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第十三章:魔法学園の日々
13-23サンドウィッチ
しおりを挟むアニシス様が「鋼鉄の鎧騎士」を全面改修し始め素早く簡単に食事がとるために私がサンドウィッチを作ることにした。
「まずはパンを切っておいてっと」
レッドゲイルで仕入れていたパンで四角く作ってもらったりもしていたのがあった。
普通この世界では丸くしたり細長くしたり、後クロワッサンみたいなパンが主流だった。
でもピザトーストとか食べたいと思ってあの時お願いして四角く焼いてもらったパンがここで使えるのはラッキーだった。
「パンが四角いの? 珍しいわね」
「はい、これをこうして薄切りにして間に食材を挟んで食べるんですよ。これだといろいろな食材が挟めたり手軽に片手で食べられますからね。忙しい時とかは便利なんですよ」
ヤリスが覗き込んで聞いてくるので軽く説明をする。
私はルラが食べたがっていた卵サンドも作る為に卵を茹でたり、雑菌を「消し去る」しながらマヨネーズも作る。
「ルラ、卵サンド作るからマヨネーズ作るの手伝って。卵とオイルを入れたのよ良く掻き回しながらお酢を少し入れてね」
「分かった~、えへへへへ、卵サンド楽しみだなぁ~」
ルラはにこにこしながらマヨネーズを作る手伝いをしてくれる。
それを見て、私はジマの国でもらっておいたローストビーフも出す。
さっとわさびを使ったたれも作って薄切りにしたローストビーフを漬け込む。
野菜も新鮮なものを準備して、雑菌や汚れを「消し去る」で奇麗にしてからぱりぱりと葉っぱを剥いたり、キュウリのスライスをしたりする。
ああ、そうだそうだ、チーズも出してっと。
それらの具材をどんどんと薄切りにしたりして下準備を進める。
「お姉ちゃん、マヨネーズで来たよ~」
「お疲れ様、どれどれ?」
ルラが作ったマヨネーズをちょっと味見。
う~ん、塩っ気が足りないからパラパラと岩塩を入れてよく混ぜる。
それを四つに分けて一つには水でさらして塩もみして苦みと辛味を押さえた生の玉ねぎをとピクルスと黒胡椒を細かくしたのを入れてタルタルソースを作っておく。
もう一つにはマスタードを潰したものを入れてよく混ぜる。
更にもう一つはトマトケチャップと一緒以混ぜてオーロラソースを作る。
最後のは茹で上がった卵を細かく切ってマヨネーズと混ぜて塩コショウで味調整して卵サンドの具を作る。
「えっと、後はこう言ったのも作っておこうかな?」
言いながらオリーブオイルにすったニンニクを入れ、少しワインビネガーを入れて塩コショウで味を調える。
そこにボヘーミャやスィーフで手に入れておいた海産物を薄切りにして漬け込んでおく。
「よっし、これで大体準備は出来たわね。さぁサンドウィッチを作るわよ!」
言いながらまずは薄切りにした食パンに卵とマヨネーズを混ぜたものを挟んで行く。
ここでちょっとひと工夫して、薄いチーズも入れておくと更にまろ味が増して美味しい。
「まずは一つ、卵サンド出来上がりっと!」
出来あがったサンドウィッチの上にまな板を置いて少し押しておく。
こうすると挟んだ具とパンがなじんで崩れにくくなるからだ。
「次はっと」
次いでレタスに薄切りにしたキュウリを載せてそこへ先ほど作っておいた海産物のマリネを並べる。
そしてマヨネーズとトマトケチャップで作ったオーロラソースを塗ったパンで挟み込む。
「これで海産物のマリネサンド出来上がりっと!」
次はマスタードマヨネーズをパンに塗り、ハムとチーズの薄切りを入れる。
これはこれでシンプルでマスタードの辛味が利いて美味しいのよね~。
「定番のハムチーズ出来上がりっと!」
さあ次行くわよ次!
わさびだれに漬けといたローストビーフ。
まずはパンにレタスを軽く敷いて、水にさらしておいた玉ねぎのスライスを載せてそこへローストビーフを並べて行く。
わさびのツンとしたインパクトのある辛さに旨味の詰まったローストビーフ。
これだけでも十分に美味しいけど、ここに何とわずかなタルタルソースを入れます。
こうするとさっぱりの中にもコクが生まれツンとした辛さも和らげてくれるので最後まで美味しく食べられるのよね~。
「ローストビーフサンド出来上がりっと!」
う~ん、こうしてみるとマヨネーズ万能素材だわね。
四種類のサンドウィッチが出来あがり、それを奇麗に切り分ける。
お皿にそれを並べてハタと気付く。
「そうそう、デザートのも忘れる所だった!」
私は慌ててパンに薄くバターを塗ってからポーチから引っ張り出したイチゴのジャムを塗りたくる。
どうせだからちょっと多めに塗っちゃえ!
