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第二章祖国を守る為に
第九話:奇襲
しおりを挟む「おーっほっほっほっほっほっ! まさかここまで敵が慌てるとは、まるで怯える子供の様ですわ!!」
アザリスタはこぼれ出そうなビキニ姿で腰に手を当て大笑いをしていた。
笑うたびにその大きな胸が揺れるので見ているこちらも眼福である。
「あ、あの、アザリスタ様、この投石器とか言うので大量に海の者たちを放り投げると同時に魔法攻撃をするのは良いのですが、戦《いくさ》支度ではなく、何故このような姿でしなければならないのですか?」
リシェットは手や足には鎧の一部をしてはいるものの大事な部分は下着同然の布面積の小さなビキニ姿であった。
アザリスタは王族なので着替え時などに裸を使用人などに見られているのでそれほど気にはなっていないが、普通の者はここまで肌を露出していたら恥ずかしいのが当たり前である。
まぁ、その恥じらう姿を見るのもまた一興で同じく船に乗り込んでいる男性陣はほとんどの者が前かがみになってしまう。
しかも海パン一丁の姿で。
「何を言っているのですの? この聖なる衣服こそ海で悪魔に対抗できる神の御加護なのですわ! 事実ここまで驚くほど順調に行っているではないのですの!!」
アザリスタがそう言うと、発案者である雷天馬は大きく頷く。
決して美女たちの水着姿が見たいと言うよこしまな考えではない。
これは仲間の精神を安定させて不安を拭い去る為の処置なのだ。
この世界では海は悪魔の住まう所、海に出ることなど本来はタブーとされる。
故に、海を船で移動するなど誰も考えつかない。
ましてや、海から攻撃を喰らえば誰だって悪魔たちから攻撃されたと思い込んでしまう。
「それにしてもこの『帆船』と言うモノは便利ですわね? こんなにも早くカーム王国を通り過ぎ、背後からキアマート帝国の軍隊に襲撃がかけられるとはですわ!」
『まあ、手漕ぎのボートに比べりゃ確かに早いわな。それに船を操る連中も筋が良い。ちくしょう、こいつらがいればヨットの大会に優勝できたかもしれねぇのにな!!』
雷天馬はそう言って悔しがる。
大学時代からヨットクラブなどと言う女性にモテそうだと言う理由で入ったクラブの知識が役に立っていた。
帆船もヨットも原理は同じ、いかに海上の風つかむかによってその速度は変わる。
そして投石器にタコやナマコ、ウニを載せ放り投げて陸から見えるキアマート帝国の軍隊に動揺を誘い、そこへ魔法騎士が遠距離魔法で攻撃をすればたとえ魔物たちであっても混乱を起し、散り散りに内陸に逃げていくのだった。
更にその姿が彼らの恐怖心をあおる。
恐ろしい海から船にのって裸同然の女たちが海の下僕たちを投げつけながら襲ってくる様は、まさしく淫魔の襲来と見えてしまう。
この世界にも淫魔は存在するが、一旦彼女らに魅了されればすべての精魂を吸いつくされ絶命してしまう。
如何にキアマート帝国の者とは言え混乱をしてしまうのだった。
『よっし、奇襲は成功だから次だな。カーム王国の守りを固めるんだろう?』
「勿論ですわ。しかしそんなやり方で相手の動きを制せるモノなのですの?」
「やって見なきゃわからねぇだろう?」
そう言って雷天馬とアザリスタはくっくっくと笑い声をあげるのだった。
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