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第十四章
第74話第十四章14-5オリジナルの鋼鉄の鎧騎士
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14-5オリジナルの鋼鉄の鎧騎士
オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」。
魔王が作ったとされるそれはこの世にたったの十二体しか無いモノ。
現存するどんな「鋼鉄の鎧騎士」よりも強く、そして鉄壁の防御を有する化け物。
そもそもその「鋼鉄の鎧騎士」はガレント王国の宮廷魔術師が発案した「ガーディアン計画」からなる。
それまでの国際紛争に使っていた機械人形であるマシンドールが世界中に蔓延し始めガレント王国の国防を担うには負担が過ぎていた。
それ故更なる国防の要となる力が必要だった。
当時その人物は優秀な魔術師だったらしい。
その魔術師が技術の全てを掻き集め作成したのが「鋼鉄の鎧騎士」だったそうだ。
それは当時のガレント王国の国家予算を枯渇させる程のもので、それゆえに作り上げる事が出来たのはたったの十二体。
しかも並みの者では扱えないと言う程の代物で、それ故ガレント王国では「魔法騎士」の生育に重点が置かれた。
そんな経緯で作られた最初の「鋼鉄の鎧騎士」。
しかしその「鋼鉄の鎧騎士」を更に強固にする事が有った。
それが当時世界最高の魔女、今の女神が人である時代に彼女によりこの十二体の「鋼鉄の鎧騎士」が更に強化されたと言う事だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。女神が元人間だったって言うのか? しかも魔王も元は人間だというのか?」
「ええ、彼女たちは元は普通の女性でした。しかしその内包する魂が違っていたのです。魔王の魂を持つ者はその後に魔王が覚醒し世界を巻き込む大戦へとなったのです。しかも魔王はオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』に仕掛けをしていて何かの折は自分の手下になるようにしていたのです」
俺はそこまで聞いて鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をした。
魔王が元人間?
女神も元人間??
俺は話の先を促す為にファイナス長老を見る。
彼女は俺の様子を見てからまた静かに話し始めた。
「魔王はその後名も無き勇者の少女と相打ちになりこの世は平穏を迎えました。しかし国防を必要とするガレント王国はそのオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を回収し、また国防に使ったのです。全てはそこから狂い始めたのでしょう……」
ファイナス長老は物悲しそうに続ける。
それはその後のガレント王国の繁栄理由にもつながっていった。
当面は使われていたオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」だったがその危険性を指摘され第二次「ガーディアン計画」が発令された。
ガレント王国はその予算確保のために世界最大の穀倉地帯を使って国庫を豊かにしようとしたのだ。
他の地域よりも大量に安く、そして十分な食料を提供するというのはどの国に対しても歓迎される事だった。
だが、それがガレント王国を増長させる原因となった。
しかも「鋼鉄の鎧騎士」の製法がいよいよ他国に漏れ始める。
そうなれば一方的だった戦争におけるガレント王国の有利性も変わって来る。
国境付近では小競り合いが始まり、その戦争の主役も徐々に「鋼鉄の鎧騎士」同士の戦いに変わっていった。
しかしその頃には世界の穀倉を持つガレント王国は名実ともに世界の盟主になり上がっていた。
そんな中、それを危険視した女神が直々に力の源であるオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を封印しまくった。
唯一女神の封印を逃れたのがガレント王国の宝物庫に在るアルファードの野郎が駆るあの機体。
十二番目の機体らしい。
そして他のオリジナルたちはその守備する国境付近ですべて女神により封印された。
だが「鋼鉄の鎧騎士」の有益性は止まらなかった。
ガレント王国は勿論他国もその開発を推し進め「鋼鉄の鎧騎士」の制作は止まらなかった。
それはますます世の中を混乱させる原因になるとも知らずに。
「結局あのオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を封印するだけでは収まらず、ガレント王国は更に暴走を始める羽目になったのでしょう」
「女神は何をやっているんだ? 直接オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を封印したのだろう? なら、ガレント王国の暴走だって止められるんじゃないのか?」
俺は真っ先にその事を聞くとファイナス長老は目をつぶり首を振る。
「人の世の事に過度に女神様が関わるのは良くない事。オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』は女神様が人間だった頃のしこり。故にそれ以外の事は人同士で解決させようというのが女神様のお考えなのでしょう。彼女は平穏を求めていましたからね……」
「平穏だと!? これだけ世の中がめちゃくちゃになっているというのにか!」
「だから余計に女神様が人の世に手を出せないのよ。そうしないと女神教がまた暴走を繰り返し、私たちだってダークエルフたちの様になってしまうわ!」
今まで黙って俺たちの話を聞いていたシャルはそう叫ぶ。
「姉さんだってそれが分かっているから私にガレントに協力するように言ってきた。人間たちにこのエルフの村を、『迷いの森』を襲わせさせないために!! なのに、なのにアルファードは私たちを裏切った!!」
「シャル、落ち着きなさい。それでも森の被害が最小限で済んだのはアインのおかげでもあるのですから」
興奮するシャルにファイナス長老は静かにそう言う。
他にいたエルフたちもシャル同様に思う所がるのだろう。
ファイナス長老にそう言われなければ他の連中も声をあげていただろう。
「……ダークエルフがどうしたってんだ?」
「女神様のお言葉を歪曲した女神教団が聖戦とか言ってダークエルフの隠れ村を襲ったのよ! 不可侵の条約を破ってね! しかもいきなり『鋼鉄の鎧騎士』まで送り込んでね!!」
俺の質問にシャルは早口で応える。
そう言う事か。
ザシャが言っていた女神に裏切られたという事は。
「アガシタ様は古き女神様。今の女神様のやり方にご不満を持ったのでしょう。だからあなたにオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を託したのです」
ファイナス長老はそう言いながら俺を見る。
そして真剣な趣で俺に話す。
「アイン、あなたが英雄である事はきっと意味が有るのでしょう。私たちエルフはもうガレント王国に協力は出来ません。森を焼かれてしまったのですから」
「だからと言って俺に何が出来る訳じゃない。俺はただ生き延びる為にあがいて来ただけだ。そしてそんな俺に絶望を与えたアルファードの野郎は許せない。ただそれだけだ」
俺がそう言うとファイナス長老はふっと息を吐いてその表情を緩める。
「だとしても、あなたのお陰で森の被害は最小限で済みました。あなたの乗る『鋼鉄の鎧騎士』が防壁を張ったおかげで森は助かったのです。そして私たちも」
そう言ってファイナス長老は俺に頭を下げる。
「長老!」
「ファイナス長老!!」
途端にシャルを含め周りのエルフたちが声を上げる。
しかしファイナス長老は静かに言う。
「どんな形であれ、森を救ってくれた礼はするべきです。ありがとう、アイン」
「やめてくれ、たまたまだ……」
俺はその態度に正直戸惑った。
エルフの長老が俺に頭を下げて礼を言うとは。
しかしファイナス長老は気にした様子も無く続ける。
「アイン、まずはその傷を癒しなさい。後の話はそれからです。他のみんなもいいですね?」
「しかし長老、こいつは『魔人』になりかけたんですよ?」
「シャルの話だとこいつが乗る『鋼鉄の鎧騎士』だって普通じゃないとか……」
周りのエルフたちは不満が有るようだ。
俺としてもいつまでもこんな所にいる訳にもいかない。
「私がこいつを見張るわ……」
しかしいきなりシャルがそう言う。
すると周りのエルフたちはそれ以上何も言わなくなった。
「ではシャル、後の事は任せます。アイン、まずは傷を癒す事です」
そう言ってファイナス長老は立ち上がり、俺の拘束を解くように言う。
勿論周りは反対するが、ファイナス長老は俺に向かって一言聞く。
「問題無いでしょう?」
「……ああ」
俺がそう答えるとファイナス長老はそのままここを出て行ってしまった。
