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第十四章:脈動
14-7アニシス帰還
しおりを挟む今日もソルミナ教授の所で魔晶石核の作成に駆り出されている。
「よっし、今日の分終わり! あー疲れた」
「お疲れ様です、ソルミナ教授。結構溜まってきましたね?」
「たくさんできて来た~」
「流石にこれだけの魔晶石核を目の当たりにすると凄いわね」
精霊の封印が終わってソルミナ教授は大きく伸びをする。
目の前には何だかんだ言って二十個近くの魔晶石核がある。
ヤリスの言う通りこれだけ有れば見た目も凄い。
この魔晶石核の作成は今の所一人で作れるのは学園ではソルミナ教授しか出来ないらしい。
術式と魔法陣を使って数人がかりでやれば出来なくもないけど、かなりの労力を使ってやっと一個作れるかどうかなので効率が悪い。
もっとも、この魔晶石核はかなりの値段で売れるとも聞いているので、学園の運営費確保でアルバイトの学生とかが毎月数個は生産しているらしいのだけど。
「ソルミナ教授はなんで学園の魔晶石核やミスリル合金生産に参加しないんですか?」
ふと気になって聞いてみる。
するとソルミナ教授はお茶を入れながら言う。
「それは本当に研究とかで行き詰まった時にしかやらないアルバイトよ。本業の研究で成果が出れば予算も出るし、学生も研究に引っ張って来れる。学園運営費の足しになるマジックアイテム生産は私たち教授にして見ると最後の砦ね」
そう言ってお茶をすする。
うーん、つまり食いっぱぐれ無い為の最後の砦と言う事となる。
と言うか、ここに残る為の対価か。
でもまあ、ソルミナ教授はマジックアイテムの開発や今回のように研究依頼があるので先日の食事みたいに結構余裕があるらしい。
数年は寝て暮らせるとか言ってるから、かなりのモノなのだろう。
「とは言え、学園長あたりに言われれば手伝うしかないのよね~。ここは居心地のいい場所だから私もここで教授を続けたいしね」
「なるほど」
私もソルミナ教授の研究室に来るようになってからいろいろ聞いたけど、魔道の研究をするにはこの学園はとても有利らしい。
以前飛ばされたレッドゲイルがあるイザンカ王国も魔道がいち早く広まった国として魔道研究は盛んらしいけど、ボヘーミャには敵わないらしい。
イザンカ王国も自国の技術で「鋼鉄の鎧騎士」を作成したと言われているので、魔道技術は相当なモノだろうけど。
「でもアニシス様の欲しがってる魔晶石核の数にはまだまだだねぇ~」
「原石の入荷はもう少し時間がかかるって言ってますよ、ソルミナ教授」
ルラもヤリスもお茶をすすりながらそんな事を言っている。
「ま、毎日やって行けばいずれは目的数できるわよ」
ソルミナ教授はそう言ってお茶を飲み干すのだった。
* * * * *
「ただいま~」
「ただいま戻りました」
ソルミナ教授の所で今日の分のお手伝いが終わって家に帰る。
もうすぐお夕飯の時間だからそろそろユカ父さんも帰って来るだろう。
御台所からはマーヤ母さんの作る美味しい夕食の香りが漂っている。
「あら、お帰り~。リル、ルラ、手を洗ったらお皿出すの手伝って」
「はーい、すぐ行きますね」
「は~い」
家に戻り、まずは手洗いうがい。
そして軽く顔を洗ってからマーヤ母さんの所へ行く。
今日はどんな夕ご飯だろうか?
「これとこれ、後こっちもよそってね。お味噌汁もう少しで出来るから」
「はい、あ、今日はカツオのたたきですか? これ美味しいんですよね~♪」
テーブルの上に置かれていたのはすでに盛り付けられたカツオのたたきだった。
ちゃんと玉ねぎの塩もみスライスを水でさらしたのがカツオのたたきの下に敷かれている。
うんうん、流石マーヤ母さん分かってらっしゃる。
ポン酢のつけだれとかも横に有るのでルラにお願いして食卓に運んでもらう。
そのほかには茄子の煮つけや、レンコンの薄切りにしたものの和え物、漬物にジャガイモをソースで炒めたおかずもある。
ジャガイモのソース炒め、これ意外と美味しいんだよね~。
私はお皿に盛りつけながらどんどんと食卓に運ぶ。
程無く夕食の準備が出来た頃に玄関の扉が引かれる音がする。
がらっ!
「あ、ユカ父さん帰って来たみたいだ~」
「丁度良かったですね、流石マーヤ母さん」
「うふ、じゃあみんなで玄関にお出迎えに行かないとね。それと、どれからにするか聞かなきゃ♪」
そう言ってユカ母さんはにこにこと玄関へ向かう。
そしてユカ父さんを出迎えながらお決まりの文句を言う。
「お帰りなさい、あなた。お風呂にします? 夕食にします? それとも、あ・た・し♡」
「すみませんマーヤ、今日はこちらの話を先にしなければなりません」
「あら?」
マーヤ母さんのお決まりの文句にユカ父さんは別の答えをするのだった。
どうしたのかと覗き込むとその後ろから……
「ただいま戻りましたわ。状況は良く無いですわね……」
アニシス様がユカ父さんの後ろから出てきてそう言うのだった。
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