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第十五章
第83話第十五章15-7シャルの為に
しおりを挟む15-7シャルの為に
俺はとうとうアルファードを倒した。
「鋼鉄の鎧騎士」に乗り込みまた塀を乗り越えて逃げようとする俺の耳に兵士たちの声が聞こえて来た。
「あっちだ! あの精霊使いのせいだ!!」
「『鋼鉄の鎧騎士』であの精霊使いを捕まえろ! 門の土の槍はまだ退かせないのか!?」
「捕まえたぞ、精霊使いだ!! こいつ、アルファード様と一緒に居た奴か!?」
城壁の向こうから聞こえたそれに俺は慌てて「鋼鉄の鎧騎士」をそちらに向かわせる。
『シャル!』
兵士たちの話ではシャルが捕まった様だ。
せっかく目的が果たせたと言うのに何やってんだあいつは!?
慌てて塀を飛び越え門の外に行くと向こうの方で「鋼鉄の鎧騎士」三体がかりで樹木にツタのようなモノが巻き付いていてわさわさとうごめく大木を押さえ、中央にいるシャルが兵士たちに捕まっているのが見えた。
『シャルっ!』
『こいつ、黒い【鋼鉄の鎧騎士】だとっ? このぉっ!!』
後ろから残り一体の量産型「鋼鉄の鎧騎士」が襲いかかって来る。
しかし俺はそれを振り向くことなく剣を振り上下に分割する。
ずばんっ!
「な、なんだこの黒いのは!」
「伝令!! そいつにアルファード様がやられたぁっ!」
城壁の上から他の兵士が叫ぶ。
俺は構わずシャルを助け出そうとそちらに向かうが、兵士の一人がシャルを引っ張って喉元に剣を向ける。
「そこの黒い『鋼鉄の鎧騎士』動くなぁ! 動けばこのエルフを殺す!!」
ちっ!
やっと目的を果たせたと言うのにこんな所でシャルを失うわけにはいかない!!
俺は「鋼鉄の鎧騎士」を止めて手に持つ剣を地面に突き刺す。
それを見たその兵士は笑いを上げる。
「ははっ、はははははっ! いいぞ、おい黒いの! 『鋼鉄の鎧騎士』から降りろ!」
兵士はそう叫ぶ。
ズシン、ズシン
俺のまわりに剣を構えたままの残り三機の「鋼鉄の鎧騎士」がやって来て恐る恐る俺の機体の肩に手をつき腕を取り跪かせる。
俺は大人しくそれに従う。
「おい、黒いの! とっととその『鋼鉄の鎧騎士』から降りろ! さもないと!!」
びりっ!
「きゃぁっ!」
その兵士はシャルの衣服を破る。
白い肌があらわになり薄い胸が見える。
「は、ははははは、どうだ? お前が言う事聞かなければこのエルフのはらわた今ここでぶちまけてやるぞ?」
その兵士はシャルの胸下へと剣を下げる。
『待て! 分かった、今降りる』
「アイン! 駄目っ!!」
シャルがそう叫ぶがこのままシャルを見殺しには出来ない。
それに俺は当面の目的だったアルファードの奴を倒せたこともありシャルさえ助かれば後はどうでもいいと考え始めていた。
ばくん
胸の扉を開け体を拘束する鎧の様なものをすべて外し地面へと降り立つ。
するとすぐに兵士たちが寄って来て俺を捕らえる。
「捕まえたぞ!」
「こいつがアルファード様をやったのか?」
「ああ、間違いない。砦の方からそう伝令が来た」
「畜生、こいつ殺してやる!!」
『待て。そいつにはいくつか聞かなければならない事が有る。殺すな』
兵士たちに腕を後ろで縛られ剣で首を切り落とされそうになるが量産型の「鋼鉄の鎧騎士」に乗っている奴から待ったがかかりとりあえずはすぐには殺されない様だ。
「ははははっ、だがこいつは始末しちまおう! 抱くにしたってこんな貧相なのじゃ起たねえし、アルファード様の隣で何時も威張っていやがって気に入らなかったんだ!」
ちゃきっ!
「えっ!?」
その兵士は剣を振りあげ、シャルに突き刺そうとする。
「操魔剣!!」
俺は「操魔剣」を使い脚力を一瞬で強化してその場から飛び出す。
そして振り下ろされる剣とシャルの間に入る。
どっ!
ずぶっ!
