14 / 103
第一章:転生
1-13:連絡
しおりを挟む私の五歳の誕生日会から早十日が過ぎた。
私への襲撃があった事で現在イザンカ城の警備は以前にも増して厳重になっていた。
しかし王族である私たちにはそれほど影響が無く、いつも通りの生活をしていた。
「アルム君~、お茶しましょ~」
そろそろかなと思ったら、やっぱりアプリリア姉さんがやって来た。
午前中にいろいろ習い事をして、昼食後は自由な時間が多い。
大体私は食後に魔導書を読みふけっているのだけど、何時も一休みの頃にアプリリア姉さんがやって来て一緒にお茶をしようと言ってくる。
「アプリリアお姉ちゃん、私も私も~」
私の所でいつも一緒に本を読んでいるエナリアも手を上げて、ハイハイ言ってる。
いつも通りの日常が戻って来たかのようだった。
ばんっ!
「私もアルㇺと一緒にお茶するわよ!!」
元気に扉を開いてエシュリナーゼ姉さんもやって来た。
最近は毎日やって来る。
「エシュリナーゼ姉さん、お稽古事は終わったのですか?」
「もちろんよ! 私もお茶会に混ぜなさい!!」
相変わらずのエシュリナーゼ姉さんにアプリリア姉さんもあきらめのため息をついてお茶をする為にマリーに言う。
「それじゃ、マリー準備をお願い」
「はい、アプリリア様。ところで、エシュリナーゼ様は何故にアルム様を拘束なされているのですか?」
「いいじゃない! アルムに(魔力を)入れてもらってとっても気持ち良かったんだから、お茶の後またアルムと(魔力供給)するの! そして私たちの手で今度こそ(召喚魔法で)かわいい(使い魔の)子をね!!」
カッ!!
どんがらがっしゃぁ~ん!!
いきなりマリーとアプリリア姉さんの背景が真っ暗になって雷が落ち、二人の彩色が忘れられたかのように真っ白になる。
私はエシュリナーゼ姉さんに抱き着かれたまま言う。
「違うからね!」
「え~、何が違うの? アルムのならいつでも私に(魔力を)入れても良いのよ? 私は欲しいし♡ アルムに中でたっぷりと(魔力を)吐き出して欲しいなぁ♡」
だがしかし、このブレ無い姉はとんでもない事を口ずさむ。
「ななななななっ! アルム君!! 私と言う姉がいながらどう言う事ですか!?」
「アルム様!! そんな、まだお小さいのに!! イケません、ご姉弟で子供はイケません!! するなら私で!!」
アプリリア姉さんもマリーも何故か取り乱す。
いやちょっと待て、君たち。
私ってまだ五歳だよ?
下の毛も生えてないんだよ?
そんなのがどうやってそんな事出来るのじゃぁ―っ!!!!
「何よ、そんなに私とアルムで召喚獣を呼び出すのが問題なわけ?」
「「はいっ?」」
しかしエシュリナーゼ姉さんのその一言でみんな動きが止まる。
エシュリナーゼ姉さんはにこにこ顔でいう。
「前回は上手く行かなかったけど、今度は大丈夫。あの後アルム君に言われた魔法陣の改定したら魔力回路の通りが良くなったからね。今度こそは可愛い使い魔を召喚して使役して見せるわ!!」
ぐっとこぶしを握るエシュリナーゼ姉さん。
いい加減私を放して欲しい。
「しょ、召喚獣って使い魔ですか?」
「それではアルム様とは……」
「何かおかしい事でもあった?」
エシュリナーゼ姉さんにそう言われ、真っ赤になる二人だったのだ。
* * *
「ところでマリー、何か分かった事あるの?」
お茶を飲みながらエシュリナーゼ姉さんはマリーにそう聞く。
マリーはエナリアにクッキーのお皿を差し出しながら、エシュリナーザ姉さんに顔だけ向けて言う。
「残念ながらまだ」
「ふーん、アマディアスお兄様もウチの密偵を使って各方面に探りを入れているみたいだけど、やっぱり冷静に考えるとジマの国がうちのアルムに手を出す理由が見つからないのよね……」
そう言って、クッキーをつまみ口に運ぶ。
「あの後は全く手出しをしてこないとか。でも殺るなら、例えばアルムのこのクッキーに毒を入れるとか」
ぱきっ!
エシュリナーゼ姉さんはマリーを見ながらそう言う。
しかしマリーは落ち着いて言う。
「ご安心を。クッキーの毒見は既に私がしております」
それを聞いたエシュリナーゼ姉さんはつまらなさそうにもしゃもしゃとクッキーを食べて飲み込み、お茶で流す。
「さて、アルムこの後付き合いなさいよ。今度こそ召喚獣を呼ぶから!」
「エシュリナーゼ姉さん! この後アルム君は私とイージム大陸の伝承についてお話をする予定です!!」
「私もお話聞きた~い」
しかしアプリリア姉さんやエナリアが声を上げる。
「うっさい! これは姉命令! 姉の命令は絶対なの、アルム行くわよ!!」
「うわっ、エシュリナーゼ姉さん!?」
「マリーもついて来て!」
そう言ってエシュリナーゼ姉さんは強引に私を引き連れて部屋を出て行くのだった。
* * *
「それで、本当の所はどうなの?」
「どうと言われましても……」
エシュリナーゼ姉さんはあの魔法陣が書かれた部屋に私とマリーを連れ込んでからそう聞いてくる。
一体何がだろうとエシュリナーゼ姉さんを見ていると、姉さんはマリーをじっと見つめている。
マリーはため息をついて、渋々口を開く。
「ジマの国に異変は有りません。ローグの民も黒龍様の指揮下にあります」
「ではなぜ?」
「これは推測ですが……ジーグの民の者ではないかと」
それを聞いてエシュリナーゼ姉さんは首をかしげる。
「ジーグの民? 何それ??」
「ジーグの民はローグの民同様、黒龍様の娘、初代ジマの国の始祖王だったお方に仕えていた者たちと聞いています。その能力はローグの民に引けぬとも言われております」
マリーはそう言って大きく息を吸う。
そしてエシュリナーゼ姉さんに顔を向けてから静かに言う。
「ジーグの民が何らかの形でどこかの者の密偵をしているのではないかと」
「どこかの者って、どこよそれ?」
「残念ながらそこまでは……」
「アマディアスお兄様にはこの件はもう話しているのでしょう? だからウチの密偵たちを動かしたと言う訳ね? それもお父様の許可を得て」
「……」
エシュリナーゼ姉さんにそう言われマリーは黙り込む。
つまりそれは姉さんの言葉を肯定すると言う事だ。
すると姉さんは私に向かってしゃがみ込み、目線を合わせて言ってくる。
「アルム、大丈夫よ。あなたは私たちが守る。だからあなたは今までお通りでいなさい。面倒な事は私たちが始末するからね」
そう言って私の頬にキスをしてくる。
ちゅっ♡
「エシュリナーゼ姉さん?」
「その何者かを見つけ出し、後悔する暇もなく消し去ってやる。さあ、アルㇺ。私の使い魔を召喚するわよ!!」
エシュリナーゼ姉さんはそう言ってまた魔法陣へと向き直るのだった。
31
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる