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第一章:転生

1-26:訪問準備

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「なるほど、そうするとアルムエイド様はジマの国へ行かれるのですね?」


 エマニエルさんの授業を受けながらジマの国に行ってくることを話す。
 エマニエルさんは地政学の本を置いて言う。


「ジマの国はご存じの通り小国でありながら守護神、『女神殺しの竜』の加護を受け絶対的な力を持ちます。そして彼の王族たちの血にはその竜の血が流れていると言われ、その騎士たちは人間としては人類最強の部類となります。彼らの操る肉体強化系の魔法は詠唱をせずとも出来ると言う特殊な技術。一説には体の中に流れる竜の因子が原因ではないかと言われてます」


 エマニエルさんはそう言って後ろで控えているマリーをちらりと見る。
 マリーは相変わらず授業中は物静かに黙って見ているけど、そう言えばマリーも「操魔剣」とか言う特殊な技を使っていた。

 二歩目で一瞬にその飛込のスピードと距離を詰めるだなんて普通の騎士にはできない。
 もちろん、呪文詠唱をした形跡もないしちょっと興味がある。

 実は最近魔力を練りまくって、【絶対防壁】を更に精度を上げてみると【超絶対防壁】の上を行く結界のようなものが安定して張られることが分かった。
 そしてそれは一度具現化するとアビスたちに魔力供給するかの如く一定の微量の魔力を与えているとずっと存在し続けると言う事も。

 なので、更にその範囲とかを練って体の表面に張ってみたら、魔力も物理攻撃も全く受け付けない状態が維持できるようになった。

 これ、私の魔力漏れのお陰で寝ている時も維持されているので、暗殺とかもう不可能なんじゃないかな?
 毒殺か、相当な衝撃が無いと中にいる私にはダメージがこない。


 これで後は物理攻撃が出来れば、私って最強なんじゃないかな?


「しかしそうすると困りましたね。地政学と政治学が遅れそうです。アルムエイド様は既に魔道に関しては私を凌駕なさっている。系譜の魔術も魔導書を読まれればすぐに理解なされて、私がお教えする余地すらないとは……」


 エマニエルさんは少し複雑な顔をする。

 確かに魔法学園ボヘーミャを首席で卒業した彼女にしてみれば、お得意の魔道に関してはもう私に教える事はほぼない。
 経験からの魔法の使い方や、系譜の魔道のノウハウはあっても、基本魔道書を読めば理解出来てしまってその魔法が使える。
 そなれば魔道に関してエマニエルさんは教える事がなくなってしまう。

 なので最近はもっぱら帝王学に偏った授業がほとんどだ。

 でもそれって現代日本で授業を受けた私たちにしてみれば古風なしきたりを重視したやや非合理的なモノが多い。

 
 例えば、税収の話。

 前世の日本では税の徴収方法がとても複雑かつ、国民の怒りをうまく回避する様な方法で所得の約半分近くが税金として徴収されていた。

 こう聞くと驚く人もいるだろうが、所得税や住民税、その他もろもろもろの目に見える税金はそれ程の数値になっていない。
 しかし別途要求される固定資産税や車の税金等は給与明細に反映されていない。

 しかも消費税!

 あれは悪魔の税金で、所得がある者以外からも徴税するシステム。
 子供が駄菓子屋でお菓子買っても税金がかかるのだから、とんでもないシステムだ。
 しかも内税ならまだしも、表示は両方とか子供にはピンとくるはずがない。

 更に二重課税の法律上違法なモノのも横行している。

 ガソリン税や酒税は既に徴収されているのに、それに輪をかけて消費税がかけられるのは違法行為である。
 それなのに当時の政府は全くと言っていいほどそれを聞き入れなかった。
  私は結構やけ酒飲んでいた口だから他の人より余計に納税してたことになる。

 まぁ、その辺の愚痴はもう今の私には関係ないのだが、こちらの世界の税収は農民ならその年の収穫した何割とか、街の住民は一人当たり年間いくらという感じで結構大雑把な所がある。

 でも、それで回っているのだから誰も不思議に思っていないみたいだ。

 国の国庫等どれだけ蓄積されているかは、徴税されて積み上げられた穀物や金貨の量が翌年分としてある一定の高さを割るかオーバーするかでその年の調整をすると言うシステムだから無駄使いを減らせばどんどん国庫は増えて行く。

 何か何処かの車屋のかんばん方式みたいだけど…… 


 そんなやり方なので農民は作物が良く出来ればうれしいし、住民は必要経費として払うしか手が無い。
 
 まぁ、それで何百年、何千年も回っているから良いのだけど……
 そんな事を考えたいたらエマニエルさんが予定を聞いて来た。


「アルムエイド様、そうしますとジマの国には何時頃出発なされるのですか?」

「えっと、アマディアス兄さんの話だと一週間後だそうです。今回はエイジも一緒に行く事になってますが……」


 私は隣にいるエイジをチラ見する。

 結局あの後魔法対決をする羽目になったのだけど、カルミナさんに良い所を見せたいエイジは今現在彼が使える最大の火力系魔法、【火球】ファイアーボールを出して的に当ててドヤ顔をした。
 で、私の番だと言って同じく的に何かの魔法を放つように言うので、無詠唱で【炎の矢】を大量に出現させ、一気に的に当てて蒸発させたら唖然となった。

 一体どう言う事なんだとしつこく聞いてくるから「エマニエルさんの指導がいい」って言ったらアマディアス兄さんに頼み込んで一緒に授業を受ける事になったのだけど……

 隣で頭から湯気を立てて白くなっているエイジがいた。

 そりゃぁ、七歳の子供にやれ地政学だ、やれ政治学だと教え込めばこうもなる。
 一応エイジも王族の血を引く者。
 帝王学や王道について学ぶことは悪い事ではない。
 なのでアマディアス兄さんも喜んでエイジに授業を受けさせてはいる。

