18 / 22
第四章:流れゆく時の中で
その十七:お墓参り
しおりを挟む「それじゃぁ、行こうか?」
「うん……」
服を着込んで私とイオタは出かける準備をする。
目的は彼のお墓に行く事だ。
「おっと」
「ほらしっかりしなさいよ。もう、あんなに激しく頑張るからよ? 初めての癖に」
「い、言うなよ/////// だって、サーナがあまりにお可愛くてさ////////」
「なっ///////!」
さっきまでイオタと愛し合っていた。
いや、一晩中と言うか。
そして事が終わり、やっと落ちつた頃に当初の目的である彼の墓参りに行く事にした。
私もイオタも準備が出来て下の階に降りて来ると、カウンターの店主がニヤニヤしていた。
もうバレバレである。
この宿には数日泊まる事は決めてあるので、今後店主に顔を合わせるのが恥ずかしい。
それでも一階の食堂で軽く朝食を取り、私たちは目的である彼のお墓に向かう。
「それで、そのお墓ってのは何処にあるんだい?」
「うん、国の共同墓地にあるんだ。お城のすぐ近くなんだけどね。ただ、その前にちょっと買い物がしたいんだ」
イオタの腕に手をかけて私はそう言う。
何となく嬉しいのと、まだちょっと緊張するのとが入り混じっているけど私がイオタの腕に抱き着くことにイオタは嫌がる様子はない。
「買い物って何?」
「うん、お墓にお供えするお花」
私の答えにイオタは「ああぁ~」とか言っている。
まさか花も持たずにお墓参りに行くつもりだったのだろうか?
「そうだよな、お花は必要だよな」
「私が言うまで気が付かなかったでしょう?」
「いや、そのそれは……」
少し慌てるイオタにおかしくなってくる。
しかしイオタはパチンと指を鳴らし、私に言う。
「とにかく、花屋を探してお墓参りに行こう。そして俺たちの事も伝えよう」
「……うん、そうだね」
彼のお墓に新しい彼氏を連れて行くってのもなんだけど、過去に対してキリをつけたい。
それに、今はイオタがいるのだから彼だって判ってくれると思う。
大通りを歩いて花屋さんを探す。
昔の記憶とやはり若干街並みも変わっている。
だから記憶にあるお花屋さんも今は無い。
「うーん、昔はここにお花屋さんがあったのに」
「ははは、仕方ないよ。探しに行こう」
イオタはそう言って私に手を差し伸べる。
私は嬉しくなって、彼の手を取り二人してまたお花屋さんを探し始めるのだった。
* * *
「花も良し、タルタルから預かったお酒も良しっと」
なんだかんだ言いながら二人していろいろなお店を寄り道ばかりしながらやっと花屋さんを見つけた。
お昼も回ってしまって、軽く食事をしながらなのでまるでデートでもしているかのようだった。
しかし大通りの裏にあった小さなお花屋さんを見つけ、やっとお花を買ったのでいよいよ彼のお墓に向かう。
「そう言えば、さっきの花屋が言ってたけど、今って墓参りの次期なんだって?」
「うん、このジマの国には夏頃と冬が明けた頃にお墓参りをする風習があるのよ。なんでも先祖を敬う習慣の一つらしいけどね。そう言えば、その頃にはあの世から先祖の魂が一定期間帰って来て子孫と共に数日間過ごすと言われているらしいわね」
「なんだよそれ? まさかゴーストでも出るんじゃないだろうな??」
確かに妙な習慣だった。
この世界には実際に死者の魂が何らかの理由でゴーストとなる場合がある。
肉体が残っていればアンデッドになる事も。
それなのに死者の魂をこの世へ迎え入れ、子孫と数日共に過ごす風習とかもの凄く変だと思う。
でもまぁ、私が訪れたこの時期がたまたまそれだったのは、何かのめぐりあわせだろうか?
そんな事を思いながら二人してお城へ向かう。
険しい山に寄りかかるように建てられたそのお城の横に目的の共同墓地がある。
そこは国に対して忠義を全うした者たちが眠る場所。
そして彼が眠る場所でもあった。
「もう少しで着くわ」
「結構登るな、こんな高台に墓地があるんだ」
そこはこのジマの国が見渡せるほどの高台にあった。
まるでこの国を見守るかのように。
そして私は記憶の中にある、彼の墓へと向かう。
あの頃毎日毎日通った彼のお墓。
ここはあの当時と変わっていなかった。
この通路を曲がって、そして行き当たりの場所が彼のお墓だ。
私は昔の事を思いだしながら、切なさをかみしめながら確認するかのようにその道をたどって行く。
そしてとうとう彼の墓標へとたどり着く。
が、そこには真っ黒な髪の毛で、真っ黒な服を着た女性がいたのだった。
1
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

覗いていただけだったのに
にのみや朱乃
青春
(性的描写あり)
僕の趣味は覗きだ。校舎裏で恋人同士の営みを覗き見するのが趣味だ。
今日はなんとクラスメイトの田中さんがやってきた。僕はいつも通りに覗いていたのだが……。


今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

疲れる目覚まし時計
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
朝、僕が布団の中でまどろんでいると、姉さんが起こしに来た。
まだ時間が早いから寝ようとする僕を、姉さんが起こそうとする。
その起こし方がとても特殊で……。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる