリリア姉ちゃんにエナリアも来てるんだからさぁ!」
そう言ってこちらを見る。
すると司祭様のお婆ちゃんは振り返り私たちを見る。
「これはこれは、お見苦しい所をお見せしました。この神殿を預かるミリアと申します」
彼女はそう言ってにこりと微笑む。
うん、営業スマイル。
司祭様のミリアさんに私たちも挨拶をする。
「こんにちは、アルムエイドと言います」
「第三王子様ですね? エイジ様からお話を聞いてます」
そう言って貴族の挨拶をしてくる。
ローブのすそを軽くつまみ、膝を軽く折って軽くお辞儀をする。
それにつられて私も右手を左胸に、左手を腰の後ろに回してお辞儀をする。
するとミリア司祭はにっこりとほほ笑んで言う。
「噂通りですね。エイジ様にも見習ったほしいものです」
「ちぇっ、なんだよ~」
隣にいたエイジはそう言って口を尖らす。
そしてエシュリナーゼ姉さんたちも同じく挨拶をしてから司祭様は大きく頷いてから私たちを宝物庫へと案内してくれる。
「へへへへへっ、アルムも見たら驚くぜ! 全身銀色に輝くオリジナルはすっげーんだぜ!」
エイジはそう言ってまるで自分がすごいみたいに胸を張る。
でも、確かに本物のオリジナルが見られると言うのは楽しみだ。
そして司祭様が案内してくれた宝物庫の扉の前にまで来る。
その扉はまるで巨人族の為に作られたのではないかと言う位大きかった。
多分、八メートルくらいの高さはあるだろう。
幅だって両開きの扉を開けば馬車が並んで通れそうだ。
そんな宝物庫の鍵を司祭様はガチャリと開け、呪文を唱える。
すると重そうな扉は自動的に開き始めた!
「凄い!」
思わずそう言ってしまう。
あれだけの分厚い扉、多分片方だけでも数トンはあるだろう。
それが両方同時にゆっくりと開いて行く。
そして宝物庫の奥には銀色に輝く巨人が座っていた。
「あれがオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』なんだぜ!」
「あれがオリジナル…… ち、近くで見てもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
エイジが自慢げに言う中、私はもっと近くで見たいと言うと司祭様が許可してくれた。
私は早速銀色に輝くオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」の前までやって来る。
「うわぁ~、この外装って全部ミスリル? 凄いね!!」
「これがオリジナルですか…… 乗るものを選ぶものの、他の『鋼鉄の鎧騎士』を圧倒的に凌駕すると言われる」
マリーもすぐ横に来て一緒にオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。
が、ここでアビスが変な事を言い出す。
「ふむ、確かに見てくれ……と言うか、外装はオリジナルのモノですな。しかし、中身が本物ではないようです」
アビスは珍しく興味を持ってオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」をきょろきょろ見て回っている。
これが本物ではない?
「アビス、アビス! ちょっとこっち来てっ!」
「はい、なんでしょう我が主よ??」
私はアビスをこっちに呼んで小声で聞く。
「どう言う事? これが本物じゃないって言うのは??」
「はい、外装は確かに昔戦ったものと全く同じ、ミスリル合金で出来あがった堅牢なモノですが、中身である素体がどうやら別物に変わっているようですな。本来オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』とは連結型魔晶石核と言う精霊力を封じ込めたループ型魔力増幅器が仕込まれているはずですが、これからはその力を感じない。まるで先日手合わせした砦の「鋼鉄の鎧騎士」そっくりの感じがしますな」
「へっ?」
なんかやたらとアビスのやつ「鋼鉄の鎧騎士」について詳しくないか?
私が驚いていていると、アビスにしては自嘲気味な笑いをしながら言う。
「くっくっくっくっくっ、この世界は本当にすごいのですよ、我が主。過去に私もこちらの世界に呼び出されましたが、最後の時はこのオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』と戦い無残にもやられてしまったのですよ。まったく、これを作り上げたと言う魔王は天才ですな」
え~、あのアビスが他の人を絶賛している?
驚きアビスを見るも、こいつは嘘を言わない。
なので、こいつの言っている事は本当なのだろう。
「で、でもなんで外装だけ本物なの?」
「さて、そこまでは分かりませぬが、確かにこの外装は本物です」
そう言ってアビスは右手にあの黒い雷をまとわせる。
バチバチバチ!
そしてそれをおもむろにオリジナルの鋼鉄の鎧騎士に向かって放つ。
カッ!
バチバチバチバチ!!!!
「なっ!?」
「何をなさいます!?」
流石にエイジや司祭様、他のみんなも驚くも雷撃を受けたオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」はすぐにその雷を打消し平然とそこに座っていた。
「我が主よ、これがオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』の厄介な所です。全ての魔法や物理攻撃が効かない、まるで【絶対防壁】が常に張られているも同様の状態なのです。この外装だけでも、竜の炎に耐えるでしょう。まったく、厄介な相手です」
そう言ってアビスはすっと私に頭を下げる。
そして小さな声で言う。
「しかし我が主の魔力はそれを凌駕する。くっくっくっくっくっ、本当に我が主は素晴らしい!」
「いや、僕だってこんなのをどうこうできる自信なんかないってば……」
私もアビスにしか聞こえない小声でそう言うも、アビスは赤い瞳をギラリと輝かせていう。
「お戯れを。主様が本気になれば私など一瞬で塵と化しましょう。あの竜の娘ですら今は我が主様に太刀打ちできないでしょう。場合によっては黒龍でさえ」
「それは買い被りだよ。僕はそんなに凄くはない」
だって、女神様を焼き殺せる黒龍だよ?
それに確かに今はまだ自覚がないらしいけど、タルメシアナさんは「竜神」になって黒龍すら凌駕する存在になるんでしょ?
そんな化け物たちに一介の魔力量が多いだけの第三王子が太刀打ちできるわけないじゃん。
「今は、それでもいいでしょう。しかし我が主が望めば私は剣となり盾となりましょう。全ては主様の御心のままに」
仰々しくそう言うアビスに皆大騒ぎしている。
そりゃぁ、オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」にいきなり電撃の攻撃を仕掛けるのだから。
しかし、オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」はその表面に傷一つ付けていない。
なので私がみんなをなだめると同時にアビスがオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」がこれくらいで傷つくことなどない、その証明を我が主にしたまでと言い放ち、みんなも渋々その矛先を収める。
「とは言え、いきなりこのような事はもうさせぬようお願い致しますよ」
「……はい。分かってます」
結局私も司祭様に怒られる羽目にはなるのだったが。
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