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第十四章:脈動

14-20伝説の鋼鉄の鎧騎士

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「いやはや、流石に疲れたわ~」

「うふふふふふふですわ~」


 四大精霊を一つの魔晶石に異空間の部屋を各精霊毎に作り閉じ込めて、直接の接触が出来ないようにした連結型魔晶石核が完成した。

 最大の問題点であった魔晶石核内で隔離して直接接触を防ぎ四大精霊大爆発と言う、この辺をクレーターにしてしまう程の爆発を防いだ。
 しかし異空間隔離して直接接触をしない様にしてもにじみ出た精霊力のせいでやはり四大精霊大爆発をしそうになったのをエリリアさんが持ち出した昔の学園長の書で解決できた。


「とは言え、このやり方はリルがいないとダメだしアニシスやヤリスもいないとダメね。私も魔晶石核を作る為に協力しなきゃならないから到底通常の量産は出来そうにもないわね?」

「まあ、この書に書かれているのは過去の四大精霊を従える方法であって、誰でもできる保証ではないからね」

 喜ぶアニシス様たちを横目にソルミナ教授はため息を吐きながらそう言う。
 そしてそれを肯定するかのようにエリリアさんも同意をする。

 確かにこれだけの労力を必要とすれば量産する事なんて夢のまた夢である。


「しかし目的は達成できますわ。もともとこの新型の連結型魔晶石核は今制作中の私の全ての技術と力を注ぎ込んだ『鋼鉄の鎧騎士』に搭載するつもりでしたの。あの謎の魔物にも十分に対応する為の切り札としてですわ」

 アニシス様はソルミナ教授とエリリアさんの会話を聞いていたようだ。
 そして手に持つその新型の連結型魔晶石核を机の上にそっと置いてから言い始める。

「謎の魔物はまるで旧型の『鋼鉄の鎧騎士』を腕試しのように破壊していましたわ。その傷跡は一撃でミスリル合金の外装を破壊し、素体にまで傷を負わせるほどの。通常『鋼鉄の鎧騎士』どうしの戦いでは団体戦、一騎討に関わらず頭部ユニットが破壊されればその力は著しく弱まりますわ。頭部には補佐する為の魔晶石がありますからですわ。でも破壊された機体は頭部を狙われる事無く純粋にその力で破壊されていましたわ」

 アニシス様はそう言って黒板に「鋼鉄の鎧騎士」の絵を描いてゆく。
 その半分は素体の絵、そしてもう半分は外装がついたよく見る騎士の恰好をした絵。

 それからアニシス様は「鋼鉄の鎧騎士」の中に胸からお腹にかけて半立ちの人の絵を描いて言う。

「通常操縦者は内部で鎧のような増幅器に体を固定されていますわ。ですから機体操作はそのままダイレクトに操縦者がまるで自分が巨人になったような感じで伝わりますの。その誤差を補佐するのが頭部ユニットの演算魔晶石ですわ。これにより実際の体の大きさと『鋼鉄の鎧騎士』の身体の大きさの修正をしていますの」

 アニシス様はそう言ってみんなを見る。


「そう言えばその誤差を埋める為に生体ユニットを使った研究も過去にはされていたね。今は廃れてしまったけど、ホムンクルスを使ったそれはまるで騎士に寄り添う少女のパートナーのようだったと言われていたね」

「ええ、確かに生体ユニットは優秀でしたわ。しかしそのコストと二人分の容積を確保する為に一時期『鋼鉄の鎧騎士』自体を巨大化させる問題となり、動きは遅くなり力はあるものの魔力消費量が半端無い為にまた元の魔晶石演算ユニットに戻ったのですわ」

 アニシス様はその絵の隣に大型化した当時の「鋼鉄の鎧騎士」の絵を描く。
 それは軽く五割り増しくらいは大きく、確かに力は強そうだった。


「それで、ティナの国のお姫様はこの四大精霊を封じ込めた連結型魔晶石核をどう使うつもりなんだい?」

「連結型魔晶石核のツイン搭載タイプを作成するのですわ!」


 エリリアさんのその質問にアニシス様は書いていた「鋼鉄の鎧騎士」の絵に二点丸い印をつける。

「オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』、いえ、あの我が国の宝物庫の壁に封印されたあの赤い機体、ティアナ姫専用の『鋼鉄の鎧騎士』にも搭載されていると言われているツイン装備型の再現をするのですわ! あの機体は女神殺しの古竜とも対等に戦ったと言われているまさしく『鋼鉄の鎧騎士』の頂点に輝く機体なのですわ!!」

 搭乗者の背中と「鋼鉄の鎧騎士」の腰のあたりに書かれたそれは通常の機体の一つだけ物とは違うらしい。


「でも、あれって確かティアナ姫じゃないと扱えないくらい膨大な魔力が…… あ、そうかそれでこの新型の連結型魔晶石核か!」

 ソルミナ教授はどうやらその機体を知っているようで思い出しながら言いかけて今回の新型連結型魔晶石核に気付く。
 そしてそれに納得したようにエリリアさんは頷いてから言う。

「なるほど、アニシスの目的はあの機体の再現だったのか。しかしそこまで膨大な力が無いとその魔物は倒せないのかい?」

「破壊された『鋼鉄の鎧騎士』の素体の一部にはエルリウムΓを使ったクロスバンド工法のパーツも使われたものがありましたわ。今回その一部がその魔物に破壊されていたのですわ」

「なんだって? あのエルリウムΓを使ったクロスバンド工法のパーツを!? この世界に存在すると言われているどんな武器でも傷付ける事が出来ないと言われるあれをかい?」

 エリリアさんは眼鏡のずれを直しながら驚いている。
 それ程凄いものを破壊できる魔物って……

「潜在的な脅威に対抗するにはあの伝説の『鋼鉄の鎧騎士』の再現した機体が必要ですわ」


 アニシス様はそう、力強く言うのだった。
 
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