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第一章:転生

1-17:発見

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 「魔導書庫」

 イザンカ王国が保有する魔道書を保管する場所。
 長い歴史を持つ我が国が保有する、人類歴に伝えられた数々の魔法がここに在る。
 
 中には古代魔法王国時代のモノもあると言われているも、現代の魔法使いの保有する魔力は有限であり、「賢者の石」から供給される無限の魔力があった当時と違う為扱えない魔法もあるとか。

 そんな魔道に関する一級の資料があるここは、王国の最重要施設でもある。
 当然その管理は厳重あものであり、普通はそうそう解放されない。 
 しかし、原則王族で成人した者なら制約なく閲覧できるらしい。

 そんな書庫へ私たちは来ていた。



「す、すごい。こんなに魔導書が!!」


 そこは正しく大図書館の如く大量の本棚があり、たくさんの魔導書があった。

「エシュリナーゼ姉さん、ここ自由に見ても良いの!?」

「ええ、アルムならほとんどの書が読めるでしょう? 私は召喚魔法と獣人の使い魔契約について調べるから、読みたい本は閲覧台で読むのよ?」

「うん分かった!」


 私はそう言って本棚を見て回る。
 正直、普通では閲覧できないやばい本も山ほどある。
 
 例えば、【爆裂魔法】。
 爆裂魔法は簡単に言うと「核」だ。
 それも分裂するやつではなく融合する方の。

 一般的に「核」と聞くと放射能がどうのこうのと真っ先に来るけど、それは元素崩壊の時に起きる放射線が出る現象の方。
 核物質を均一的に爆圧すると、崩壊が進み一気にそれが分裂する。
 結果高熱と高圧縮の放射線が発生して、爆破と言う現象を起こす。

 その気になれば花火師と大学生あたりでも作れてしまうのが原爆。

 で、核融合はその逆。
 超高熱、超高圧で元素を融合する。
 元素と元素が融合されるときに分裂以上の高熱が発生するので、それが解き放たれると大爆発にも似た現象が起こる。

 そりゃそうだ、いきなり太陽が発生する様なものだから。

 近くの空気を焼き払い、プラズマ化されたその威力は全ての者を巻き込みながら爆散する。
 ちなみに放射線は出ない。
 なにせ崩壊ではなく融合なので放射線が出る幕が無い。

 水爆が放射能汚染されるのは、元素融合をする為の高圧、高熱を原爆で行うからだ。
 要は核融合させるために原爆で爆圧を均一にかけるから、最初に原爆が爆発する。
 そうすれば必然的に放射線が発生するわけだ。
 後は核融合で起こったとんでもない熱量が飛散させるのに役立つから、その辺一体が一気に放射能汚染される。

 で、【爆裂魔法】は核融合なので竜をも一発で殺せると言われる威力を人間が保有する魔力で引き起こす。
 当然術者はこれを放つと魔力切れを起こすものがほとんどで「死に芸」とか「一発芸」とか呼ばれる。


「凄いなぁ、こんな魔法まであるなんて」

 立ち読みして、【爆裂魔法】の使い方を覚える。
 正直原理さえ知ってしまえば、呪文詠唱の何も必要ない。
 こう見えても私は理解力には自信があるのだ。

「さてと、他には……」

 そんな事を言いながら見てみると、「異世界人召喚魔法について」などと言う本があった。
 私は驚き、その本を手に取り高速で読み始める。
 生前趣味として習った速読法がこう言う時に役立つ。
 さらに言えば、この新しい体はまるで写真を撮るかのように一度見たモノを正確に記憶できるから、頭の中にすぐにそのページが焼き付く。

 おかげで一度目を通した本は全て頭に入る。

「ふむふむ、つまり異世界召喚はこの世界を構成する『世界の壁』と別世界の『世界の壁』を細いパイプでつなげると…… そして召喚対象は内包する魔素が多い魂を優先すると。そうなればこっちの世界に来ればその魂に内包される莫大な魔力を解放出来て、勇者クラスの効力を発揮できると…… ん? こちらに召喚される場合『ギフト』と呼ばれる特殊なスキルを受諾する者もいる反面、魔素放出が出来ない個体もいるか……」

 私はふと思う。
 では異世界転生した者は?

 気になって調べるも、異世界転生についての書籍は見つからなかった。
 となると、私みたいに異世界転生した者はいないと言う事か?

「うーん、なんかものすごい事を知ってしまったような…… おや? 召喚魔法??」

 気になり始めていろいろと立ち読みしていると、召喚魔法についてもあった。
 これ、エシュリナーゼ姉さんが調べている書なんじゃと思い、閲覧台にいくつかの書を持って行っているエシュリナーゼ姉さんを見ると、難しい顔をしながら本を読んでいる。
 邪魔しちゃ悪いからとりあえず自分で読んでみようと本を開く。

