356 / 437
第十四章:脈動
14-22盗難
しおりを挟む「リル、ルラ、それにヤリス大変よ!!」
たこ焼きを持ってソルミナ教授の研究室に来たらソルミナ教授が大慌てしていた。
一体どうしたのだろうと部屋に入ってみるとなんと研究室が荒らされていた。
「ソルミナ教授、これは一体!?」
「一体全体何があったって言うのよ?」
「うわぁ~部屋がめちゃくちゃだ~」
慌てふためくソルミナ教授に何が起こったか聞いてみる。
するとソルミナ教授はアワアワ言いながら言う。
「無くなってるのよ、昨日作り上げた新型の連結型魔晶石核が二つとも!!」
「「「ええぇっ!?」」」
思わず私もヤリスもルラも声を合わせて驚く。
そしてみんな慌てて部屋の中に入って連結型魔晶石核が入ってあったはずの箱を見る。
「無くなっている…… ソルミナ教授!」
「あわあわあわ、どどうしよう!!」
「落ち着いてソルミナ教授、これに何時気付いたの?」
箱の中は空っぽで、二個入っていた連結型魔晶石核は無くなっていた。
動揺するソルミナ教授にヤリスは何時気付いたか聞く。
「私がここへ来たのが十五分くらい前。いつも通り部屋の鍵を開けて入ろうとしたら既に扉に鍵が開いていたのよ。そして部屋に入るとこの有様。慌てて連結型魔晶石核を確認すると無くなっていたのよ!!」
既に涙目のソルミナ教授はそう言いながらどうしていいか分からない様におどおどしている。
ヤリスは私に向かってすぐに指示を出す。
「リル、すぐに生徒会と学園に通報! 現場はこれ以上触らないで。それとルラは聞き込み。ソルミナ教授がここへきて私たちが来た時間だから…… 三十分以上前にこの辺でこの部屋の付近にいた人物を見た人がいないか確認して!」
「わ、分かりました!」
「うん、聞きまわってみる!!」
ヤリスにそう言われ私たちはすぐに行動に出るのだった。
* * * * *
「新型の連結型魔晶石核がですわぁ~」
「アニシス様、気をしっかりと持つんだよ」
あの後生徒会や学園にこの事を通報して学園の自警隊に来てもらった。
すぐに現場検証とか始まったけど、肝心な連結型魔晶石核の行方は全く分からない。
ルラもこの辺で誰か見かけていないか聞きまわったけど、成果は皆無だった。
がっくりと膝を落してショックを受けているアニシス様をスィーフの皆さんたちが慰めている。
「それで、ソルミナ教授は部屋の鍵はしっかりと掛けていたのですな?」
「はい、勿論です」
「連結型魔晶石核を入れた箱には?」
「そっちもしっかりと鍵を閉めてました。でも私が来た時には既に開かれてからっぽで……」
ウ・コーンさんもサ・コーンさんもソルミナ教授にもう一度状況確認をする。
鍵は普通の人間には開けられないタイプで、シーフのスキルでもない限りそうそう簡単には開かないらしい。
「となると、どこかの国の諜報部員か?」
「だがこの学園では学園に所在する人間はその出入りが厳重に管理されている。魔法を使おうにも『戒めの腕輪』のせいで使えぬはず……」
ウ・コーンさんもサ・コーンさんも腕を組んで唸っている。
「学園の内部で許可が無ければ魔法は使えない…… となるとやはり盗賊か…… でも学園に侵入するのはそう簡単には出来ないはず。城壁には魔法の結界が張ってあるし、出入り口は厳重に管理されている。となると……」
ヤリスはそう言いながら私たちを見る。
「学園内部の人間の仕業ね」
そう言って私たちを見る。
「学園内のって…… まさかそんな!」
「誰が??」
ヤリスのその言葉に私もルラも思わず驚きの声を上げる。
いや、でもこんな研究を誰かが横取りするにしてもすぐに足がつくはず。
「とにかく何とかして犯人を捕まえて取り戻してほしいですわぁ~」
涙をハンカチで拭きながらアニシス様はそう訴える。
スィーフの皆さんもアニシス様を励ましながら言う。
「アニシス様をこんなに悲しませるなんざ上等じゃないか!」
「許せないよね~」
「私たちも犯人探しましょう」
「許せない……」
ミリンディアさんはじめエレノアさんもハーミリアさんも、クロアさんだって怒りに燃える。
私だってあれだけ苦労してみんなで作り上げた連結型魔晶石核が盗み出されたのは許せない。
「ヤリス、ルラ、私たちも犯人を捜しましょうよ!」
「そうね、ここまでの事しでかすのだから絶対に捕まえないとね」
「やろう、お姉ちゃん!!」
私たちは頷きあって犯人を捜す事にするのだった。
* * *
「とは言ってまずは手掛かりからだけど、ルラ本当に誰もこの近くにいた形跡は無かったの?」
「うん、この辺にいる人たちに聞いたけど、みんな受講が終わってまだほとんどの人が教室にいた時間帯だからこの辺にいた人自体が少なかったらしいよ」
早速犯人を捜す為に手掛かりを探すけど、その時間この研究棟には人気が少なかったらしい。
となると、その時間動き回れるのはソルミナ教授たちと同じ教員職?
「じゃあ、犯人は教員職の人ですか?」
「誰かの研究成果を横取りにしたって同じ教員職じゃ発表するわけにはいかないわよ?」
確かに、いくら素晴らしい研究結果だって盗み出したものを発表するわけにはいかない。
そんなことすれば誰が犯人か自ら名乗り出るようなモノだ。
「でも、これだけのものをどこかの国に売り込むって事は十分に考えられるわ」
ヤリスのその言葉にドキリとさせられる。
だってそれはありうるから。
「今は表面上は各国も落ち着いているけど、スィーフみたいに訳の分からない魔物が発生したらどこの国だって自衛の為に何らかの手を打ちたいわ。連合軍にだけ頼ったって援軍が来るまでに時間もかかるしね」
「だからって……」
「どこかの国を疑う訳じゃないけど、万が一の時の為にそう言った力は皆欲しがるわよ。事実うちの国にはそれだけの軍事力もあるし私もいるからね……」
そう言ってヤリスはちょっと寂しそうな顔をする。
「アニシス様にしたってあれだけの技術力を持つ人材はティナに国でも久しぶりのはず。そのアニシス様の構想は色々な物に使える」
ヤリスはそう言って歩き出す。
「とにかくもう一度状況を確認しながら聞き込みよ!」
「は、はい」
「うんっ!」
私たちはヤリスと一緒にもう一度聞き込みを始めるのだった。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる