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第十四章:脈動

14-16試運転

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 アニシス様は新型の連結型魔晶石核を手に取る。
 いよいよ試作品の起動をしてその機能の成果を試す時が来た。



「これで上手く行けばすべてが変わりますわ! 新たな時代の幕開けですわ!!」


 アニシス様はそう言って手に魔力を込める。
 そしていよいよ新型の連結型魔晶石核の起動を始める。

「さあ、新型の連結型魔晶石核よ、その実力を見せないさいですわ!!」

 アニシス様がそう言って魔力を連結型魔晶石核に注ぎ込む。


 ドクンっ!!


 連結型魔晶石核の表面にあの血管様な光が一斉に浮かび上がる。
 それはまるで心臓かのように脈打ち、輝き始める。

「ア、アニシス様!?」

「ちょっと、大丈夫なのこれ!?」

 ヤリスもソルミナ教授もその光に目を細めその様子に注視する。


「起動しましたわ! 凄いですわ、ほんのわずかな魔力で全ての精霊の魔晶石核が動き出し共鳴を始めましたわ!!」


 アニシス様はそう言って連結型魔晶石核を掲げる。
 まるで天から授かった宝物のように。


「ちょ、ちょっとアニシス様?」

 ミリンディアさんがそんなアニシス様に声を掛けるもアニシス様は固まったまま動かない。
 光は更に強くなり始める。


「え、えーとですわ……」


「なんか魔力がどんどん膨れているみたい……」

 アニシス様は固まったまま頬に一筋の汗をかく。
 それをスィーフのクロアさんが的確に状況を口にする。


「ちょっとアニシス、止めなさいよ! 魔力がどんどん膨れ上がっているわよ!?」

 たまらずソルミナ教授がそう言うけど、アニシス様は今度は額に脂汗をびっしり書きながらギギギぃっとこちらを向いて言う。

「な、何故か言う事を聞いてくれないのですわ、四つの精霊がどんどんお互いの力を増幅しているみたいですわ」



「「「「「「「な、何だってぇっ!?」」」」」」」



 思わずソルミナ教授もヤリスも私も、そしてスィーフの皆さんも声を上げる。
 これって、魔力がどんどん増えてって、このままじゃ魔力暴走が始まっちゃうんじゃ!?


「と、止まりませんわ、どうしましょうですわぁっ!!」

「アニシス様、魔力供給止めて!」

「もうとっくに止めてますわ、と言うかこの連結魔晶石核が私から離れてくれないのですわぁっ!!」


 うわぁっ!
 それまずいんじゃないの?

 慌てて魔力を瞳に回してみると、何とアニシス様が掲げた連結型魔晶石核の周りに四大精霊たちがうっすらと姿を現せにらみ合っている。 

  
「ソ、ソルミナ教授、あれっ!!」

「うわぁ~お姉ちゃん薄っすらとした精霊たちがにらみ合ってる~」

「マジッ!? ちょっと、アニシスっ!!」

 精霊が見える私たちエルフは大慌てだ。
 だってもしこの子たちが一斉に争い始めれば四大元素のぶつかり合いで大爆発を起こすってのが精霊使いの常識だ。
 下手をすればこの辺一帯がクレーターになるほどの。


「とにかく何とか止めなさい、アニシス!!」

「そうは言われましても、制御が出来ないのですわ! ああ、もう、お願いですわ言うこと聞いてですわぁ!!」


 これ、完全に暴走じゃなの?
 精霊たちはどうやら自分に直接害が来ないのをいいことに精霊力、つまり魔力同士で威嚇し合い始めていた。
 でも一度にこの精霊力が、方向性が違う魔力がぶつかれば……


「ソルミナ教授、これってやっぱり四大精霊大爆発になるんじゃ……」

「ありうるわ。本体じゃなくて精霊力、魔力だけどこれだけ方向性の違う力がぶつかり合えば大爆発とまではいかなくても爆発は必須よ、リル何とかしなさい!!」

「何とかって、もしかして私のチートスキルですか!?」

「もうそれでもいいからやっちゃいなさい! 研究室爆発させたりこの建物壊したら始末書じゃすまなくなるでしょ!! 早く!!」


 必死なソルミナ教授を見て本気でヤバいのが分かる。
 私はアニシス様が掲げる連結型魔晶石核を見据える。


「ごめんなさい、アニシス様! 連結型魔晶石核を『消し去る』!!」


 意識を集中してあの連結型魔晶石核を「消し去ると」ロックオンする。
 すぐに本当に実行するかどうかと聞かれるので「Yes」と答えると私のチートスキル、「消し去る」が発動する。


 ひゅんっ!



「あ、あら、ですわ?」


 両手を上に掲げたままのアニシス様は手のひらに有った魔力暴走を始める寸前の連結型魔晶石核が消えた事に驚く。

 
「ふぅ~、危なかった……」

「あ、あらあら? あらぁ~ですわ??」

 思わず汗をぬぐうソルミナ教授。
 動けるようになって自分の手の平を見つめるアニシス様。
 それを見て安堵するみんな。


「アニシス様、大丈夫だったかい?」

「良かったぁ~」

「アニシス様ぁ~」

「消えた……」


 ミリンディアさんもエレノアさんもハーミリアさんもアニシス様のもとへ駆け寄る。
 クロアさんだけもう一度周りをきょろきょろとあの連結型魔晶石核を探してからアニシス様のもとへ行く。
 アニシス様はもう一度自分の手の平を見てから私を見る。

「リルさん、もしかしてですわ」

「ごめんなさい、アニシス様。多分あのまま行っていたら四大精霊大爆発が起こっていたのでスキルを使わせてもらいました」

 私がそう言うとポカーンとした顔でアニシス様はぺたんと座り込んでしまった。
 そして周りを見てからソルミナ教授を見る。


「リルの言った事は本当よ。私たち精霊使いの常識で四大精霊が一度に交わると大爆発を起こすって事があるのよ。程度にもよるけど、下手をすればこの辺がクレーターになるほどの爆発になる事もあるわ」


 ソルミナ教授がそう言うとアニシス様は私を見て言う。


「失敗、してしまいましたわ…… 別々の異空間で閉じ込めておいたはずなのにですわ……」

「精霊力がにじみ出てそれがどんどん膨れていました。共鳴ではなく争うように……」


 私が事実を言うとアニシス様はぶわっと涙を浮かべる。


「そんなぁ、絶対にうまくいくと思ったのにですわぁ!! ティナの国の秘伝まで引っ張り出したのにですわぁ!!」


 アニシス様とは思えない程涙をぼろぼろ流してわんわん泣いてるぅっ!?


「あ~、お姉ちゃんアニシス様泣かせちゃったぁ~」

「私っ!?」


 ルラが頭の後ろに手を組みながらそんな事を言う。


「アニシス様がガン泣きするの初めて見た。相当ショックだったのねぇ~」

「ヤ、ヤリスまで!?」


 ヤリスもそんな事言って私を見る。
 なんか私が悪者ぉ!?


「ふう、とは言えリルにやってもらわなきゃこの辺が大爆発起こしていたかもだもんね……」

 ソルミナ教授はそう言って私の肩をポンと叩く。
 いや、やれって言ったのはソルミナ教授で……




「まったく、最近の若いのは安全性と言うモノを考えないのかね?」



 聞こえた来たその声に驚きそちらを見ると大きな眼鏡をした少女がこちらを見ていた。
 扉からこちらを見るその瞳は、何と言ったら良いのかもの凄い力を感じる。


「あなたは…… エリリアじゃないの!!」




 ソルミナ教授はその少女を見ながら大いに驚くのだった。

 
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