周りのエルフたちはそれでも俺に対して不満を持った目で見ていたがファイナス長老を追って出て行ってしまった。
一人、俺の拘束を外すシャルを残して。
オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」。
魔王が作ったとされるそれはこの世にたったの十二体しか無いモノ。
現存するどんな「鋼鉄の鎧騎士」よりも強く、そして鉄壁の防御を有する化け物。
そもそもその「鋼鉄の鎧騎士」はガレント王国の宮廷魔術師が発案した「ガーディアン計画」からなる。
それまでの国際紛争に使っていた機械人形であるマシンドールが世界中に蔓延し始めガレント王国の国防を担うには負担が過ぎていた。
それ故更なる国防の要となる力が必要だった。
当時その人物は優秀な魔術師だったらしい。
その魔術師が技術の全てを掻き集め作成したのが「鋼鉄の鎧騎士」だったそうだ。
それは当時のガレント王国の国家予算を枯渇させる程のもので、それゆえに作り上げる事が出来たのはたったの十二体。
しかも並みの者では扱えないと言う程の代物で、それ故ガレント王国では「魔法騎士」の生育に重点が置かれた。
そんな経緯で作られた最初の「鋼鉄の鎧騎士」。
しかしその「鋼鉄の鎧騎士」を更に強固にする事が有った。
それが当時世界最高の魔女、今の女神が人である時代に彼女によりこの十二体の「鋼鉄の鎧騎士」が更に強化されたと言う事だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。女神が元人間だったって言うのか? しかも魔王も元は人間だというのか?」
「ええ、彼女たちは元は普通の女性でした。しかしその内包する魂が違っていたのです。魔王の魂を持つ者はその後に魔王が覚醒し世界を巻き込む大戦へとなったのです。しかも魔王はオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』に仕掛けをしていて何かの折は自分の手下になるようにしていたのです」
俺はそこまで聞いて鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をした。
魔王が元人間?
女神も元人間??
俺は話の先を促す為にファイナス長老を見る。
彼女は俺の様子を見てからまた静かに話し始めた。
「魔王はその後名も無き勇者の少女と相打ちになりこの世は平穏を迎えました。しかし国防を必要とするガレント王国はそのオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を回収し、また国防に使ったのです。全てはそこから狂い始めたのでしょう……」
ファイナス長老は物悲しそうに続ける。
それはその後のガレント王国の繁栄理由にもつながっていった。
当面は使われていたオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」だったがその危険性を指摘され第二次「ガーディアン計画」が発令された。
ガレント王国はその予算確保のために世界最大の穀倉地帯を使って国庫を豊かにしようとしたのだ。
他の地域よりも大量に安く、そして十分な食料を提供するというのはどの国に対しても歓迎される事だった。
だが、それがガレント王国を増長させる原因となった。
しかも「鋼鉄の鎧騎士」の製法がいよいよ他国に漏れ始める。
そうなれば一方的だった戦争におけるガレント王国の有利性も変わって来る。
国境付近では小競り合いが始まり、その戦争の主役も徐々に「鋼鉄の鎧騎士」同士の戦いに変わっていった。
しかしその頃には世界の穀倉を持つガレント王国は名実ともに世界の盟主になり上がっていた。
そんな中、それを危険視した女神が直々に力の源であるオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を封印しまくった。
唯一女神の封印を逃れたのがガレント王国の宝物庫に在るアルファードの野郎が駆るあの機体。
十二番目の機体らしい。
そして他のオリジナルたちはその守備する国境付近ですべて女神により封印された。
だが「鋼鉄の鎧騎士」の有益性は止まらなかった。
ガレント王国は勿論他国もその開発を推し進め「鋼鉄の鎧騎士」の制作は止まらなかった。
それはますます世の中を混乱させる原因になるとも知らずに。
「結局あのオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を封印するだけでは収まらず、ガレント王国は更に暴走を始める羽目になったのでしょう」