 ちなみに、他のみんなもいろいろと本を読んでいる様だけどエナリアとカルミナさんは既に飽きてしまったようであっちで絵のたくさんある辞典らしきものを見ている。

「アルム様、こちらにおいででしたか」

「あ、マリー。いやぁ、凄いねここの本。外で見る魔導書の比じゃないよ♪」

「いえ、それはそうですし私の様な者まで入って良いのでしょうか?」

「いいんじゃない? マリーは僕の護衛もしているんでしょ」

「アルム様……」

 マリーが僕から片時も離れないのは護衛の為。
 だからこう言った場所にも入れるのだけど、本来なら入ってはいけないらしい。
 でもカルミナさんが入るのだからマリーも入って良いとエシュリナーゼ姉さんの鶴の一声で入れた。

 マリーは何故か私をぐっと抱きしめる。
 デカい胸に顔がうずまって苦しい。

「うれしゅうございます。一生アルム様についてまいります」

「ぷはぁ、分かったから離れてよ! 苦しいって!!」

 何とかマリーの抱擁から逃げ出し、召喚魔法について読み始めるとこれは古代魔法王国時代の書?
 上位言語は勿論、かなりの暗号化された文面が多い。
 それ程の物となると、余計に気になって来る。

「『理力向上』魔法」

 先ほど読んだ魔導書の中に『理力向上』魔法というモノがあった。
 これは目から入る情報、耳から入る情報をパズルのピースの様に記憶して、不足情報をどんど入れる事により目的の情報を齟齬なく理解できる魔法。
 平たく言うと暗号解読魔法だ。

 私はその辺の魔導書を片っ端からめくり、書かれている暗号部分をどんどんと解析してゆく。
 すると、その辺の本を二十冊ほど速読した頃にこの本の分からない場所が解読できた。

 暗号などは類似したものがあれば意外と容易に解読できてしまう物だから。
 だから読めない古代文字なども類似言語から解読するのが一般的なのだ。
 と、解読できたこの古代魔法王国時代の書はとんでもない事が書いてあった。

 つまり、召喚についての大原則。

 召喚魔法とは、基本は魔力を使って対象を時空を超えて自分の元へ呼び出し、代価である魔力を支払い使役する。

 この辺は基礎の基礎だが、問題は時空とその対象。

 異世界召喚なども基本は同じだが、『世界の壁』というモノをストローの様なものでつなげて呼び寄せる。
 この場合、相手の同意なしに代わりにこちらの世界の代価となるモノを向こうの世界に送り付ける事により成立するらしい。
 等価交換というやつらしい。

 悪魔召還などは本体自体は呼び出せないので、その精神体を呼び出す。
 悪魔はこちらの世界では実体を持たないので依り代である贄を介してこちらの世界で実体化をする。
 贄が滅びると精神体である悪魔は元の世界に戻ってしまう。
 なので、魔人などはこちらに呼び出した術者を依り代に実体化などするので、禁忌の召喚らしい。

 そして最後に同じ世界での召喚。
 召喚獣などがこれになる訳だけど、存在自体はもともとこの世界にあるので代価は単純に魔力だけ。
 自分より魔力量の多い者に魔力供給をされてその場で使役される。
 なので普通は使い魔と言うと魔力消費の少ないカエルやフクロウ、ネズミなどが一般となる。
 契約をした主人はその使い魔と意識の共有が出来る。
 つまり、使い魔が見たもの、聞いたものがそのまま術者にも反映されると言う事だ。

 だからエシュリナーゼ姉さんは召喚魔法を使ってあの刺客を探し出そうとしたのか。


 でも、今回呼び出してしまったのは獣人のカルミナさん。
 これって人や獣人でも出来てしまう物なのだろうか?

 そう思って、目をつぶりカルミナさんに意識を集中すると、なんとカルミナさんが見ているものが見えて来た。
 いや、それだけでなくカルミナさんが聞いているものまで!!

「本当だ、これすごいな……」

 出来ちゃうんだ。
 そう思っていると、私とカルミナさんの間に細い魔力の糸のようなものがある事に気付く。
 それは常に私の魔力の一部がカルミナさんに流れ込んでいる?

 つまり、私の魔力漏れの一端をカルミナさんが消費してくれている!?

 おおぉ~、これって私の魔力漏れ解消になるんじゃ!?
 となれば、カルミナさんにもっと魔力を送ってみれば……


 そう思い、私はカルミナさんに魔力を送る。
 すると、カルミナさんがビクンとなって、いきなりはぁはぁと息が荒くなってくる?
 おかしいなと思い、意識集中してカルミナさんと繋がると……

『な、なんニャ? いきなり体が疼くニャ!? こ、これ発情ニャっ! あたし、発情してるニャっ!?』

「うわっ! 止め止めっ!!」

 慌ててカルミナさんへの魔力供給を元の量まで落とす。
 すると、カルミナさんのモンモンが落ちついたようだ。


「あ、危ない…… 危うくカルミナさんが、あっはーん♡ になる所だった……」


 魔力の過剰供給ってああなっちゃうんだ……
 ん?
 と言事は、エシュリナーゼ姉さんは……

 いやいや、考えるのやめよう。
 しかしそうすると私の余剰魔力を誰かに下手に与えるのはいろんな意味で危険と言う事になる。
 残念ながら、この手はダメか。

 そう私が思っていると、手元に一冊の魔導書がぶつかる。
 何となくそれを見て私は思う。

 そうか、これならどうなんだろう??




 私はその魔導書を手に取り扉を開くのだった。
  
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