テグ戦記

さいとう みさき

文字の大きさ
上 下
89 / 89
エピローグ

第89話エピローグ ジルの村

しおりを挟む
エピローグ ジルの村


 「先生! おはようございます!!」

 「お、おはようございます……」


 見ればソウマという少年がやって来ていた。
 彼は一緒に居る女の子と手をつないで歩いてくる。


 「おはよう、ソウマ、ミーニャ。ちゃんと宿題やって来たか?」

 「うっ、せ、先生宿題多すぎ! あんなの一晩で終わる訳ないよぉ!!」

 「ミーニャまた遊んでいて宿題やらなかったくせにぃ~。僕の宿題取り上げようとするんだもん!」


 まだ幼い彼らはそう言いながら俺の目の前ではしゃぐ。
 ついつい口元が緩んでしまうが、ちゃんとやることはやらないといけない。


 「先生、おはようございます!」

 「おはよう、フェンリル」


 真っ赤な髪の毛の少女もやって来た。
 そう言えば彼女は今年成人を迎えるのだったな。


 「フェンリル、今日はお前にこれを渡したい。お前ならきっとこれを使いこなせるだろう」

 「はい? なんですかこれ? 握り手?」


 彼女はそれを掴んでしげしげと眺めている。
 俺はそれを指さしながら言う。

 「それは鬼神が使っていたセブンソードの中で一番強いなぎなたソードだ。魔力を込めて刃を出すイメージをして見なさい」

 俺にそう言われ彼女はその握り手をもう一度見てから魔力を注ぎ込む。
 すると、シャコーン! と言う音と共に両の端から大きな刃と小さな刃が伸び出る。


 「うわっ! 驚いた!! あ、でもすごくきれいな刀身……」


 「これを切ってみろ」

 そう言ってミスリルの塊を投げつける。
 彼女は心得たようにすぐに宙に浮いたそのミスリルの塊に一閃する。


 きんっ!


 ばかっ!
 ごとっ!!


 空中で切られたそれは見事な切り口で二つに割れてその場に落ちた。
 ミスリルの塊をここまで奇麗に切るか……


 「うわっ! 凄い切れ味!! それに刃こぼれ一つしていない!!」

 「今のはミスリルだ。それをこれだけ奇麗に切れるようになったな。合格だ。その剣はお前にあげよう」

 「えっ? いいんですか先生!?」


 さてどうだろう?
 しかし彼女は今までのままのようだった。

 まだ駄目か。
 仕方ない。

 俺は内心ため息を吐いてから彼女らに部屋に入って授業を始めると告げる。


 そして気付く。


 「シェル様か……」

 「流石ね、アイン。調子はどう?」


 シャルによく似ているが彼女よりずっと大人びたエルフが物陰から出てくる。
 俺は苦笑してから応える。


 「もう何度目の転生か忘れた。しかし調子は悪くない」

 「そう、だったらいいかげんエルフの村にも足を延ばしなさいよ。もう千年も待たせてるのよ?」


 そう言いながら頬を膨らますその表情はシャルによく似ている。
 
 そうか、もう千年も経つのか。
 あの後俺はシャルに会っていない。
 
 まだ俺が望む平穏な世界に成り切っていないからだ。


 世界は小さな小競り合いは起こっているが俺が戦ってきた時のように大きな戦争も一つの大国が力をつけ過ぎる事も無くなった。

 三百年前にこの世界が崩壊する危機はあったがあの女神が今それを防いでいる。


 俺は苦笑する。

 
 そして子供たちを見る。
 他の子供たちも集まってきたようだ。


 「シャルにはよろしく言ってやってくれ。俺のやらなければならない事はまだ終わっていないと」

 「……ティアナの転生者は?」

 「駄目だな、全く目覚める様子もない。鬼神から受け取ったあれらの武具を前にしても思い出す様子も無いしな。前の時はもう少し早く目覚めたのだが……」

 「なら、仕方ないわね。エルハイミにはまだ伝えない方が良いでしょう? 無理矢理目覚めさせると魂が崩壊してしまうからね」


 そう言ってシェルはすっと物陰にまた隠れた。


 「いいかげんシャルにも会いに行きなさいよ? あの子、ずっとあなたが来るのを待っているわ。あ、そうそう、今のあなたもステキなおじ様で好きだって言ってたわよ?」


 それだけ言って完全に気配を消す。

 俺はその物陰を見ながらもう一度苦笑する。


 「先生ぃ! みんな来たよぉ!!」


 「ああ、分かった、それじゃぁ授業を始めようか?」

 数人の生徒が俺のもとへやって来る。
 俺は子供たちに手を引かれながら教室へと向かう。


    
 また彼らを導くために……




 ―― テグ戦記 ――


 Fin


**************************************

<あとがき>

 まずはここまで読んで下さった読者様に感謝を申し上げます。

 
 ありがとうございました!!


 私、さいとう みさき の作品の中では「どうしたんだお前!?」とか言われそうなとち狂った戦記物でした。

 だって、一度は書いてみたい巨大ロボットもの。

 周りから絶賛「駄目だろこれは?」とか「今更?」とか「無理無理」とかさんざん言われながらも強行して書いてしまった原案、みさきRのこの物語。

 きっと皆様には受けないだろうと言う事は分かり切っていました。
 それなのに自己主張でコンテストに出たりして、うれしい事に一次通過という快挙をとげ、みさきSにドヤ顔したもんです。
 
 そんなお話もとうとう終わりました。

 いやぁ、予定よりずっと長かった……

 なんか、最初期のプロットに対して余分な部分が増えたり、最後の方はもう神話級になっちゃったりと「おいおい、中二病出まくりじゃないか? お前、歳いくつ??」とか言われそうでした。
 でもね、こう言った物語は自分が書きたい事を書きまくるってのもいいじゃないですか! 
 そう、いい歳こいても少年ジャ〇プを読んでも良いでしょう!?
 心はずっと少年なんだから!!


 ……すいません、お目汚しで。



 アインの生き延びる為の戦いはこれで終わりです。

 そして「ぼくの姉は世界最強の師匠!-お姉ちゃんが立派な男にしてあげる!!-」の先生ってこれで誰だかわかりました?
 
 エルハイミシリーズでこの「テグ戦記」が入っているってこと自体「おいおい」とか言われてジト目されそうなんですが、あの世界で起こっている様々な事はこの後も書いていく予定です。

 その中で「ギャグ無し」というのが有ってもいいかなと。
 
 設定はそのまま使っているので、知ってる人には所々で答え合わせとか出来たのではないかと思っております。


 ご興味のある方は「エルハイミR-おっさんが異世界転生して美少女に!?」や「ぼくの姉は世界最強の師匠!-お姉ちゃんが立派な男にしてあげる!!-」も是非どーぞ(宣伝!!)!


 さてさてそれでは、こんなお話にお付き合い頂き、そして読んで頂きありがとうございました!

 またほかの物語でお会いできることを祈って。




 さいとう みさき  

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

知らない異世界を生き抜く方法

明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。 なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。 そんな状況で生き抜く方法は?

処理中です...