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第十三章:魔法学園の日々

13-34隣の村

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 ティナの国はこの西の大陸、ウェージム大陸の北方にあり、これをもう少し北に行くと北の大陸、ノージム大陸へとつながる港町があるそうな。

 
「まあ、今はホリゾン公国の管轄って事になってるけど、実際にはどちらつかずね」

 ファムさんはそう言ってアニシス様の許可をとって燻製にする前の魚を結構と持ち帰る。
 早速その調理方法をみんなに広めるつもりだ。

 良いのだろうか、いきなりそんな事して?


「あの、ファムさん。魚料理をみんなに伝えるのは良いですけど、寄生虫とか雑菌には要注意してくださいね? 川魚や沼魚はそう言った問題がありますからね?」

「分かってるって。でもこれで冬のあの燻製漬け以外にも料理が楽しめるとなれば僥倖よ!」

 かなり嬉しそうである。
 しかしこのティナの国って冬は厳しいっていうけどそれ程なのだろうか?

「アニシス様、ここって冬場はそんなに厳しいんですか?」

「ええそうですわねぇ~。ここは豪雪地帯で、降り始めれば五、六メートルはゆうに雪が積もりますものねぇ~」

 話しには聞いていたけど、本当にそんなに積もるんだ。
 そう言えば家によっては二階に出入り口がある家もあるし、なんか大変そうだ。

 ん?
 そう言えば近くの村とかは大丈夫なのだろうか?


「あの、そうすると近くの村とかは大丈夫なんですか?」

「そうですわねぇ~、近隣ですとジルの村がありますがあそこはちょうど豪雪地域から離れますから冬場でも意外と大丈夫ですわね」

 アニシス様はそう言って西の方を見る。
 ジルの村は向こうの山岳部中腹にあるらしい。
 なんでも普通の人がいけるような場所では無いらしく、荷物の運搬はもっぱら獣人族がしているとか。

 獣人族はもともと北の大地ノージム大陸にその集落があったそうな。
 その昔、獣人族の扱いはそれ程良く無く旧ホリゾン帝国では奴隷とかにもなっていたそうな。
 しかし今ではティナの国を中心にジルの村などにも沢山の獣人族がいるらしい。


「ジルの村ですか…… 噂ではとんでもない所だって聞いてますが」

「あのエルハイミさんに関係する人たちが転生する場所って言われているからねぇ~。とにかく普通じゃない村らしいわよ?」

 アニシス様につられて私も西の方を見ているとファムさんがそう言ってくる。
 エルハイミさんに関する人が転生するって、絶対にとんでもない所だろう。
 行きたくはない場所上位になる。


「あれ? なんか大きな荷物持った人たちがいっぱいいるね~」

 ルラが窓の外を見ていて何かに気付く。
 馬車でティナの街に戻っているとちょうど商人だか何だか大きな荷物を背負っている人たちがいた。

「みんな獣人みたいね?」

「はい?」

 ヤリスがそう言って窓から顔を出してその一行を見る。
 すると確かに獣人の人たちっぽい。

「あら、ジルの村の連中よ。鉱石か何か持って来たのね?」

「あらあらあら~、魔鉱石とか有ると嬉しいですわね~」

 ファムさんもアニシス様も窓からその一行を見る。
 背負っている荷物が人の三倍ほどあるのはやはりジルの村の人だからだろうか?
 もしあれに鉱石とか入っているならとんでもない重量になりそうだ。


「おーい、ジルの村の人~」


 ファムさんは呑気に手と振ってみるとそれに気付いた獣人の人たちもにこやかに手を振り返して来る。
 馬車はちょうど彼らの所で止まる。


「なになに、ティナの街に行商?」

「はい、これ売り払って下着とか食べ物とか買って来いってシェル様が言うもんで、何時もより早めに納品に来たんですよ」

「シェルって、今ジルの村にいるの?」

「シェル様どころか女神様やうちの村からティアナ姫の転生者が覚醒したとかで大騒ぎですよ。黒龍様まで来て毎日戦場ですよ」

 はははは、とか笑っているけど戦場ってなに!?

「あっちゃ~、噂には聞いてたけどそんなにもつれてるの、今回は?」

「ええ、何せ今回はもう子供が出来ちまって女神様も引くに引けない状態なんですよ」


 はいっ!?
 こ、子供ぉっ!?


 え、ええぇ?
 ティアナ姫の転生者って女性だよね?
 確かもう恋人がいるとか何とかでもめていたって聞いたけど、子供ぉっ!?

 お、女の子どうしで子供って、女神のエルハイミさんの力が無いと出来ないんじゃ……


「一体どうなってるんですか? シェル様たちが長々ジルの村にいるなんて??」

「気になりますわね~、ちょっと詳しくお話聞かせてくださいですわ」  


 ヤリスもアニシス様も興味を持って乗り出して来る。
 獣人の人たちはアニシス様に驚いて頭を下げるけど、アニシス様は堅苦しい挨拶は抜きにして、それより話が聞きたいと彼らに言う。



 とにかく街に戻ってからお城に来てもらう事になって、私たちも関わりたくないジルの村についての話を聞かされる羽目になるのだった。

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