テグ戦記

さいとう みさき

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第十三章

第67話第十三章13-3黒い鋼鉄の鎧騎士

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13-3黒い鋼鉄の鎧騎士

 ルシフルの港町を強襲して占拠した俺たちはここの連中を一所に縛りあげ先ほどの代表者らしき人物と話をする。

 
 「我が名は神父フリシンクス。秘密結社ジュメルの使徒だ」

 「あんたがそのジュメルとかの責任者か?」

 「そう思ってもらってかまわない。して貴様ら何者だ?」

 縛り上げてはいるもののその威厳を崩さずフリシンクスと名乗った神父とやらは俺たちに聞いてくる。
 俺は苦笑して答える。


 「しがない傭兵さ。そしてとある奴に復讐を誓った馬鹿だよ」


 「復讐だと? 我がジュメルにか?」

 「いや、アルファードってやつにさ」
 
 俺がそう言うとフリシンクスとやらは大いに驚く。
 そして目を細め聞く。


 「それはガレントのアルファードか?」


 「よく知っているな?」

 俺がそう答えるとフリシンクスは笑い出した。


 「よもやガレントの王子であるアルファードに復讐だと? 貴様正気か? ガレントに手を出すと言う事は女神と対峙すると言う事だぞ? 下手をすれば全世界を敵に回すと言う事だぞ?」


 「ああ、だから俺は馬鹿と言ったんだよ」

 俺のその言葉にオクツマートやベリアル、ルデンも苦笑を漏らす。
 正直こいつらも良く俺の馬鹿に付き合ってくれているもんだ。


 「本気か?」

 「馬鹿なんでね」


 するとフリシンクスは更に鋭い目で俺を見る。
 まるで俺の魂の奥底を見るかのように。


 「‥‥‥まあいいだろう。それで我々を襲ったのは何故だ?」

 「なに、お前さんらは『鋼鉄の鎧騎士』を作っているらしいじゃないか? 見てのとおり俺の『鋼鉄の鎧騎士』は中古の外装でな」

 そこまで言うとフリシンクスは舌打ちをする。
 そして俺の視線の先には残った「鋼鉄の鎧騎士」が胸の扉を開けたまま各座している。

 「お前さんらの『鋼鉄の鎧騎士』の外装が欲しい」
 
 俺がそこまで言うとフリシンクスは俺を呪い殺すかのような形相で睨んでくる。
 まあ、「鋼鉄の鎧騎士」ってのがどれだけ高価でそして技術の結晶化ってのは知っているつもりだ。
 ましてやそれを独自で開発しているのだ。
 この組織がどれだけのモノかは知らないが国家予算を注ぎ込むほどの代物を横取りされるとなればこうもなるだろう。


 「一つ忠告しておく。我々のあの黒い『鋼鉄の鎧騎士』は不完全だ。動かんぞ‥‥‥」


 「なに、あの『鋼鉄の鎧騎士』の外装をいただくだけさ」

 「外装だけを? 素体はどうする?」

 鎧の部分である外装は言い方を変えれば「鋼鉄の鎧騎士」の中でもそれほど重要性は高くない。
 事実市場にも外装は中古品として出回っている。
 核心的なのはあくまで本体である「素体」部分なのだ。


 だが今の俺に必要なのはその外装だ。

 今後アルファードの奴とやり合うなら今の外装では流石に心許無い。
 いくら俺が英雄の力を持っていても「鋼鉄の鎧騎士」がやられてしまっては勝負にすらならない。


 「貴様、知っているのか!?」

 途端にこのフリシンクスと名乗った神父は声を荒立てる。
 
 「どこまで知っている!? あれが何だか分かっているのか!!!?」

 興奮するこいつを見ながらもう一度あの黒い「鋼鉄の鎧騎士」を見る。
 何が何だか分からんがどうやら外装に何か秘密があるようだ。
 俺はこいつを無視して戻ってきたオクツマートに声を掛ける


 「オクツマート、どうだ?」

 「ああ、固定位置やサイズは同じようだな。しかもこいつ、ガレントの奴に酷似しているぞ?」


 黒い「鋼鉄の鎧騎士」の様子を見に行ったオクツマートは最低限の事を確認して戻ってきた。
 そしてその外装が使えるかどうか俺に伝える。

 「使えるなら換装を始めよう。これで少しはマシになるだろう」



 「やめんかっ! この盗人どもめっ!!」



 興奮したフリシンクスはその場に立ち上がる。
 そしてこめかみに血管を浮かせて怒鳴り散らす。


 「貴様らっ! それに触るなぁッ!!」


 そう言いながら縛り上げていた縄を引きちぎり体を大きくして化け物に姿に変わって行く。


 「おい、アイン!!」

 「分かっているさ!」

 俺はすぐに同調をする。 
 瞳が金色に変わり全ての魔力やマナが見える。
 当然このフリシンクスと言う奴の体の中にも魔晶石核と言う特別なものが仕込まれているのが見える。


 『させぬぞぉっ!!』


 爪を伸ばし俺に飛び掛かるフリシンクス。
 だが生身でも「鋼鉄の鎧騎士」から受けた力が俺には使えた。

 「操魔剣!」

 一瞬だけ身体の強化魔法を使い脚力を上げる。
 いくらフリシンクスが魔怪人へと変貌しても今の俺には追従できない。
 そしてその力は魂の奥底からやって来る。
 魔力を剣に込め奴の爪をかいくぐり一閃を放つ。


 ずばっ!


 『ぐっ! き、貴様ぁ‥‥‥』

 「悪いがここで殺られるわけにはいかんのでね」


 びっ!

 
 剣を振り血のりを振り切る。
 袈裟切りに体を切り裂かれたフリシンクスはその場で崩れシュワシュワと泡になりながら消えて行った。


 「まったく、ジュメルって連中は何なんだ? 化け物にはなるし、死んじまうと泡になって消えていくし」

 「さあな、だが気を付けた方が良いな」

 俺は残った連通が同じく立ち上がり体を大きく膨らませ変貌し始めるの見る。


 「お、おいアイン! 流石にこんなにいたらまずいぞ!!」

 「なに、今の俺ならできるさ」

 そう言って俺は手を差し出しその力ある言葉を唱える。


 「【爆裂核魔法】!」


 きゅぅううぅぅ‥‥‥

 
 俺がその力ある言葉を唱えると手のひらに赤い光の弾が収束していき小さくなった瞬間相手に向かってその威力を放つ。


 カッ!

 ドガァがぁがぁがぁがぁぁあああぁぁぁぁあぁっ!!


 灼熱の炎と爆炎をまき散らし放たれたそれは向かってくる魔怪人たちを一瞬で飲み込み消し炭も残さず建物の壁ごと、いやその先に有った建物まで含んで吹き飛ばす。

 「うわっ!」

 「なんだっ!?」

 「アインお前っ!!」

  
 ルデンやベリアル、オクツマートはその熱風から顔を腕で防いでいたが全てを焼き払った後に俺のそばまでやって来た。


 「アイン何時の間にそんな魔法が使えるようになったんだ!?」

 「すげぇ‥‥‥」
 
 オクツマートはしきりに俺とその焼け跡を見比べながら聞いてくる。
 ルデンも焼き払われたその跡を見ている。


 「オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』乗っていたせいだろうな。アルファードの奴に食らった魔法が使えるとは‥‥‥」

 あの時俺は大やけどを負ってザシャに助けられた。
 

 「流石に残った魔術師たちは大人しくなった。だがあんな大技出すなら先に言ってくれんか? 危うく仲間が焼かれる所だった」

 ロバートはそう言いながらも俺に拳を突き出す。
 俺は何も言わずその拳に自分の拳をぶつけて答える。


 「さあ、黒い『鋼鉄の鎧騎士』の外装をいただくぞ!!」




 俺たちは黒磯の機体を見るのだった。

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