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第二章:ジマの国

2-12:ジマの国の騎士たち

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 色々あったけど、私たちはジマの国をいろいろと見させてもらって三日後に帰国する事となった。



「アマディアス様ぁ~、もういっちゃうですぅ~?」

「すみませぬ、ジマの国はとても素晴らしい所ですが、私も一国の王子。国でやらねばならぬ事もあります故」

 イータルモアがアマディアス兄さんに朝から絡んでいいる。
 あの後、プライベートビーチから戻って、その後に町や近くの歴史ある遺跡を見学してジマの国を十分に見せてもらった。
 
 特に驚いたのが、実はお城と世界最大の迷宮の最下層は転移魔法で繋がれていて、黒龍が何か有ればすぐにでもこの国に現れる事が出来ると言う事だった。
 つくづくこの国と黒龍の結びつきが強いと言う事を実感させられた。


 そのほかにもマリーが元居た騎士団の稽古も見せてもらった。
 みんなマリーと同じく「操魔剣」という剣技(槍やなぎなた等もある)は同じく二歩目でとてつもない踏み込みや、各種系統の技が人の領域を超えていた。

 そしてマリーの説明では、竜の血が濃く出て無くても常人で鍛錬を積めばある程度この「操魔剣」は扱えるとか。
 但し、その奥義を極められる者はごくわずかだが。


「凄いねぇ~。みんなとっても強そうだ!」

「まぁ、若いのはまだまだですが」

 稽古を見ていると、マリーはつまらなさそうにそう言う。
 言われて見ると確かに若手というか、まだ成人するかしないかの人たちもいる。

 年の頃、十二、三歳位かな?


「マリーもあのくらいの頃に鍛錬を積んだの?」

「私は…… 記憶にある限り小さな頃から鍛錬をさせられてました。父が将軍をやっていた関係で、小さな頃からみんなに交じって……」

 そう言うマリーは心底嫌そうな顔をしていた。

「でもさ、すっげーよなやっぱり。魔力を手足に瞬間的に集中させて、それを爆発的に使うなんざ、【身体強化魔法】を無詠唱でやっているようなもんだもんな!」

 エイジが稽古を見ながらそう言う。
 そう言えば魔法で身体能力を強化する【身体強化魔法】ってのがあるけど何が違うのだろう?


「ねぇエイジ、その魔法ってこの『操魔剣』となにが違うの?」

「ん? アルムのくせして知らないのか? 『操魔剣』は瞬間的に強化しているよなモノで、その効力は持続していない。でも【身体強化魔法】は魔法が効いている間全ての身体能力が強化されているんだ」


 なんかエイジが得意げにそう言う。
 まぁ、私だってすべての魔法を知っている訳じゃない。
 しかし、魔法で無く魔力を瞬間的に爆発的に使っているとは……


「ねぇ、マリー。もしかして『操魔剣』って魔力をそんなに使っていないの?」

「はい、そうですね。瞬間瞬間に使うだけなので戦場でも長々と使えますね」

 やっぱり!
 なるほどそうすれば魔法使いの後方援護を常に必要となる騎士団とは戦い方が根本的に違ってくる。
 単体で後方支援の魔法使いが常にいるのと同じ状態が出来る訳だ。
 しかも有限の魔力の使い方が一瞬だから、魔力切れを起こさない。

 なるほど、ジマの国の騎士が人族最強と言われる所以だ。


「これって、参考になるかな……」

 私はそうつぶやいて、自身も「操魔剣」を真似てみる。
 瞬間的に手の力を魔力で上げて内緒で振ってみる。
 すると、想定以上の動きが出来、手刀を軽く振ってみたら、向こうにある草の葉っぱが切れた。
 
 威力は破格なものだけど、瞬間で魔力を押さえると何時もみたいに力の加減が完全に出来ないと言うのとは違う。
 これ、練習したら他の魔法でも応用できるかな?


「アルム様、今何かなさいましたか?」

「ギクッ! な、何の事かな?」

「いえ、あちらの草の葉が何かで切られたような……」

「え? あ、そ、そう? 僕わかんないなぁ。あは、あはははははは」

 まさかさっきの一瞬がバレるとは!