たっぷりのイチゴジャムサンドは至高よ、至高!!
それも出来あがり奇麗に切り分けてからお皿に並べ直す。
「さあ、出来ましたよサンドウィッチ盛り合わせです!」
おおぉ~
出来あがったサンドウィッチを皆さんに見せると何やら驚いている。
「へぇ~、これがサンドウィッチね?」
「卵サンドだぁ~♪」
ヤリスは出来あがったサンドウィッチを興味深そうに見ている。
ルラは待望の卵サンドにくぎ付けだ。
「へぇ、珍しい形のパンだね?」
「あたしもパンに何かはさんで食べるけど、切れ目入れて乗せるだけだからなぁ~こう言うの初めてだね」
「スィーフじゃ見た事無いですね」
「あ、ちゃんと海産物のもある?」
「ほう、これはうまそうですな」
「これはこのまま手に取って食べるのですか?」
スィーフの皆さんやサ・コーンさん、ウ・コーンさんもサンドウィッチを見ながら思い思いの感想を述べる。
この世界ではこういった形のサンドウィッチは珍しいのだろうね。
さて、こっちはこれで食べてもらえばいいけど問題は……
「アニシス様~一休みしましょうよ。ご飯も出来てますよ~」
向こうで驚異的なスピードで骨組みを組み立てているアニシス様に声を掛けてみるけど、全く聞こえていない様子だ。
「アニシス様、一旦ああなると力尽きるまで周りが見えなくなるんだよね」
ミリンディアさんはそう言いながらため息をつく。
そう言えば大魔導士杯のゴーレムの時もそんな感じだったな。
でもどうしよう。
今回は一晩で終わるような物じゃないだろうし、ちゃんと食事や休息も取らなきゃ体壊しちゃうよね?
「アニシス様~この卵サンド美味しいよ! 一緒に食べようよ~、あたしが食べさせてあげるから~」
私が悩んでいるとルラが卵サンドを頬張りながらアニシス様を呼ぶ。
まったく、食べながら喋るのはお行儀が悪いわよ?
私がそう思っていた時だった。
「あーんしてくれるのですの、ルラさんが!?」
一瞬でアニシス様はルラの前にまで来ていた!?
「えへへへ、これ美味しいよ、はい、あーん」
「あーん♪」
ぱくっ!
「ぅむぅううううぅぅっ! なんですのこれ! とっても濃厚でいてまろやか、卵のぷりぷり感も残っていて美味しいですわぁっ!!」
アニシス様は両手で頬を押さえて嬉しそうに言う。
「サンドウィッチですよ。アニシス様ちゃんとご飯食べたり休息とらないとだめですよ? はいこれ」
私はそう言いながらアニシス様におしぼりとサンドウィッチのお皿を差し出す。
アニシス様はそれを見てきょとんとする。
「これはリルさんが作ってくれましたの? 私の為に??」
「そうですよ、ほらちゃんと手を拭いて手づかみで食べられますからね」
そう言っておしぼりを手渡すとアニシス様は手を拭いてからサンドウィッチのお皿を受け取る。
「これは…… これはもうリルさんの愛ですわね! ああ、リルさんが私の為にこの様な手料理を!! これは永久保存しなければいけませんわね!!」
「いや、食べ物なんでちゃんと食べてください! 保存しないで!!」
「でも食べちゃうと無くなってしまいますわ」
「また作ってあげますからちゃんと食事してください。食べないと体壊しますよ?」
私がそう言うとアニシス様はサンドウィッチと私を見比べてから言う。
「つまり、毎日これを私の為に作ってくれると? やっとその気になってくれたのですね、リルさん! もう私リルさんを一生幸せにして見せますわぁっ!!」
「ちっがーぅうっ! なに毎日味噌汁作ってあげるみたいな流れになってるんですか! いいから早く食べてください!!」
「え~、違うのですの? じゃあせめてあーんしてくださいですわ!!」
びきっ(おこマーク)!
その後私が思い切りアニシス様の口にサンドイッチを詰め込んだのは言うまでも無かったのだった。
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