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第十三章:魔法学園の日々
13-17連合軍
しおりを挟む「何っ!?」
ヤリスはそう言って土煙あがった方を見る。
つられて私たちもそちらを見るけど、あの規模の土煙って何か大きなものがふっ飛ばされたか爆発したか。
「うわ~、何やってるんだろうね~?」
「とにかく行って見ましょう!」
ルラが呑気にそんな事言ってるとヤリスは少々慌ててそちらに向かう。
私たちもヤリスについてそこへ向かうのだった。
* * *
「こ、これって……」
着いたその先は闘技場のような場所だった。
そしてそこに身の丈六メートルくらいある巨大な鎧がいた。
「わぁ~『鋼鉄の鎧騎士』だぁ~! あ、でもレッドゲイルで見たのとだいぶ形が違うね?」
「いっぱいいますね、『鋼鉄の鎧騎士』」
闘技場の真ん中で一体の「鋼鉄の鎧騎士」があおむけで倒れている。
そしてそのすぐそばにもう一体が立っていた。
他の「鋼鉄の鎧騎士」は闘技場の端っこに並んでその様子を見ているような感じだった。
『まだまだ甘いわ! なんだその動きは!!』
『す、すみません隊長……』
『つぎ!』
見てると倒れていた「鋼鉄の鎧騎士」は他の「鋼鉄の鎧騎士」に助け起こされながらすごすごと端っこへ行く。
そして別の「鋼鉄の鎧騎士」が隊長と呼ばれたその「鋼鉄の鎧騎士」の前に立つ。
「さっきの、『鋼鉄の鎧騎士』どうしの訓練ですか?」
「そうだけど、あれは……」
ヤリスはその隊長と呼ばれた「鋼鉄の鎧騎士」を睨みつけるように見ていた。
何だろうと私もその隊長さんの「鋼鉄の鎧騎士」を見るとある事に気付く。
「あれ? あの『鋼鉄の鎧騎士』だけなんか細くて格好も違う?」
「でもお姉ちゃん、あの『鋼鉄の鎧騎士』強いよ……」
「えっ!?」
他の「鋼鉄の鎧騎士」よりだいぶ細身で、なんか鎧も簡素化されているよに見えるそれはこの中でも一番弱そうに見える。
でもルラは強いと言った。
この娘の格闘に対する目利きは結構当たる。
そんな事を思いながらヤリスを見るとぎりっと奥歯をかみしめていた。
「ヤリス?」
「あれは連合軍『鋼鉄の騎士』隊長、アイザック=ローレンツの操るホリゾン公国製。本来『鋼鉄の鎧騎士』の技術ではティナの国とガレント王国が秀でてたけど、何世代も前のホリゾン公国製の出力の低い『鋼鉄の鎧騎士』であたしと互角にやり合う、異常な奴よ!」
はい?
ヤリスと互角にやり合うって、ちょっとまって。
ヤリスって覚醒者だよね?
女神様の力の一端を宿している。
それと互角!?
「動くよ、お姉ちゃん!」
ルラの声にヤリスから視線を『鋼鉄の鎧騎士』に向けた時だった。
それはまるで流れるかのような動き。
模擬刀を打ち込む「鋼鉄の鎧騎士」に対し、紙一重の動きでそれをかわし滑るかのように懐に入って相手の模擬刀を振り下げた力を利用して足払いをしながら背中を模擬刀の柄で叩きうつぶせに倒れさせる。
ぶんっ!
ひょい、がっ!
とんっ
ばったーんっ!!
「凄い……」
私は思わずそう言ってしまう。
その動きは素人の私でさえ見とれるほどの物だった。
「まったく、なんであんな動きが出来るのよ? うちの『鋼鉄の鎧騎士』の方がずっと出力が高いって言うのに! それに私とやった時も私の拳は全然当たらないし、ちょっとの力のはずなのに吹き飛ばされるって一体どう言う事?」
ヤリスは言いながらもの凄く悔しがている。
と、そんな私たちに声がかけられた。
「これはこれは、ヤリス王女ではないですか。何時ガルザイルにお戻りに?」
見れば初老のなんか偉そうな服を着た人がやって来ていた。
「あ、ロディマス将軍! お久しぶりです!!」
「はははは、お久しぶりですね王女。おや、そちらのエルフの方は……」
にっこりと物腰静かなロディマス将軍と呼ばれたおじさんは私たちを見て聞いてくる。
「あ、初めまして。ヤリスの友人のリルです。こっちは双子の妹のルラです」
「ルラでーす!」
私とルラはぺこりと軽くお辞儀してロディマス将軍に挨拶をする。
ロディマス将軍はにっこりと笑いながら胸に手を当て軽く頭を下げて挨拶を返してくれる。
「ロディマス=コーンボインです。連合軍将軍を務めさせていただいております」
そう言ってまたヤリスを見て言う。
「王女にご学友が出来ましたか。それは大変良かった」
「ロディマス将軍、それはどう言う意味ですか?」
「何、昔の教え子に友人が出来るのは喜ばしい事です。ヤリス王女はシェル様に力を押さえる術を教えていただくまで普通に人と接触すら難しかったですからな。それがご学友が出来るとは。私も安心できましたよ」
そう言って笑い出す。
ヤリスは少しふくれっ面になったけど、まんざらでもない様だった。
「あの、ヤリスはロディマス将軍とは?」
「ああ、私が覚醒して力の加減が出来なかった頃に色々とお世話になったのよ。何せ力を入れていないつもりでも周りの物を簡単に壊しちゃうし、お城の中でちょっと気を抜くと壁を突き抜けちゃったりとね。で、連合軍のこっちでしばらく生活してたの」
笑いながらそう言うヤリスだけど、それって大迷惑じゃないの?
と言うか、こっちの連合軍さんも迷惑だったんじゃ……
「あの頃はヤリス王女もかなりおてんばでしたからな。ストレス発散と言いながら『鋼鉄の鎧騎士』と組手などするのは前代未聞でしたよ、はっはっはっはっはっ」
ロディマス将軍はそう言って笑うけど、ご苦労なされたんだろうなぁ。
当時の様子が手に取るように分かる。
「で、その時にどうしても倒せなかったのがあれよ」
ヤリスがそう言いながら腕を組んで親指をあの「鋼鉄の鎧騎士」に向けて言う。
「へぇ~、そんなに強いんだ…… ねえ、お姉ちゃん~」
「ルラ、あんたまさか……」
「いいわね、久しぶりに相手してもらうのもいいわよね!!」
おいこら、何考えてんのよ二人とも!!
にた~っと笑うヤリス。
目を輝かせて平手に拳を叩きつけているルラ。
「ね、ロディマス将軍いいでしょう? 久しぶりに組み手させて、アイザックと!!」
「王女にはかないませんな。しかし機体は壊さない様にしてもらいませんといけませんぞ?」
「あたしもやりたい! いいでしょロディマス将軍!!」
ヤリスとロディマス将軍が話しているとルラもそこに混ざる。
ロディマス将軍は一瞬驚くもルラをじっと見てから私を見る。
「エルフの双子の姉妹…… ヤリス王女の友人…… そして今次の会合か、なるほど。良いでしょう。ルラ殿でしたな、ルラ殿も機体を壊さない様に注意をしてくださいよ?」
「は~いっ!!」
満面の笑みでそう答えるルラ。
頷くロディマス将軍。
それを見て私はため息をつくのだった。
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