73 / 89
第十四章
第73話第十四章14-4エルフの癒し
しおりを挟む
14-4:エルフの癒し
シャルと名乗ったこのエルフの少女は俺を睨んだまま瞬きもせずその答えを待つ。
俺は軽くため息を吐いてから言う。
「英雄かと聞かれれば恥ずかしながらそうと答えるしかないな。イザンカではそう言われた」
「まさか、あなたが英雄だというの? ガレントに現れるだろうって噂は違ったの?」
彼女はそう言いながら額に手を当て頭を振る。
「姉さん、問題よこれって…… しかし、英雄がガレント以外に現れたって事はやっぱりアルファードのやり方が間違っていたって事よね……」
そうぶつぶつと言っている。
一体どう言う事か訳が分からないが、まずはあの後どうなったかが聞きたい。
「そちらの事情は分からないが、俺はこの後どうなる?」
「どうって…… とりあえず最低限の手当てはしたわ。ただ、いろいろと聞かせてもらうわよ。私もあんなことされたんじゃもうアルファードに協力する気にもなれないしね」
そう言って立ち上がり檻の方へ歩いて行ってしまう。
そして檻の扉を開けながら俺に振り向き言う。
「あなたの火傷、相当なモノよ。一応癒しの魔法もかけてあげたけど死にたくなければ大人しくしている事ね」
それだけ言って出て行ってしまった。
俺はまた上を向いて大きく息を吐いたのだった。
* * * * *
その後数人のエルフが立ち合いで俺に話を聞きに来た。
特に長老の一人とか言われているファイナスと名乗った女性のエルフは事細やかに俺に話を聞いて来た。
隠していても仕方がないので俺は聞かれた事にだけは答えた。
「つまり、今現在に外の世界ではガレント王国が女神様の教えをたてに世界に平定をもたらすと言い争いの根源である『鋼鉄の鎧騎士』を統制するというのですね?」
「ああ、イザンカでの見解はそうだった。それについてはそっちにいる彼女が詳しいんじゃないか?」
俺は拘束されたままなので顔だけ一緒について来ているシャルに向ける。
すると彼女はバツの悪そうな顔をする。
ファイナス長老は彼女に顔を向けるも頷いてからまた俺に向き直る。
「あの黒い『鋼鉄の鎧騎士』ですが、あなたの話ですとアガシタ様から譲り受けたと言うのですね?」
「ああ、悪魔のアガシタにな」
俺がそう言うとファイナス長老は大きく息を吐いた。
そして少しだけ目をつむり俺に話始める。
「あなたの言う事を信じましょう。シャルの報告の通りあなたは英雄の器を持っていました。そしてアガシタ様からあの『鋼鉄の鎧騎士』を受け取った。貴方には成すべき運命が有るようです」
「俺に成すべき運命?」
その言葉に俺は思わず目を見開く。
俺はただ生き延びる為にあがいて来た。
そんなご大層な運命を背負った覚えはない。
それに俺は取り返しのつかない事をしてしまった。
オクツマート、ルデン、ベリアル……
ずっと俺の馬鹿に付き合ってついて来てくれたあいつらを殺してしまった。
オクツマートに関しては直接おれ自身が手を下した。
そんな俺に成すべき運命だと?
「ファイナス長老、確かにこの者は英雄の器を持っているのかもしれませんが、あの黒い『鋼鉄の鎧騎士』がアガシタ様のお与えになった物とは到底思えません」
俺がそう思っているとシャルはそう言って俺を睨む。
そう言えば俺の乗っていたあの「鋼鉄の鎧騎士」はどうなったのだ?
「確かにあれは異様です。呪いの痕跡もありました。しかも外装がオリジナルのモノではないとの事です。アイン、これは一体どう言う事か教えてもらえますね?」
「詳しいのだな……」
このエルフ、ザシャと同様でいろいろ知っているのか。
いろいろと教えてもらいたいものだ。
そもそも「魔王」などと言うモノがなんで「鋼鉄の鎧騎士」を作ったのか。
そして何故あんな場所に封印されていたのか。
アガシタは天秤を揺らせ、今の秩序を崩せと言うが何が目的なのか。
そしてガレントのアルファードの野郎はどうなったのかを!