 でもやっぱり、七歳の子供にはなぁ~。


「エイジ、エイジ、終わったよ」

「はっ!? え、えっと四季による川の水の増水は…… 何だっけ?」

「それはもう終わり。そろそろアプリリア姉さんたちがお茶だってやって来るよ?」


 現世に戻ってきたエイジを小突いてもうじきやって来るだろうアプリリア姉さんたちを迎えるのだった。


 * * *


 かぽ~ん


「あのさぁ、僕一人で出来るからマリーは一緒に入らなくてもいいでしょ?」

「いけません。アルム様の一日の汚れをくまなく落とすのも私の務めです」


「ううぅ、何度入ってもこの暖かいお湯ってのは慣れにゃいニャ!」

「そう? ノージム大陸ではお湯に浸かる習慣がちゃんとあるって聞いたけど?」

「……エシュリナーゼ姉さん、もしかしてまた大きくなりました?」

「あたし肩まで浸かって百数えられたよ~! お兄ちゃん凄い? 私凄い??」


 只今女湯に連れ込まれて体を洗われている。

 王宮には浴場もあって、こうしてお湯を入れた後にお母様たちの後に長女であるエシュリナーゼ姉さん、アプリリア姉さん、そしてエナリアの順で湯あみをするのだけど、エシュリナーゼ姉さんが私と一緒にお風呂に入ると言い出してからは女性陣はみんなで一緒にお風呂に入る事が多い。


「ぽぉ~////////」

 エイジもまだお子様扱いなので一緒に入るけど、毎回顔を赤くしてカルミナさんに見とれている。
 しかもある一定の場所に。

 揺れ動くそのたわわから目が離せないのは、やっぱり男の子なんだろうなぁ~。
 実際にあれだけ大きいと肩こって仕方ないのに。

 でもカルミナさん、あれだけ大きいのに激しく動いても胸痛くないだなんて、どうなってるんだろう?
 ふと体を洗ってくれるマリーの胸を見る。
 マリーもご多分に漏れず大きい。
 少なくとも前世の私より。

 私がマリーの胸を見ているとそれに気付き、マリーはそれを両手で持ち上げて言う。


「アルム様、もしかしてお乳が欲しいのですか? まだお小さいですものね、私でよければどうぞご遠慮なく吸いまくってください////////」

「なんでそうなるの!? いや、マリーたちって胸大きいでしょ? そんな大きなもので動いて痛くないのかなって……」


 私がそう言うと、マリーもカルミナさんも、そしてエシュリナーゼ姉さんもこちらを見る。
 あ、アプリリア姉さんは一生懸命寄せてあげてやってるけど。


「アルムが女性の胸に興味を持つとはねぇ~。私の触ってみる?」

「なんでそうなるんですか、エシュリナーゼ姉さん」

「いいからいいから。ほら♡」


 ぺとっ♡


 言いながらエシュリナーゼ姉さんは私の手を取って自分の胸にその手を置く。
 他の女の胸なんか触ったって嬉しくとも何ともないと言うのに!
 むしろ前世の私より大きい事に殺意さえ湧いてくると言うのに!!


 が、エシュリナーゼ姉さんの胸に触れて驚いた。


「か、固い?」

「ふふふ、分かった? 今高速詠唱したけどこれが私たち女性の秘密よ? 胸が大きくなると肩こりや動いた時に揺れて痛いよ。だから魔法で乳房だけは固定できるようにしているの」

 驚いた。
 これではワイヤー入りのスポーツブラでがちがちに固めているのと同じだ。

 
「じゃ、じゃぁマリーやカルミナさんも?」

「はい、今から気をつけておかないと将来垂れてしまいますからね」

「あたしはその魔法使ってにゃいニャ。あたしら獣人はちょっと胸に力入れればこうニャ!」


 ぴとっ♡


 そう言ってカルミナさんは私の空いた手を取って自分の胸に手を当てる。
 するとこっちはエシュリナーゼ姉さん以上に硬い!?


「あたしら獣人は胸に力を入れると筋肉の様に固くすることが出来るニャ。だから動き回る時は自然にこうなるニャ」

「へぇ~、カチカチだ」

「ごくり、ア、アルムそんなに固いのかよ////////?」


 ここでエイジが鼻息荒く寄って来る。
 カルミナさんはエイジに向かって言う。


「お前もさわってみるかニャ?」

「い、良いのか!?」


 鼻息荒く言うエイジにカルミナさんはその見事な胸を差し出す。
 ツンと先端が上を向いた見事な造形。
 それでいて前世の私よりスリーカップ以上は大きいと言うのだから反則的だ。

 エイジは恐る恐るカルミナさんの胸に触れて驚愕の表情になる。


 ぴとっ♡


「か、固い……」

「にゃろ? でも力を抜けば普通になるニャ」


 ふみゃん♡

 
 カルミナさんは力を抜いた様で、触れていたその胸が途端に弾力のある柔らかい胸になる。
 張りのあるナイスおっぱい。

 それを揉んだエイジがいきなり真っ赤になって鼻血を出して倒れて大騒ぎになったのは言うまでもないだろう……



 * * * * *


「なぁ、アルム。ここってホント天国だよな……」

「エイジ……」

  
 鼻血出して大騒ぎになったエイジを私のベッドに運び込んで介抱していたら気が付いた。
 そして開口一番、その言葉である。

「俺、ここにずっと住んで良いかな?」

「エイジぃ~」


 鼻に綿を突っ込まれたエイジは真剣な顔でしょうもない事を言うのを私はため息を吐きながら見るのだった。
 
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