剣は俺の背中に刺さったが何とか間に合った。
アーシャの時もザシャの時も俺の目の前で女たちはその命を散らした。
そんなのはもうたくさんだ!!
「こ、こいついきなり飛び込んできやがった?」
「アイン、ちょとアインっ!!」
俺の背中に剣を突き刺したままその兵士は驚きの声を上げる。
シャルの悲鳴を聞きながらそれでも俺は声をあげて叫ぶ。
「こいっ! 俺の『鋼鉄の鎧騎士』!!」
ぶんっ!
三つある瞳が一瞬光り胸の扉を閉じながら俺の「鋼鉄の鎧騎士」が立ち上がる。
『なんだと!? 誰も乗っていないはずなのに!?』
『うわっ、なんて力だ!?』
俺の「鋼鉄の鎧騎士」を取り押さえていた量産型「鋼鉄の鎧騎士」は誰も乗っていないのに動きだした俺の「鋼鉄の鎧騎士」に驚き動きが一瞬止まる。
感覚が「鋼鉄の鎧騎士」とつながり背中に剣が突き刺さった俺が見える。
俺はそのまま「鋼鉄の鎧騎士」を走らせ俺とシャルを抱え上げそばにいた兵士を蹴り飛ばしながら逃げ出した。
後ろの方で罵声や怒声が聞こえるが今はとにかくこの場を離れなければいけない。
俺は必死になって「鋼鉄の鎧騎士」を走らせるのだった。
* * * * *
「アイン、アインってば! ちょっとしっかりしてよ、アインっ!!」
何処をどう走ったか忘れたがとにかくガレントの砦からだいぶ離れた所で意識が遠くなり崩れるように「鋼鉄の鎧騎士」を止め地面に俺たちを置く。
そして地面に置かれた時点で俺は意識が遠のく。
「駄目アイン! 死んじゃ駄目! しっかりして!! 今治癒の精霊魔法をかけるから!!」
「シャ……ル……、 ケガ……ない……か……?」
「馬鹿っ! 私の事より自分の事心配しなさい!! とにかく止血して!」
涙目で騒ぐ彼女の顔を見て美しいなと思いながら俺の意識は遠のいていくのだった。
* * * * *
其処はとても暖かい所だった。
森の清々しい香りがする。
血なまぐさい戦場ばかり渡って来た俺からするとまるで楽園のような場所だった。
と、向こうに誰かいる。
だいぶ離れた所だったがその人影には見覚えが有った。
「あれは…… アーシャ! ザシャ!!」
俺の大声に二人は微笑んでいた。
あのザシャでさえ笑っている。
なんだよ、こんな所にいたのかよ……
俺もそっちに行きたい。
お前たちに触れたい。
しかし彼女たちは悲しそうな顔をして首を横に振る。
そして声にならない声を発する。
なにを言っているのか分からない。
俺は更に一歩前に踏み出そうとするが体が動かない。
しかし最後には彼女たちはまた穏やかな表情になり振り返り更に遠くへと歩き始める。
「お、おい! 待ってくれ! アーシャ、ザシャぁっ!!」
どんなに叫んでも手を伸ばしてもまるで鉛にでもなったかのように俺の体は動かない。
もがき、前に進もうとしても動けない。
動けないんだ……
* * * * *
「アイン? アインっ! しっかりして! 私が分かる?」
目の前にシャルがいた。
目の前なんてもんじゃなかった。
顔と顔がくっついてしまうほどの距離。
「良かった、気が付いたのねアイン」
「シャル? 俺は一体……」
そこまで言って気が付いた。
裸のシャルが裸の俺に抱き着いていた。
何処かの洞窟なのだろう、近くで焚火がゆらゆらとうごめいていて温かい。
「アインの馬鹿っ! なんて無茶するのよ!!」
「俺は…… お前が死ぬところなんぞ見たくも無いんだ…… もう俺の前で死なれるのはごめんなんだ……」
「だからって、あんなに血を流して! 馬鹿っ! これが終わったら私を連れて行ってくれるんでしょ! こんな所で死ぬんじゃないわよ!!」
ちゅっ!