俺はまずファイナス長老の質問に答えた。
あの「鋼鉄の鎧騎士」の外装が秘密結社ジュメルとか言う連中の港町から奪ったものだという事を。
そして宿敵のアルファードに追い付き奴との一騎打ちを繰り広げた事を。
ファイナス長老は秘密結社ジュメルと言う名を聞き眉間にしわを寄せながら驚いていた。
そして俺もその事実を知らされる。
どうやらあの外装は呪いがかかっており、膨大な魔力を持つ者が操る「鋼鉄の鎧騎士」に取り憑き「魔人」へと化してゆくらしいという事を。
「俺が『魔人』に成りかけていただって?」
「ええ、あなたはその膨大な魔力を糧に魔人の依り代と成る所だったのです。しかしアルファードの魔法で「迷いの森」に吹き飛ばされました。結界をも打ち破るそれはあなたとあの『鋼鉄の鎧騎士』を精霊界にまで吹き飛ばしその暴走を止めた。今はまだ精霊界にあの『鋼鉄の鎧騎士』はあります」
ファイナス長老はそう言ってシャルを見る。
シャルは面白く無さそうに俺に言う。
「あなたも覚えているでしょう? 吹き飛ばされた後あれから出てきた所を私に捕まった。そしてここまで運んで来て手当てをしてやったのよ」
「シャルの話ではあなたが英雄と同じく瞳の色を変えたという話でしたからね。それにジュメルが関わっているとなれば合点も行きます。あそこまで強力な呪いをかけているとは。今は他の長老たちが暴走をしない様にその呪いに封印をかけています」
そこまで聞いて俺はファイナス長老に聞く。
「そもそも『魔王』が作ったって言うあの『鋼鉄の鎧騎士』ってのは何なんだ? ザシャは元ガレントのモノだとか言うし、あんな人のいない遺跡に封印されていたし。そしてアガシタは俺に何をさえる気なんだ?」
俺のその質問にファイナス長老は頷き、答え始めたのだった。
シャルと名乗ったこのエルフの少女は俺を睨んだまま瞬きもせずその答えを待つ。
俺は軽くため息を吐いてから言う。
「英雄かと聞かれれば恥ずかしながらそうと答えるしかないな。イザンカではそう言われた」
「まさか、あなたが英雄だというの? ガレントに現れるだろうって噂は違ったの?」
彼女はそう言いながら額に手を当て頭を振る。
「姉さん、問題よこれって…… しかし、英雄がガレント以外に現れたって事はやっぱりアルファードのやり方が間違っていたって事よね……」
そうぶつぶつと言っている。
一体どう言う事か訳が分からないが、まずはあの後どうなったかが聞きたい。
「そちらの事情は分からないが、俺はこの後どうなる?」
「どうって…… とりあえず最低限の手当てはしたわ。ただ、いろいろと聞かせてもらうわよ。私もあんなことされたんじゃもうアルファードに協力する気にもなれないしね」
そう言って立ち上がり檻の方へ歩いて行ってしまう。
そして檻の扉を開けながら俺に振り向き言う。
「あなたの火傷、相当なモノよ。一応癒しの魔法もかけてあげたけど死にたくなければ大人しくしている事ね」
それだけ言って出て行ってしまった。
俺はまた上を向いて大きく息を吐いたのだった。
* * * * *
その後数人のエルフが立ち合いで俺に話を聞きに来た。
特に長老の一人とか言われているファイナスと名乗った女性のエルフは事細やかに俺に話を聞いて来た。
隠していても仕方がないので俺は聞かれた事にだけは答えた。
「つまり、今現在に外の世界ではガレント王国が女神様の教えをたてに世界に平定をもたらすと言い争いの根源である『鋼鉄の鎧騎士』を統制するというのですね?」
「ああ、イザンカでの見解はそうだった。それについてはそっちにいる彼女が詳しいんじゃないか?」
俺は拘束されたままなので顔だけ一緒について来ているシャルに向ける。
すると彼女はバツの悪そうな顔をする。
ファイナス長老は彼女に顔を向けるも頷いてからまた俺に向き直る。
「あの黒い『鋼鉄の鎧騎士』ですが、あなたの話ですとアガシタ様から譲り受けたと言うのですね?」
「ああ、悪魔のアガシタにな」
俺がそう言うとファイナス長老は大きく息を吐いた。
そして少しだけ目をつむり俺に話始める。
「あなたの言う事を信じましょう。シャルの報告の通りあなたは英雄の器を持っていました。そしてアガシタ様からあの『鋼鉄の鎧騎士』を受け取った。貴方には成すべき運命が有るようです」
「俺に成すべき運命?」
その言葉に俺は思わず目を見開く。
俺はただ生き延びる為にあがいて来た。
そんなご大層な運命を背負った覚えはない。
それに俺は取り返しのつかない事をしてしまった。
オクツマート、ルデン、ベリアル……
ずっと俺の馬鹿に付き合ってついて来てくれたあいつらを殺してしまった。
オクツマートに関しては直接おれ自身が手を下した。
そんな俺に成すべき運命だと?