「ふぅ~ん、なるほどニャ。確かにマリーの動きそっくりニャ。これは少し手合わせしてやろうかニャ?」

「くっくっくっくっくっ、それは面白そうですね?」


「はい、そこまで! 駄目だよ二人は勝手に動いちゃ!」


 血の気の多いカルミナさんとアビスが動こうとするのを私は止める。
 ここで友好国とのしこりが残るような事はするべきではない。
 大体にして、カルミナさんやアビスは『鋼鉄の鎧騎士』すら単体で相手に出来るのだから。
 いくら人族として最強を謳われるジマの国の騎士たちだって、単体で相手になるとは思えない。


「別にいいのではないでしょうか? 流石に騎士団長クラスはまずいですが、見習い騎士や若手でしたらかまわないと思います。良い経験なるでしょう」

「あの、マリーさん?」

「見ていてイライラします。騎士団長は何を指導しているのでしょう? 私の頃と言えば血反吐を吐くのは当たり前だと言うのに!!」

 マリーさん、今なんて言いました?
 ちょと待て、マリーさんの過去に何があったの!?


「副団長殿、ずいぶんと今の鍛錬は優しくなりましたね?」

「マリーか……」

 マリーは勝手にずいっと前に出て副団長に話しかける。

「生ぬるい稽古では若手が育ちませんでしょう。うちの精鋭が手ほどきをしましょうか?」

「なに? マリー、貴様イザンカに嫁いだとは聞いていたがその物言いは流石に聞き捨てできんぞ?」

「ふふふふ、私が出ると流石に相手にもなりませんが、うちの猫と執事が少し稽古をつけてあげますよ。若手にはいい経験になるでしょうから」


「貴様!」


 副団長は思わず腰の剣い手を伸ばそうとするのをマリーは剣の柄を平手で既に押さえている。
 その動きは完全に副団長を上回っていて、副団長は身動き一つできなくなる。


「くっ、良いだろう! ラシュタ、エルバ、カミュ―、ロッゾこっちへ来い!!」


 副団長は剣から手を放し、大声で数名の者を呼ぶ。
 すると数名の男女が慌ててこちらにやって来た。


「うちの若手だ。先日正式に騎士の叙勲を受けた。いいかお前ら、これからイザンカの方々と手合わせをしてもらう。遠慮はいらん、思い切りその鍛錬の成果をぶつけろ!」


「ふふふふふ、ではそう言う事で」

 マリーはにっこりと笑ってこちらに戻って来る。

「いいのマリー?」

「ええ、勿論です。猫、執事死なない程度にやって来てください」

 マリーはカルミナさんとアビスにそう言って私の隣に立つ。
 それを聞いたカルミナさんとアビスはにんまり笑って言う。


「骨の一本や二本は覚悟するニャ!」

「くーっくっくっくっくっ、少し遊んであげましょう」


 あー、もう、脳筋どもがぁ。
 私は頭を抱える。
 が、それを面白がる人がいるから手に負えない。


「いいですねぇ、ジマの国の騎士たちがどれくらい成長しているか確認するには。特にそこの執事に少しでも剣をあてられれば将来有望ですし!」

「お母様、相変わらずこう言うの好きですぅ。まぁ、お父さんもよくやらせてましたですぅ」

「ほほぉ、カルミナ殿とアビス相手にですか? これは見ものだ」

「ふむ、イザンカの精鋭と聞いておりますが、ここは若手のご指導を願いましょうかな」


 ほら、湧いて出た。

 タルメシアナさんは爛々とした目でその様子を見ているし、イータルモアはアマディアス兄さんにくっ付きながらそんな事を言っている。

 アマディアス兄さんも兄さんで、どうせ将来ここの騎士たちがどれ程になるかの予測を立てるのに様子見をしたいのだろう。

 エラルド宰相もうちの戦力を見たいってのが本音で、特に私の直属のお付きと言うのがどれ程か見たいのだろう。

 まったく、みんな何だかんだ言ってこう言うの大好きなんだから。


「アルム、これは面白くなってきたな!」

「エイジ……まぁ、相手は騎士になったばかりの若手だからこっちが勝っても問題にはならないだろうけどさぁ。いや、本当に大丈夫か?」


 言いながらだんだんと心配になって来た。
 あの二人、ちゃんと手加減するんだろうな??


 そう思っていたら、もうカルミナさんと女性の騎士が中央に出ている。

「カルミナさん、ほどほどに!!」


 私の声が聞こえたか聞こえてないか分からないけど、そんな中手合わせの開始の合図がされるのだった。 
   
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