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第一章:転生

1-27:アルム出発

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 なんだかんだ言ってジマの国に行く日が来た。


「それじゃ行ってきますね、エシュリナーゼ姉さん、シューバッド兄さん、アプリリア姉さん、エナリア」

 なんだかんだ言ってみんなお見送りしてくれる。
 
 今回はエリーナお母様や実母のジェリアお母様も見送りに来ている。
 流石に父王は公務があるから無理っぽいけど。

「では行ってまいります。じきにレッドゲイルからイザーガも来ますので後の事はよろしくお願いします」

 アマディアス兄さんはお母様たちにそう言って一礼してから馬車に乗る。
 私も同じく挨拶してから馬車に乗るも、何故かエリーナお母様の方が涙目でハンカチを振りながら手を振ってくれている。


「アルム、寂しくなったら渡しておいたペンダントを開くのですよ! 私の似顔絵を入れてありますからねぇっ!!」


 いや、実は姉たち以上に実の母ではないエリーナお母様は私にべっとりだったりする。
 実母のジェリアお母様はもちろんだが、実母以上に私を可愛がってくれる。

 なんでだろう?

 まぁ、そんな姉や母たちともしばらくお別れなので実は少し気が楽だったりする。


「相変わらずお前は人気者だな、アルム」

「まぁ、否定はしないけど四六時中母や姉たちに絡まれる身にもなってよ」

 エイジはニカッと笑いながらそう軽口叩くけど、ホントあの人たち暇さえあれば私にかまってくるのだから。
 でもそうすると久々に男だけとなる。
 正直アマディアス兄様と一緒に居られるのは嬉しいし、年の近いエイジと一緒にいるのも悪くない。

 何よりみんな美形だから!!

 これでイケナイ恋愛劇とか目の前で見れたら最高なんだけどなぁ~♡


「ジマの国には大体一週間くらいで着くが、途中にユエバの町にも寄ってゆくからな。護衛に関しては大丈夫だと思うが、町についたら私から離れない様に」

 アマディアス兄さんは私を見ながらそう言う。
 確かに、城から出るのも初めてだし、ましてや国外に行くの初めてだ。
 ちょっとワクワクしてきた。

 この世界の本当の姿が見れると思うと、知識だけでない世界が見れるわけだから!


 私は期待を胸に馬車の窓の外を見るのだった。



 * * * * *


 きんっ!
 ガッ!!


 外では戦闘の音がしている。

「主様、如何なさりましょか?」

「うん、やっぱり手伝ってあげて来て」

「じゃぁ、あたしも行くニャ! アマディアス様、あたしの活躍見るのニャ!!」

「私はアルム様の護衛を致しましょう。もう絶対に私から離れない様に」

 そう言ってアビスとカルミナさんは馬車の外へ出る。
 マリーはその大きな胸に私を抱きしめるけど、苦しいって!

 ブルーゲイルの街を出て二日目、私たちが街道を走っているといきなり空から魔物の襲撃を受けた。
 イージム大陸は土地がやせ、魔物が多い大陸で人間には厳しい環境だとは聞いていたけど、出発二日目でもう魔物と遭遇とは!


「魔人と獣人が出たか、ならばもう大丈夫だろう」

 アマディアス兄さんはそう言って息を吐き出す。
 襲撃されて護衛の騎士たちだけでは厳しかったからだ。
 
 ちらっと見た感じ、グリフォンって魔物みたい。
 鷲の様な上半身に馬の下半身、尻尾が蛇の化け物。
 肉食で獰猛。
 そのくちばしと前足が強力で、護衛の騎士たちも苦戦している。

 が、アビスとカルミナさんが出て言った途端状況は一変する。


「くっくっくっくっくっ、我が主がいる事を承知で襲って来たか?」

「にゃんニャ、グリフォンだったかニャ? グリフォン美味しくにゃいニャ!」

 
 アビスが手を振ると前衛の騎士たちの前に防壁が現れてグリフォンの攻撃を防ぐ。
 そこへカルミナさんが走って行き飛び上がり鋭い爪でグリフォンの片翼を切り落とす。


 だっ!
 ぴょ~ん
 漸っ!!


『ぴぎゃーっ!!』


 流石にグリフォンも今の一撃には驚いて飛び退こうとするも、片翼がなくなっているので空に飛びあがれない。
 そんなグリフォンにカルミナさんはワ―キャット化してすぐにその爪で攻撃を仕掛ける。
 かろうじてその攻撃を前足の鷲の爪で防ぐグリフォン。
 だが、アビスが片手をあげたその先に魔法陣が現れそこに黒い稲妻が発生する。


 ビリっ!

     
 下がったグリフォンはまるで自分からその魔法陣に飛び込むかのように黒い稲妻に討たれる。


『びぎゃぁーっッ!!!!』


 ばちばちばちっ!!



 グリフォンの退路に合わせてアビスが魔法陣を発生させた結果だった。
 哀れグリフォンはぶすぶすと煙を上げてその場に倒れる。

 それと同時に騎士たちから歓声が上がる。


「ふむ、終わったか。流石に魔人と獣人だな……」

 エイジには聞こえない様にアマディアス兄さんは小声でそう言う。
 ちなみにエイジは端っこで大人しく丸まっていた。
  
 私はマリーの胸から抜け出して外の様子を見る。


「ほぇ~、あれがグリフォンなんだ。思っていたより大きいんだ」

「この辺は時期になるとグリフォンの群れが旅人などを襲う場所ですが、今の時期に襲ってくるとは、はぐれでしょうか?」

 マリーは私がマリーの胸から抜け出して残念そうにしていたモノの、そう説明をする。
 私はアマディアス兄さんに向き直って聞いてみる。


「本物のグリフォンって初めて見ました。もう大丈夫でしょから近くで見てきていいですか?」

「まぁ、アビスたちもいるからな。すぐん戻って来るんだぞ?」

「はいっ! エイジ、一緒に見に行こうよ!!」

「お、終わったのか? だ、大丈夫なのかよ??」

「大丈夫だって! 行ってみようよ!!」

 せっかくアマディアス兄さんの許可をもらって近くで見れるのだ。
 この世界に来て初の魔物。
 間近で是非見てみたい。

 そう思い、私とエイジは馬車を降りて倒されたグリフォンを見に行くのだが、その瞬間頭上を影が覆う。


「えっ?」
 
「なにっ?」



 私とエイジがそう言って上を見上げるともう一匹のグリフォンが襲ってきたのだった。

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