な・い・し・ょ♡シリーズ短編集

さいとう みさき

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リップスティックの、な・い・し・ょ♡~刺激が欲しいの、わたしは!~

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「はぁ~、マンネリかしらね……」


 彼氏の部屋から直接会社へ向かっている私は、昨日と同じ服のままでも気にせずに出勤をする。

 私は結城静《ゆうきしず》27歳。

 そろそろ結婚も視野に入れてはいるが、今の彼氏との関係は何となくマンネリ化している。
 彼の事は嫌いではない。
 しかし、昨日も肌を合わせては見たものの、付き合い始めた時のような興奮は薄れている。
 今はただ、お互い快楽だけを求める行為になっていた。

「気持ちは良いんだけどね」

 付き合い始めて早三年。
 相手は今年三十歳になる。
 向こうもそろそろ結婚しようと言ってくれているので、私はそれを受けようと思う。
 今年の夏休みには、彼の実家に挨拶に行く予定だ。
 
「体の相性は悪くはないのよね……」

 週に一度は肌を合わせていて、性的な欲求不満は解消されるけど、私は何故か満たされていない。
 でも、友人の様に他の男を探す気にはなれない。
 私は浮気は許せないたちなのだ。

「何かいい方法は……」

 ぶつぶつと言いながら駅について、ふと気づく。
 リップが切れていたんだ。
 会社は空調が効いていて快適ではあるものの、唇が渇くと切れてしまう。
 なので化粧で口紅つけるのもいいけど、紅移りとか面倒なのでリップをよく使う。
 これならあまり紅移りとか気にしなくていいし、厚化粧にならなくて済む。

 が、駅の売店にはこんな時に限って薬用のリップスティックしか売ってなかった。

「まぁ、無いよりはましだけど……」

 私は昔の看護婦さんの絵が描かれた薬用リップスティックを購入して早速唇につける。
 久しぶりにこれ使ったけど、唇に塗ってしばらくするとスースーとする。
 そう言えばこれって、清涼感があるんだっけ?
 これでうっすらと色がついていれば好いのだけど、本当に乾燥防止にしかならない。
 安いからいいけど、帰りにちゃんとしたものをドラッグストアーで買って帰ろう。
 そう思いながら出社をするのだった。


 * * *


「先輩~、昨日はお楽しみだったんですね///////?」


 後輩の三波紗良《みなみさら》がニマニマしながら社員食堂で自分のトレーを置きながら相向かいの席に着く。
 私はため息をつきながら言う。

「今更よ。結婚を考えている相手だし私に言い寄ってくる他の男なんてもういないしね」

 言いながらうどんをすする。
 昨日と同じ服装で出勤しているので昨日は何処でナニをしてたかバレバレだ。
 まぁ、隠す必要もないしむしろ虫《他の男》よけになる。
 私は浮気は許せいないたちだから。
 
 お昼ご飯のきつねうどんを食べ終わり、口元を拭いてから薬用リップを取り出す。
 それを唇に塗っていると後輩の三波紗良がそれに気付く。

「あれ、やっぱり先輩今日は色付きのリップじゃないんだ。それ、薬用リップじゃないですか?」

「ああ、ちょうど切らせていてね。帰りにはちゃんとしたの買うつもりよ」

「じゃあそれって、その後はあれに使うんですか///////?」

「あれ?」

 何やら意味深な三波紗良に首を傾げ聞く。
 すると、三波紗良はこっそりと耳打ちする。
 私はそれを聞いて思わず赤面をする。


「これってそんな所に塗って大丈夫なの?」

「これって、薬用だから粘膜に塗っても大丈夫ですよ。塗ってしばっらくするとじんじんとしてたまらくなるんですよ~////////」


 まさかこれにそんな使い方があったなんて!
 なんでも男性に塗っても良いそうだ。
 そう思うと良い買い物をした気になって来た。

 今度彼と会う時に使ってみよう。
 そう、思う私だった。


 * * *


「ふう、なんか集中できないわね……」


 三時の休憩時間に自販機の所に来て、コーヒーを買う。
 午後のだるい時間で集中力が散漫になりかけていて、眠気が来ない様にコーヒーを飲んで午後の残りの時間を乗り切ろうとした。
 
