35 / 110
第一章:転生
1-34:模擬戦
しおりを挟むどうしてこうなった……
私は広場に対峙するカルミナさんと鋼鉄の鎧騎士の模擬戦を目の当たりにして頭を抱えていた。
「なぁ、アルム。カルミナさん大丈夫なのか?」
「エイジ…… 僕に聞かないでよ。カルミナさん自身はホリゾン公国の『鋼鉄の鎧騎士』に勝ったとか言ってるけど。本当かどうか……」
この模擬戦が始まる前にカルミナさんに聞いた。
いくら何でも未経験の者が「鋼鉄の鎧騎士」に模擬戦を挑むのは無茶過ぎると。
しかしカルミナさんは笑って言う。
「大丈夫ニャ、前にホリゾンの『鋼鉄の鎧騎士』とやり合って勝ったニャ!」
自信満々にそう言うカルミナさん。
カルミナさんが普通の人より強いのは知っている。
しかし相手は「鋼鉄の鎧騎士」。
アビスや過去引き分けになったマリーならいざ知らす、獣人であるカルミナさんには酷ではないのだろうか?
「それでは模擬戦はじめ!!」
アンマンさんの掛け声と共に模擬戦が始まる。
これってどう考えてもカルミナさんの方が不利では?
そう誰もが思っていた矢先だった。
『悪いがこれで終わりだ!』
「鋼鉄の鎧騎士」を操縦している騎士がそう言ってあの巨体の割りにかなり早い動きで一気にカルミナさんの間合いを詰める。
そして木刀でカルミナさんを薙ぎ払おうとするも、カルミナさんが目の前から消える。
『なにっ!?』
「確かにホリゾンのより早いニャ。でもあたしには追い付けにゃいのニャ!」
そう言って、いつの間にかカルミナさんは「鋼鉄の鎧騎士」の後ろに回り込み、膝の裏を思い切り蹴飛ばす。
まさしく膝カックン状態!
流石の「鋼鉄の鎧騎士」も不意打ちに近いこれにはバランスを崩して倒れそうになる。
が、流石に重量差があり過ぎる。バランスを崩すも倒れる事無く「鋼鉄の鎧騎士」は立て直そうとすると、今度はいつの間にかカルミナさんは「鋼鉄の鎧騎士」の胸元至っていた。
「遅いニャ!」
そう言ってカルミナさんは「鋼鉄の鎧騎士」の頭を思い切り全体重を乗せたドロップキックをかます。
いくら「鋼鉄の鎧騎士」でもバランスを崩した所へ一番上の頭部に衝撃を受ければバランスを完全に崩す。
カルミナさんは頭頂部にドロップキックをかました勢いのまますぐに背後にまわり、もう片方の膝裏に膝カックンを回し蹴りをしながら行うと、完全にバランスを崩した「鋼鉄の鎧騎士」がとうとう上を向いたまま地面に倒れる。
どばったぁ~ん!!
『ぐぁっ!』
土ぼこりを立てながら「鋼鉄の鎧騎士」は仰向けに倒れる。
そしてその上にカルミナさんはさっと登り片腕を上げて宣言する。
「倒したニャ! あたしに勝ちニャ!! お腹見せて倒れれば服従ニャ!!」
そう言ってキャイキャイと喜ぶ。
あ、えーと……
「そこまで! 勝者カルミナ!!」
だがここでアンマンさんが大声でカルミナさんの勝利宣言をする。
カルミナさんはすぐにアマディアス兄さんの前まで来て犬の様に尻尾とお尻を振ってアピールをする。
「アマディアス様! あたし勝ったニャ! ご褒美に一緒にお茶するニャ!!」
「うむ、見事。分かった、後で茶の用意をしてやろう」
そうアマディアス兄さんに言われてカルミナさんは、ぱぁっと明る顔してお大喜びする。
「やったニャ! アマディアス様とお茶ニャ!! これでアマディアス様のハートは鷲掴みニャ!!」
「いや流石にそれは……」
「いいいなぁ、オレもカルミナさんとお茶したいなぁ」
大喜びするカルミナさんだけど、アマディアス兄さんをお茶会くらいでどうこうできるとは思わない。
というか、この前もいつも一緒にお茶飲んでなかったっけ??
それとエイジ、君もしょっちゅうカルミナさんと一緒にお茶してるんだけど。
うちの国って、お茶会ってなんか特別の意味あったっけ?
「ふん、猫の割りにはなかなかやりますね。確かにいくら『鋼鉄の鎧騎士』でも倒されてしまえばかなり不利ですからね。あの状態で数の暴力に蹂躙されれば流石に身ぐるみはがされ凌辱されますからね」
「マリーさん言い方ッ!」
マリーはその様子を見てなぎなたを振って前に出る。
「次は私がお相手しましょう」
そう言って起き上がった「鋼鉄の鎧騎士」の前に歩み出る。
何故かこれにはみんなが前のめりになってその様子を見る。
「ブラッドマリーが相手か…… いいだろう、五年前の屈辱晴らす時だ! 両者準備はいいか? それでは模擬戦はじめっ!!」
何故かアンマンさんもやる気満々で模擬戦開始の合図をする。
それに呼応してマリーがいきなり飛び掛かる。
「操魔剣なぎなた奥義、疾風!!」
マリーは踏み込み二歩目で爆発的な動きをする。
構えたなぎなたに全体重を乗せて「鋼鉄の鎧騎士」へと突っ込む。
それを盾で迎撃しようとする「鋼鉄の鎧騎士」だが、途中でマリーは地面に足を着けたと思ったらその軌跡が一気に変わった。
そして盾の無い胸元にその一撃が入る。
ぎゃりんっ!
『くそ、以前より動きが!!』
「まだまだです! 操魔剣なぎなた奥義、昇竜!!」
ぐらついた「鋼鉄の鎧騎士」にマリーは止まらず次の技を放つ。
それは正しく上り上がる竜そのもの。
マリー自身も回転しながら周りの空気をまとって上空へとなぎなたを突き上げる。
それになんとあの巨体の「鋼鉄の鎧騎士」の鎧騎士が吸い上げられ、その足元を浮かせる。
『なっ!? バカなっ!?』
「例え『鋼鉄の鎧騎士で』も空中では身動きが取れませんよね? 行きます、操魔剣なぎなた奥義、雷落としっ!!」
まるで空中に足場でもあるかのようにマリーは上空から一気に「鋼鉄の鎧騎士」に襲いかかる。
しかもその動きが自由落下で無く、ジグザグにまるで雷の様にその軌跡を読ませない動きをする。
いや、これもう人の動きじゃない!!
銀色の髪の毛がキラキラと光りながら閃光の如く「鋼鉄の鎧騎士」を襲う。
『うわぁっ!!』
ガガガガガガっ!!!!
一体何か所を切りつけたか、空中で「鋼鉄の鎧騎士」の体中から火花が上がる。
そしてそのまま地面にたたきつけられた。
どぉーんっ!
すたっ。
マリーは何事も無かったかのように地面に降り立ち、ポニーテールになっている銀色の髪の毛をはらりと後ろに撫で払う。
そして長刀の刃をすっと見て落胆する。
「流石に「鋼鉄の鎧騎士」ですね、刃が欠けてしまった」
いやいやいや!
それ刃がこぼれる程度の問題じゃないって!!
思わず唖然として見てたけど、これカルミナさんの戦い以上にとんでもない。
「そ、そこまで! 勝者ブラッドマリー!」
「すみませんがその二つ名、やめていただけませんか? 今はアルム様の専属メイドですので」
「う、うむ、勝者マリー!!」
じろりとアンマンさんを睨むマリーに思わずたじろいでアンマンさんは勝利宣言を言い直す。
と、マリーがすぐに私の所に来て、まるで尻尾でも生えたかのよううに嬉しそうに言う。
「ご覧になられましたかアルム様? しっかりとアルム様の為に『鋼鉄の鎧騎士』を倒してまいりました。それで、その、出来れば私もアルム様とお茶会をしたく存じ上げます///////」
いやマリーさん、何故そこで赤くなる?
お茶会って何!?
普通にお茶飲むだけだよね??
「あ、うん、分かった。すごかったねマリー」
「はい♡」
なんか今日一番の笑顔のマリーさんだった。
「くーっくっくっくっくっ! 皆さんやりますね? これは私も少しは本気を出さないといけませんね?」
「いやちょと待て! アビスは本気出しちゃダメっ!!」
「おや? そうすると主様は指先一つでダウンさせろと言うのですか? 何なら華麗に切り刻んでもよろしいのですが?」
「それもだめ! ひでぶもひょぉーもダメぇっ!!」
アビスは嬉しそうにそう言うも、こいつが本気なんか出しちゃったらとんでもない事になる。
「あまり目立たない程度にお願いします!!」
「我が主がそうおっしゃるなら。分かりました、あまり目立たない程度ですね?」
そう言ってアビスは中央の広場に赴く。
本当に大丈夫なのかこいつ?
私は心底不安でならなかったのだ。
10
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話
カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます!
お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あらすじ
学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。
ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。
そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。
混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?
これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。
※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。
割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて!
♡つきの話は性描写ありです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です!
どんどん送ってください!
逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。
受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか)
作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる