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第一章:転生
1-36:国境の砦出発
しおりを挟む「ですから私と一緒にお風呂に入ればよろしかったのです」
朝からマリーの機嫌が悪い。
昨晩、男同士でお風呂に入る事となり、突然やって来たアマディアス兄さんの裸に興奮した私は思い切り鼻血を出して気絶した。
その後の事は知らないけど、エイジの話では腰にタオルを巻いたアマディアス兄さんが慌ててマリーたちの前に出てカルミナさんの歓喜と、マリーの私に対する動揺の悲鳴とでカオス状態だったらしい。
で、介抱されて気が付いたのが今朝。
正直、私はもの凄く良い夢を見てた。
もう、美男子の裸だらけの夢の世界!
夢と分かっていても、それはそれは楽しんで、もう夢から覚めたくないと思うってしまう程だった。
くぅ~。
本当はそう言ったのが目の当たりにできるはずなのにぃ!!
そんな私の気持ちなど露知らず、マリーのお説教は続いた。
「マリーもその辺にしておくニャ。朝ごはんニャ!」
「くっくっくっくっくっ、我が主を心配するのはこの私とて同じ。されど主の健康を阻害する事は許されませんよ?」
なんかカルミナさんとアビスが助け舟を出してくれる。
それを聞いてマリーは暫し黙るも、ため息を吐いてから言う。
「とにかく、今後は私がアルム様と一緒にお風呂に入りますからね! いいですね!?」
「あ、いや、でも……」
「いいですねッ!?」
かなり強く出てこられて拒否する事が出来ない状態に追い込まれる。
私は小さく「はい」とだけ言って、やっとマリーのお説教から解放されるのだった。
* * *
「ようアルム、もう大丈夫なのか?」
「アルムよ、気分はどうだ?」
朝食の為に食堂に行くとエイジとアマディアス兄さんがすでにいた。
二人とも朝食をほとんど終わっていて、私が来るとその手を止めて聞いてくる。
「はい、もう大丈夫です」
席について朝食の準備をしてもらいながら二人に答える。
すぐに朝ごはんが並べられ、それを食べながらアマディアス兄さんの話を聞く。
「今日はこの後ジマの国に向けて出発をする。問題無ければ夜には到着するだろう」
食後のお茶を飲みながらアマディアス兄さんはそう言う。
そうか、ここは国境だからもうジマの国へは目と鼻の先なんだ。
場所的にはドドス共和国領との境だけど、ここから東に向かえば渓谷があって、天然の要塞になっていると言うその渓谷を抜ければジマの国に入るらしい。
「ジマの国かぁ。どんなところなんだろうね?」
「とにかく早く見てみたいよな! 海ってのもあるらしいからそれも見てみたいしな!」
エイジも食事を終えてお茶を飲みながらそう言う。
私も急いで朝食をとってジマの国へと心を躍らせるのだった。
* * *
「それでは殿下、行ってらっしゃいませ」
「うむ、世話になったな」
「ははっ! もったいないお言葉です。が、次の手合わせの時は今回のようにはいきませぬぞ?」
「覚えておこう」
アンマンさんはアマディアス兄さんにそう言って頭を下げる。
私たちは馬車に乗り込み、アンマンさんや他の兵士の人たち、「鋼鉄の鎧騎士」の見送る中、この国境の砦を後にする。
目指すはジマの国。
一体どんな国なのだろう?
そして何が待っているのだろう?
期待を胸に私たちは澄んだ朝の空気の中、ジマの国に向けて出発するのであった。
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