 缶コーヒーを飲んで、ちょっとトイレに行きたくなる。
 私は空き缶をゴミ箱に捨てて急いでトイレに向かった。


 *


「ふう、すっきりとした……」


 用を済ませ、下着を上げてふと思い出す。
 三波紗良が言ったあれを。
 ポケットの中には薬用リップが入っている。
 今日はあと二時間もしないで終業時間になる。
 となればこの薬用リップも本来の使い道としてはお役目御免となる。

 そうすると、後の使い道は……


「ごくり。 か、彼と使う前にどのくらい効くか試してみる必要はあるわよね////////」


 いくら薬用で粘膜に塗っても問題無いとは言え、本番でいきなり使うのはためらわれる。
 だとすると、一回くらいは先に使ってみる必要がある。
 私はポケットに手を突っ込み、薬用リップを引っ張り出してみる。

「こ、これをアソコに……」

 そう思った私は早速それを使ってみるのだった。


 * * *


「それじゃ、結城これ頼むわ」

「んぁ、は、はい……」


 はぁ。

 何となく熱い息が出てしまう。

 上司に書類を渡されて私はそれを受け取り自分の席に戻ろとすると、上司が何かいつもと違う。
 何と言うか、私から目を反らす。
 いや、他の人も何となく私から目を反らす、男の人ばかり。


「先輩、先輩、どうしたんですか?」

「ぅうん? なぁに??」

「いや、その、何と言うか先輩からもの凄いフェロモンと言うか……」

 そう言う三波紗良が少し顔を赤くする。
 ああ、そう言う事か。

 私は今もの凄く興奮している。
 もう、何と言ったら良いのか、あそこがずっとジンジンしていた。

 いや、スースー?
 今まで味わった事の無い刺激がずっと私を襲っていた。


「先輩どうしたんですか? 午後になってからやたらと色っぽいと言うか、フェロモン駄々洩れじゃないですか??」

「ぅん~、なんでもないわよぉ♡」

「そ、それです! 何と言うか、所々でその////////」

 まあ、正直ずっとあそこが湿っている。
 だってこんなに刺激があるとは思ってなかったから。
 でもそれが逆に良い。


 私、みんなの前で興奮しちゃっている!!


「んぅ、もうじき終業だからぁ、残りのお仕事は早めに終わりにしましょ♡」

 すっと三波紗良の頬に手を当てさらっとその手を戻す。


 びくんっ!


 三波紗良がびくつく。
 そして顔を赤くする。

「せ、先輩?」

「さ、お仕事お仕事」

 そう言って私は仕事に戻るのだった。


 * * *


「やばいなぁ~、家まで我慢できないかも////////」

 会社を出て、電車に乗りながらもじもじしてしまう。
 もう、正直触りたくて触りたくて仕方がない。
 そのくらいアソコがじんじんしている。
 これ、今も完全に濡れている。

 まさか薬用リップがここまで効くとは思っていなかった。
 こんなの塗って彼としちゃったら……


「すんごい事になりそう♡」


 そう思い、目的の駅について家路につこうすると近くのドラックストアーに目が行く。

「あ、そうだリップ買わなきゃ……」

 薬用リップは別の所に塗布してしまったから、もうそこ専用になる。
 まさかそれをまた唇に塗る訳にはいかない。


「ふふ、唇に塗るって意味では上も下も同じか……」


 私はそんな独り言をいいながらドラッグストアに入っていく。
 多分、目的のリップと同時にもう少し予備の薬用リップも買うために。




<リップスティックの、な・い・し・ょ♡> 

―― おしまい ――
 
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