言いながらシャルは俺の唇に自分の唇を重ねる。
そしてすぐに俺から離れて俺の顔を両の手でしっかりと持ち言う。
「アイン……」
「シャル?」
突然の事に俺は驚いているがシャルの瞳は俺だけを映していた。
ぱちっ
焚火の音が聞こえ、そしてまた唇を重ねる。
そして俺たちはその影を混じらわせるのだった。
俺はとうとうアルファードを倒した。
「鋼鉄の鎧騎士」に乗り込みまた塀を乗り越えて逃げようとする俺の耳に兵士たちの声が聞こえて来た。
「あっちだ! あの精霊使いのせいだ!!」
「『鋼鉄の鎧騎士』であの精霊使いを捕まえろ! 門の土の槍はまだ退かせないのか!?」
「捕まえたぞ、精霊使いだ!! こいつ、アルファード様と一緒に居た奴か!?」
城壁の向こうから聞こえたそれに俺は慌てて「鋼鉄の鎧騎士」をそちらに向かわせる。
『シャル!』
兵士たちの話ではシャルが捕まった様だ。
せっかく目的が果たせたと言うのに何やってんだあいつは!?
慌てて塀を飛び越え門の外に行くと向こうの方で「鋼鉄の鎧騎士」三体がかりで樹木にツタのようなモノが巻き付いていてわさわさとうごめく大木を押さえ、中央にいるシャルが兵士たちに捕まっているのが見えた。
『シャルっ!』
『こいつ、黒い【鋼鉄の鎧騎士】だとっ? このぉっ!!』
後ろから残り一体の量産型「鋼鉄の鎧騎士」が襲いかかって来る。
しかし俺はそれを振り向くことなく剣を振り上下に分割する。
ずばんっ!
「な、なんだこの黒いのは!」
「伝令!! そいつにアルファード様がやられたぁっ!」
城壁の上から他の兵士が叫ぶ。
俺は構わずシャルを助け出そうとそちらに向かうが、兵士の一人がシャルを引っ張って喉元に剣を向ける。
「そこの黒い『鋼鉄の鎧騎士』動くなぁ! 動けばこのエルフを殺す!!」
ちっ!
やっと目的を果たせたと言うのにこんな所でシャルを失うわけにはいかない!!
俺は「鋼鉄の鎧騎士」を止めて手に持つ剣を地面に突き刺す。
それを見たその兵士は笑いを上げる。
「ははっ、はははははっ! いいぞ、おい黒いの! 『鋼鉄の鎧騎士』から降りろ!」
兵士はそう叫ぶ。
ズシン、ズシン
俺のまわりに剣を構えたままの残り三機の「鋼鉄の鎧騎士」がやって来て恐る恐る俺の機体の肩に手をつき腕を取り跪かせる。
俺は大人しくそれに従う。
「おい、黒いの! とっととその『鋼鉄の鎧騎士』から降りろ! さもないと!!」
びりっ!
「きゃぁっ!」
その兵士はシャルの衣服を破る。
白い肌があらわになり薄い胸が見える。
「は、ははははは、どうだ? お前が言う事聞かなければこのエルフのはらわた今ここでぶちまけてやるぞ?」
その兵士はシャルの胸下へと剣を下げる。
『待て! 分かった、今降りる』
「アイン! 駄目っ!!」
シャルがそう叫ぶがこのままシャルを見殺しには出来ない。
それに俺は当面の目的だったアルファードの奴を倒せたこともありシャルさえ助かれば後はどうでもいいと考え始めていた。
ばくん
胸の扉を開け体を拘束する鎧の様なものをすべて外し地面へと降り立つ。
するとすぐに兵士たちが寄って来て俺を捕らえる。
「捕まえたぞ!」
「こいつがアルファード様をやったのか?」
「ああ、間違いない。砦の方からそう伝令が来た」
「畜生、こいつ殺してやる!!」
『待て。そいつにはいくつか聞かなければならない事が有る。殺すな』
兵士たちに腕を後ろで縛られ剣で首を切り落とされそうになるが量産型の「鋼鉄の鎧騎士」に乗っている奴から待ったがかかりとりあえずはすぐには殺されない様だ。
「ははははっ、だがこいつは始末しちまおう! 抱くにしたってこんな貧相なのじゃ起たねえし、アルファード様の隣で何時も威張っていやがって気に入らなかったんだ!」
ちゃきっ!
「えっ!?」
その兵士は剣を振りあげ、シャルに突き刺そうとする。
「操魔剣!!」
俺は「操魔剣」を使い脚力を一瞬で強化してその場から飛び出す。
そして振り下ろされる剣とシャルの間に入る。
どっ!
ずぶっ!
