テグ戦記

さいとう みさき

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第八章

第43話第八章8-4神の名のもとに

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8-4神の名のもとに


 『喰らえ! 【爆炎拳】!!』


 俺の「鋼鉄の鎧騎士」は奴のオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」の空いた胴体にその手の平をつけゼロ距離インパクトでその技を叩き込む。

 紅蓮の炎が噴き出し奴の胴体を穿つ!
 それと同時にその衝撃波が奴を捕らえた!


 はずだった。


 『ふん、【爆炎拳】か? よくもその技を使えるようになったものだ。しかし同じオリジナルにその技は効かん!!』

 『なにっ!?』

 完全に俺の【爆炎拳】が決まったはずなのに奴の「鋼鉄の鎧騎士」は平然としていた。  
 そして振り上げられた剣がそのまま俺の「鋼鉄の鎧騎士」の方に振り下ろされた。


 ガギィィイイィンっ!!


 『やはりか、貴様のそれも間違いなくオリジナルの【鋼鉄の鎧騎士】かっ!!』


 どがっ!


 奴はそう言いながら俺の「鋼鉄の鎧騎士」に蹴りを入れ一旦距離を取る。
 蹴り飛ばされた俺はとにかく体勢を立て直す為に立ち上がる。

 そしてちらっとやられた肩口を見るがなんと傷一つ付いていない。


 『相手がオリジナルとなれば出し惜しみは出来んな。しかし同じオリジナル、こちらの攻撃もまず効かないが中身の人間はどうだ?』

 そう言って剣を大地に突き刺し両の手をこちらに差し向ける。

 『しばらく動けなくなるが仕方ない。喰らうがいい、神の名のもとにこのオリジナル最大の魔法攻撃を!』


 ぶぅぅぅ…‥‥ん

 
 魔法が起動する為の魔法陣が空中に現れ輝きを増す。
 そして奴の「鋼鉄の鎧騎士」の手の平に赤い光が集まり始める。 

 
 『何を仕掛けるか分からんが、だったら動かなくなるまでぶっ叩いてやる!!』


 俺はそう叫び何かを仕掛けようとしているやつの「鋼鉄の鎧騎士」に「操魔剣」を使って一気に飛び込む。 
 魔法か何かを使うつもりだろうがこの距離なら!


 『甘いわ! 【爆裂核魔法】!!』


 カッ!

 どごごごごごごごっ!!

 
 その赤い光は集束したかと思うと飛び込む俺の目の前で一気に破裂して強烈な爆風と灼熱の炎をまき散らす。
 そのあまりの怒涛の爆炎に思わず立ち止まり左手のラウンドシールドをかかげるがその爆炎はこの機体全部を包んでいる。
 しかしこのオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」には対魔処置が施されているようで機体に何ら影響を及ぼさない。

 だが流石にすごい圧力は有るので振るう剣をやめ、今度は両手で顔の前で交差させ正面の爆風と業火に耐えるようにする。

 機体はこれだけすさまじい魔法攻撃の中でも耐えているようだ。
 そう、機体だけは‥‥‥


 『くっ! 凄い魔法だがこっちだってオリジナル。そうそう‥‥‥ ぐわっ!』


 そう、機体はこの業火に耐えられるようだが中の俺に異変が訪れた。


 じゅうっ! 


 『ぐわぁぁぁああぁぁぁっ! あ、熱いっ!!』


 たまらず機体をその業火の本流から逃げ出すように転ばせ逃げ出すが中の俺は体のあちこちが、いや、この機体に触れてる皮膚がことごとく焼けただれる。
 そう、あまりもの熱量に機体自体が熱を持ち中にいる俺にまで影響を及ぼしたのだった。


 「み、水っ!!」


 俺はこの「鋼鉄の鎧騎士」の中で急ぎ水生成魔法を唱え何処とかまわずぶっかける。
 

 じゅぅぅううううぅぅぅっ!!


 途端に水生成魔法で出来た水球が触れた場所で沸騰して水蒸気になる。
 それはまるで蒸し風呂の様になり俺はたまらず胸の装甲の扉を開く。

 体を固定する鎧の様なモノをはぎ取り口早にもう一度水生成魔法を唱え出来上がった水球に飛び込む。


 『ふん、しぶとい奴め。だがこちらも魔力切れだ。次に会ったら確実に殺してやる!』


 何とか声のする方に目を向けるとあいつの「鋼鉄の鎧騎士」がガレントの量産型「鋼鉄の鎧騎士」に抱えられガレント側に運ばれ始めている。


 こちらもかなり被害が出ているようで傭兵隊のイグニバル、ガイジの機体もベルギラートの機体を引きずりながらイザンカ陣側に引き始めていた。


 『アイン! 生きているのか!?』


 イグニバルが俺の近くまで来て「鋼鉄の鎧騎士」から脱げだして水浸しのまま地面に倒れている俺に叫ぶ。
 かろうじて片手をあげ生きている事を知らせるとすぐに俺の体を「鋼鉄の鎧騎士」でそっと持ち上げ、イターシャに俺の「鋼鉄の鎧騎士」を回収するように言う。


 俺は薄れゆく意識の中でイターシャの回収する俺の「鋼鉄の鎧騎士」が汚れを燃やし尽くされ元の銀色に輝く外装に戻ったのを見て気を失うのだった。
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