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第十四章:脈動

14-22盗難

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「リル、ルラ、それにヤリス大変よ!!」


 たこ焼きを持ってソルミナ教授の研究室に来たらソルミナ教授が大慌てしていた。
 一体どうしたのだろうと部屋に入ってみるとなんと研究室が荒らされていた。


「ソルミナ教授、これは一体!?」

「一体全体何があったって言うのよ?」

「うわぁ~部屋がめちゃくちゃだ~」


 慌てふためくソルミナ教授に何が起こったか聞いてみる。
 するとソルミナ教授はアワアワ言いながら言う。

「無くなってるのよ、昨日作り上げた新型の連結型魔晶石核が二つとも!!」


「「「ええぇっ!?」」」


 思わず私もヤリスもルラも声を合わせて驚く。
 そしてみんな慌てて部屋の中に入って連結型魔晶石核が入ってあったはずの箱を見る。


「無くなっている…… ソルミナ教授!」

「あわあわあわ、どどうしよう!!」

「落ち着いてソルミナ教授、これに何時気付いたの?」

 箱の中は空っぽで、二個入っていた連結型魔晶石核は無くなっていた。
 動揺するソルミナ教授にヤリスは何時気付いたか聞く。


「私がここへ来たのが十五分くらい前。いつも通り部屋の鍵を開けて入ろうとしたら既に扉に鍵が開いていたのよ。そして部屋に入るとこの有様。慌てて連結型魔晶石核を確認すると無くなっていたのよ!!」

 既に涙目のソルミナ教授はそう言いながらどうしていいか分からない様におどおどしている。
 ヤリスは私に向かってすぐに指示を出す。


「リル、すぐに生徒会と学園に通報! 現場はこれ以上触らないで。それとルラは聞き込み。ソルミナ教授がここへきて私たちが来た時間だから…… 三十分以上前にこの辺でこの部屋の付近にいた人物を見た人がいないか確認して!」


「わ、分かりました!」

「うん、聞きまわってみる!!」


 ヤリスにそう言われ私たちはすぐに行動に出るのだった。


 * * * * *


「新型の連結型魔晶石核がですわぁ~」

「アニシス様、気をしっかりと持つんだよ」


 あの後生徒会や学園にこの事を通報して学園の自警隊に来てもらった。 
 すぐに現場検証とか始まったけど、肝心な連結型魔晶石核の行方は全く分からない。

 ルラもこの辺で誰か見かけていないか聞きまわったけど、成果は皆無だった。

 がっくりと膝を落してショックを受けているアニシス様をスィーフの皆さんたちが慰めている。


「それで、ソルミナ教授は部屋の鍵はしっかりと掛けていたのですな?」

「はい、勿論です」

「連結型魔晶石核を入れた箱には?」

「そっちもしっかりと鍵を閉めてました。でも私が来た時には既に開かれてからっぽで……」

 ウ・コーンさんもサ・コーンさんもソルミナ教授にもう一度状況確認をする。
 鍵は普通の人間には開けられないタイプで、シーフのスキルでもない限りそうそう簡単には開かないらしい。

 
「となると、どこかの国の諜報部員か?」

「だがこの学園では学園に所在する人間はその出入りが厳重に管理されている。魔法を使おうにも『戒めの腕輪』のせいで使えぬはず……」


 ウ・コーンさんもサ・コーンさんも腕を組んで唸っている。
 

「学園の内部で許可が無ければ魔法は使えない…… となるとやはり盗賊か…… でも学園に侵入するのはそう簡単には出来ないはず。城壁には魔法の結界が張ってあるし、出入り口は厳重に管理されている。となると……」

 ヤリスはそう言いながら私たちを見る。


「学園内部の人間の仕業ね」


 そう言って私たちを見る。
 
「学園内のって…… まさかそんな!」

「誰が??」

 ヤリスのその言葉に私もルラも思わず驚きの声を上げる。
 いや、でもこんな研究を誰かが横取りするにしてもすぐに足がつくはず。
 

「とにかく何とかして犯人を捕まえて取り戻してほしいですわぁ~」

 涙をハンカチで拭きながらアニシス様はそう訴える。
 スィーフの皆さんもアニシス様を励ましながら言う。


「アニシス様をこんなに悲しませるなんざ上等じゃないか!」

「許せないよね~」 

「私たちも犯人探しましょう」

「許せない……」


 ミリンディアさんはじめエレノアさんもハーミリアさんも、クロアさんだって怒りに燃える。
 私だってあれだけ苦労してみんなで作り上げた連結型魔晶石核が盗み出されたのは許せない。

「ヤリス、ルラ、私たちも犯人を捜しましょうよ!」

「そうね、ここまでの事しでかすのだから絶対に捕まえないとね」

「やろう、お姉ちゃん!!」

 私たちは頷きあって犯人を捜す事にするのだった。


 * * *


「とは言ってまずは手掛かりからだけど、ルラ本当に誰もこの近くにいた形跡は無かったの?」

「うん、この辺にいる人たちに聞いたけど、みんな受講が終わってまだほとんどの人が教室にいた時間帯だからこの辺にいた人自体が少なかったらしいよ」


 早速犯人を捜す為に手掛かりを探すけど、その時間この研究棟には人気が少なかったらしい。
 となると、その時間動き回れるのはソルミナ教授たちと同じ教員職?

「じゃあ、犯人は教員職の人ですか?」

「誰かの研究成果を横取りにしたって同じ教員職じゃ発表するわけにはいかないわよ?」

 確かに、いくら素晴らしい研究結果だって盗み出したものを発表するわけにはいかない。
 そんなことすれば誰が犯人か自ら名乗り出るようなモノだ。


「でも、これだけのものをどこかの国に売り込むって事は十分に考えられるわ」


 ヤリスのその言葉にドキリとさせられる。
 だってそれはありうるから。


「今は表面上は各国も落ち着いているけど、スィーフみたいに訳の分からない魔物が発生したらどこの国だって自衛の為に何らかの手を打ちたいわ。連合軍にだけ頼ったって援軍が来るまでに時間もかかるしね」

「だからって……」

「どこかの国を疑う訳じゃないけど、万が一の時の為にそう言った力は皆欲しがるわよ。事実うちの国にはそれだけの軍事力もあるし私もいるからね……」

 そう言ってヤリスはちょっと寂しそうな顔をする。
  
「アニシス様にしたってあれだけの技術力を持つ人材はティナに国でも久しぶりのはず。そのアニシス様の構想は色々な物に使える」

 ヤリスはそう言って歩き出す。


「とにかくもう一度状況を確認しながら聞き込みよ!」

「は、はい」

「うんっ!」



 私たちはヤリスと一緒にもう一度聞き込みを始めるのだった。

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