剣は俺の背中に刺さったが何とか間に合った。
アーシャの時もザシャの時も俺の目の前で女たちはその命を散らした。
そんなのはもうたくさんだ!!
「こ、こいついきなり飛び込んできやがった?」
「アイン、ちょとアインっ!!」
俺の背中に剣を突き刺したままその兵士は驚きの声を上げる。
シャルの悲鳴を聞きながらそれでも俺は声をあげて叫ぶ。
「こいっ! 俺の『鋼鉄の鎧騎士』!!」
ぶんっ!
三つある瞳が一瞬光り胸の扉を閉じながら俺の「鋼鉄の鎧騎士」が立ち上がる。
『なんだと!? 誰も乗っていないはずなのに!?』
『うわっ、なんて力だ!?』
俺の「鋼鉄の鎧騎士」を取り押さえていた量産型「鋼鉄の鎧騎士」は誰も乗っていないのに動きだした俺の「鋼鉄の鎧騎士」に驚き動きが一瞬止まる。
感覚が「鋼鉄の鎧騎士」とつながり背中に剣が突き刺さった俺が見える。
俺はそのまま「鋼鉄の鎧騎士」を走らせ俺とシャルを抱え上げそばにいた兵士を蹴り飛ばしながら逃げ出した。
後ろの方で罵声や怒声が聞こえるが今はとにかくこの場を離れなければいけない。
俺は必死になって「鋼鉄の鎧騎士」を走らせるのだった。
* * * * *
「アイン、アインってば! ちょっとしっかりしてよ、アインっ!!」
何処をどう走ったか忘れたがとにかくガレントの砦からだいぶ離れた所で意識が遠くなり崩れるように「鋼鉄の鎧騎士」を止め地面に俺たちを置く。
そして地面に置かれた時点で俺は意識が遠のく。
「駄目アイン! 死んじゃ駄目! しっかりして!! 今治癒の精霊魔法をかけるから!!」
「シャ……ル……、 ケガ……ない……か……?」
「馬鹿っ! 私の事より自分の事心配しなさい!! とにかく止血して!」
涙目で騒ぐ彼女の顔を見て美しいなと思いながら俺の意識は遠のいていくのだった。
* * * * *
其処はとても暖かい所だった。
森の清々しい香りがする。
血なまぐさい戦場ばかり渡って来た俺からするとまるで楽園のような場所だった。
と、向こうに誰かいる。
だいぶ離れた所だったがその人影には見覚えが有った。
「あれは…… アーシャ! ザシャ!!」
俺の大声に二人は微笑んでいた。
あのザシャでさえ笑っている。
なんだよ、こんな所にいたのかよ……
俺もそっちに行きたい。
お前たちに触れたい。
しかし彼女たちは悲しそうな顔をして首を横に振る。
そして声にならない声を発する。
なにを言っているのか分からない。
俺は更に一歩前に踏み出そうとするが体が動かない。
しかし最後には彼女たちはまた穏やかな表情になり振り返り更に遠くへと歩き始める。
「お、おい! 待ってくれ! アーシャ、ザシャぁっ!!」
どんなに叫んでも手を伸ばしてもまるで鉛にでもなったかのように俺の体は動かない。
もがき、前に進もうとしても動けない。
動けないんだ……
* * * * *
「アイン? アインっ! しっかりして! 私が分かる?」
目の前にシャルがいた。
目の前なんてもんじゃなかった。
顔と顔がくっついてしまうほどの距離。
「良かった、気が付いたのねアイン」
「シャル? 俺は一体……」
そこまで言って気が付いた。
裸のシャルが裸の俺に抱き着いていた。
何処かの洞窟なのだろう、近くで焚火がゆらゆらとうごめいていて温かい。
「アインの馬鹿っ! なんて無茶するのよ!!」
「俺は…… お前が死ぬところなんぞ見たくも無いんだ…… もう俺の前で死なれるのはごめんなんだ……」
「だからって、あんなに血を流して! 馬鹿っ! これが終わったら私を連れて行ってくれるんでしょ! こんな所で死ぬんじゃないわよ!!」
ちゅっ!
言いながらシャルは俺の唇に自分の唇を重ねる。
そしてすぐに俺から離れて俺の顔を両の手でしっかりと持ち言う。
「アイン……」
「シャル?」
突然の事に俺は驚いているがシャルの瞳は俺だけを映していた。
ぱちっ
焚火の音が聞こえ、そしてまた唇を重ねる。
そして俺たちはその影を混じらわせるのだった。
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