「女神は何をやっているんだ? 直接オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を封印したのだろう? なら、ガレント王国の暴走だって止められるんじゃないのか?」
俺は真っ先にその事を聞くとファイナス長老は目をつぶり首を振る。
「人の世の事に過度に女神様が関わるのは良くない事。オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』は女神様が人間だった頃のしこり。故にそれ以外の事は人同士で解決させようというのが女神様のお考えなのでしょう。彼女は平穏を求めていましたからね……」
「平穏だと!? これだけ世の中がめちゃくちゃになっているというのにか!」
「だから余計に女神様が人の世に手を出せないのよ。そうしないと女神教がまた暴走を繰り返し、私たちだってダークエルフたちの様になってしまうわ!」
今まで黙って俺たちの話を聞いていたシャルはそう叫ぶ。
「姉さんだってそれが分かっているから私にガレントに協力するように言ってきた。人間たちにこのエルフの村を、『迷いの森』を襲わせさせないために!! なのに、なのにアルファードは私たちを裏切った!!」
「シャル、落ち着きなさい。それでも森の被害が最小限で済んだのはアインのおかげでもあるのですから」
興奮するシャルにファイナス長老は静かにそう言う。
他にいたエルフたちもシャル同様に思う所がるのだろう。
ファイナス長老にそう言われなければ他の連中も声をあげていただろう。
「……ダークエルフがどうしたってんだ?」
「女神様のお言葉を歪曲した女神教団が聖戦とか言ってダークエルフの隠れ村を襲ったのよ! 不可侵の条約を破ってね! しかもいきなり『鋼鉄の鎧騎士』まで送り込んでね!!」
俺の質問にシャルは早口で応える。
そう言う事か。
ザシャが言っていた女神に裏切られたという事は。
「アガシタ様は古き女神様。今の女神様のやり方にご不満を持ったのでしょう。だからあなたにオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を託したのです」
ファイナス長老はそう言いながら俺を見る。
そして真剣な趣で俺に話す。
「アイン、あなたが英雄である事はきっと意味が有るのでしょう。私たちエルフはもうガレント王国に協力は出来ません。森を焼かれてしまったのですから」
「だからと言って俺に何が出来る訳じゃない。俺はただ生き延びる為にあがいて来ただけだ。そしてそんな俺に絶望を与えたアルファードの野郎は許せない。ただそれだけだ」
俺がそう言うとファイナス長老はふっと息を吐いてその表情を緩める。
「だとしても、あなたのお陰で森の被害は最小限で済みました。あなたの乗る『鋼鉄の鎧騎士』が防壁を張ったおかげで森は助かったのです。そして私たちも」
そう言ってファイナス長老は俺に頭を下げる。
「長老!」
「ファイナス長老!!」
途端にシャルを含め周りのエルフたちが声を上げる。
しかしファイナス長老は静かに言う。
「どんな形であれ、森を救ってくれた礼はするべきです。ありがとう、アイン」
「やめてくれ、たまたまだ……」
俺はその態度に正直戸惑った。
エルフの長老が俺に頭を下げて礼を言うとは。
しかしファイナス長老は気にした様子も無く続ける。
「アイン、まずはその傷を癒しなさい。後の話はそれからです。他のみんなもいいですね?」
「しかし長老、こいつは『魔人』になりかけたんですよ?」
「シャルの話だとこいつが乗る『鋼鉄の鎧騎士』だって普通じゃないとか……」
周りのエルフたちは不満が有るようだ。
俺としてもいつまでもこんな所にいる訳にもいかない。
「私がこいつを見張るわ……」
しかしいきなりシャルがそう言う。
すると周りのエルフたちはそれ以上何も言わなくなった。
「ではシャル、後の事は任せます。アイン、まずは傷を癒す事です」
そう言ってファイナス長老は立ち上がり、俺の拘束を解くように言う。
勿論周りは反対するが、ファイナス長老は俺に向かって一言聞く。
「問題無いでしょう?」
「……ああ」
俺がそう答えるとファイナス長老はそのままここを出て行ってしまった。
周りのエルフたちはそれでも俺に対して不満を持った目で見ていたがファイナス長老を追って出て行ってしまった。
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