上 下
23 / 103
第一章:転生

1-22:アルムの受講

しおりを挟む

「な、何と言う天才!!」


 只今私はエマニエルさんの受講を受けている。

 エマニエルさんは魔法学園ボヘーミャと言う、世界的にも有名な魔法学園を首席で卒業した才女と言う事らしいのだが……

 いや、この世界の数学って足し算引き算のほかに掛け算や割り算まで出来ると大学クラスって……
 色々聞いてみると、魔法が発展しているので数学、物理学、天文学等々はそれ程研究されていないらしい。
 数学も、日常的に使われる足し算と引き算が出来れば生活するうえで困る事は無い。
 だからか、やれ関数やら何やらと言った面倒な計算とかは全くと言っていいほど発達していない。
 だから掛け算や割り算、分数等と言う事が出来ただけで数字に対する認識と理解が大学生レベルと言う事だ。
 もちろん、商人などはこの辺の計算が出来ないと仕事にならないから、真っ当な商人を目指すなら大学まで行って数字の勉強をするか、大商人の下で丁稚奉公をしながら学ぶかの二つらしい。


「あの、エマニエル先生、ここをこう言う風に計算すると比率とかすぐ出ますけど……」

 対比計算をして見ると、エマニエルさんは暫し横で何か長々と計算をして驚きに私を見る。

「合って……います……」

 何故か悔しそうでもあるけど、私の計算ですぐに答えが出たので渋々認める。
 うーん、首席のプライドを傷つけてしまったかな?


「お、おほん。算式の授業はアルムエイド様には不要のようですね。それでは語学も……古代魔法王国の上位言語が習得されているとなれば必要がなくなってしまいすね……」


 うーん、算数と国語はもういいって事かな?
 となると、後は社会と歴史と化学あたりかな??


「座学はアルミエイド様にはほとんど不要となりそうですが、帝王学は如何でしょうか?」

「帝王学? えっと、それって父上の言う『王道』ってやつですよね?」

「そうです。そもそも我がイザンカ王国は~」


 まぁ、この辺は情報が無いから教えてもらうのは助かる。

 正直アプリリア姉さんから教えてもらったものはどちらかというとお話しレベルの物が多かった。
 もちろん、この国の成り立ちとかこの大陸がどう言うのかってのは大まかな話は出ていたけどあくまでお話しレベル。
 エマニエルさんが教えてくれるものはちゃんとした歴史の史実からなるモノで、確かに重要な情報が満載だった。

 特にこのイザンカ王国が何故首都が二つあるかとか、昔は王族同士でもしょっちゅう王位継承でもめてたとかという話は、今の兄や姉たちを見ているとちょっと信じられない程だった。
 もちろんいとこであるエイジたちも。

 長い歴史の中で、どうやら新たな女神様に代替わりしたあたりから更にこの世界は安定をしたとか。
 でも新たな女神様って「破壊と創造の女神」様って物騒なののはずなんだけどなぁ。


「ですから、今の女神様のお陰で世界は安定をしていると言っても過言ではありません。それに今の女神様は女性の味方。『育乳の女神』とか『子宝の女神』などとも呼ばれ、女神様の恩恵を受けた女性は数知れずなのです! 伝説では一度滅んだジマの国の再建王も女神様に巨乳にされたと言い伝えがありまして~」

「いやちょっと待って下さい。その再建王とか言うのは男ですよね?」

「そうですね、しかし『育乳の女神』と呼ばれる女神様の手にかかれば男性だろうと関係ないのです!!」


 なんなのその女神さまって!?
 いやいやいや、男性の胸大きくしてどうする?
 例えばアマディアス兄さんが胸大きくなったら……


 ……いや。
 それはそれでアリか?
 あのアマディアス兄さんは攻めっぽいのが、胸が大きくなったら受けとか?

 ……イイぃ。
 それとっても良いぃ////////♡



「男が胸大きく成ったら邪魔ニャよ?」

「アルム様のお勉強中です。猫、静かになさい。しかし、万が一アルム様の胸が大きくなるようでしたら私めがしっかりとそれに見合う乳あてをご用意いたします!!」

「くっくっくっくっくっ、我が主は男も女も関係なく凌駕するお方! 女神など不要ですよ!!」

 
 私が素晴らしい妄想をしていると、外野がうるさい。
 まったく、そのジマの国の再建王が胸大きくなったてのも何かの誤報だろうに。
 もしくは女神様の偉業を誇張する何かだろう。


「と言う事で、女神様の教えはいつしか各国の王たちにも広まり、王道の一つとして取り込まれていったのです」

 エマニエルさんはそう言って本から顔を上げる。
 そして私に向かって聞いてくる。


「アルムエイド様、ここまでで何かわからない所などありますか?」

「えっと、色々と聞きたいですが一番聞きたいのは、その女神様の教えって何ですか?」

「はい、それはとても単純でありながら全ての者の心に沁み込むような慈愛のお言葉です。曰く、『平穏で静かで温和な世界であらんことを』だったのです。事実女神様はこの世界で何か問題が有るとそのお力を振るうと言われています」


 うーん、この世界って聞く限りその女神様にかなり左右されているのか?
 まぁ、確かに「平穏で静かで温和」であればそれは人々にとって一番好い事だろう。
 戦争なんて大体が人間どうしの欲から始まるものだし、普通の人は戦争なんか好んでやらない。

 このイージム大陸は特に魔物が多くて住みにくい過酷な土地だけど、それでも人々は頑張って生きている。
 戦争なんて無駄な事は出来る限りやりたくはないだろう。


「なるほど、『平穏で静かで温和な世界』ですか」

「はい、その通りです。そしてその世界を維持する事が王道として必要とされるのです」

 エマニエルさんは何となく誇らしげにそう言う。
 確かに、それを実現するのは国民にとっていい事だろう。
 そしてそれを目標に王族が働くと言うのも好い事だと思う。

 私は静かにその言葉を胸に刻み、納得をするのだった。


 * * *


「さて、座学が終わりましたのでいよいよアルムエイド様の魔力量のお力を確認しつつ少し試させていただきます」

 只今お城の中庭に来ている。
 座学はとりあえず終わって、今度は魔法の受講となるのだけど一体どんなことをするのだろう?

「如何にアルムエイド様の魔力が膨大で無詠唱魔法の使い手でもその魔力が無限と言う事は無いでしょう。まずは上空に向かって連続で魔力がなくなるまで【炎の矢】を放ってください。もう魔法扱えなくなるまでです」


「はい? 上空に【炎の矢】をですか?」

「そうです、力尽きるまでやって下さい」



 エマニエルさんはそう言って目をすっと細め口元に笑みを浮かべるのだった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...