「ファイナス長老、確かにこの者は英雄の器を持っているのかもしれませんが、あの黒い『鋼鉄の鎧騎士』がアガシタ様のお与えになった物とは到底思えません」
俺がそう思っているとシャルはそう言って俺を睨む。
そう言えば俺の乗っていたあの「鋼鉄の鎧騎士」はどうなったのだ?
「確かにあれは異様です。呪いの痕跡もありました。しかも外装がオリジナルのモノではないとの事です。アイン、これは一体どう言う事か教えてもらえますね?」
「詳しいのだな……」
このエルフ、ザシャと同様でいろいろ知っているのか。
いろいろと教えてもらいたいものだ。
そもそも「魔王」などと言うモノがなんで「鋼鉄の鎧騎士」を作ったのか。
そして何故あんな場所に封印されていたのか。
アガシタは天秤を揺らせ、今の秩序を崩せと言うが何が目的なのか。
そしてガレントのアルファードの野郎はどうなったのかを!
俺はまずファイナス長老の質問に答えた。
あの「鋼鉄の鎧騎士」の外装が秘密結社ジュメルとか言う連中の港町から奪ったものだという事を。
そして宿敵のアルファードに追い付き奴との一騎打ちを繰り広げた事を。
ファイナス長老は秘密結社ジュメルと言う名を聞き眉間にしわを寄せながら驚いていた。
そして俺もその事実を知らされる。
どうやらあの外装は呪いがかかっており、膨大な魔力を持つ者が操る「鋼鉄の鎧騎士」に取り憑き「魔人」へと化してゆくらしいという事を。
「俺が『魔人』に成りかけていただって?」
「ええ、あなたはその膨大な魔力を糧に魔人の依り代と成る所だったのです。しかしアルファードの魔法で「迷いの森」に吹き飛ばされました。結界をも打ち破るそれはあなたとあの『鋼鉄の鎧騎士』を精霊界にまで吹き飛ばしその暴走を止めた。今はまだ精霊界にあの『鋼鉄の鎧騎士』はあります」
ファイナス長老はそう言ってシャルを見る。
シャルは面白く無さそうに俺に言う。
「あなたも覚えているでしょう? 吹き飛ばされた後あれから出てきた所を私に捕まった。そしてここまで運んで来て手当てをしてやったのよ」
「シャルの話ではあなたが英雄と同じく瞳の色を変えたという話でしたからね。それにジュメルが関わっているとなれば合点も行きます。あそこまで強力な呪いをかけているとは。今は他の長老たちが暴走をしない様にその呪いに封印をかけています」
そこまで聞いて俺はファイナス長老に聞く。
「そもそも『魔王』が作ったって言うあの『鋼鉄の鎧騎士』ってのは何なんだ? ザシャは元ガレントのモノだとか言うし、あんな人のいない遺跡に封印されていたし。そしてアガシタは俺に何をさえる気なんだ?」
俺のその質問にファイナス長老は頷き、答え始めたのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる