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第十三章:魔法学園の日々

13-6ソルミナ教授

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「はい、と言う事で今期の受講はこれで終わりです。明日より夏季休暇に入りますが各自休暇中の課題もありますから受講再開後に提出を忘れない様に。それでは良き休暇を」


 そう言ってソルミナ教授の今期の受講は終わった。
 この学園に来て数ヶ月、いよいよ夏休みになる。

 とは言え、このボヘーミャは一年中気候がほとんど変わらないので季節感ないけど。
 エルフの村でさえ雨季とか乾季とか有って季節によって咲く花とか可も変わっていたと言うのに。

 まあ過ごしやすい気候なので良いのだけど。

 夏季休暇は二カ月近くもある。
 特に遠くから来ている人はこの機に帰郷する人もいる。
 王族、貴族なんかはここボヘーミャとその国の近くの場所まで申請をしてゲートを使わせてもらったりもしているらしいけど、一般の人は明日から大移動が始まる。

「はぁ~、今年は大魔導士杯で優勝したから帰って来いってお父様が言うしなぁ~。数日後にはガレント王国に帰らなきゃ」

「ヤリスも帰るのですか?」

「うん、去年は帰らなかったから余計にお父様がうるさいの。お姉さまから大魔導士杯の件も報告あったから何が何でも帰って来いって。でもご褒美で後宮作ってもいいらしいからリルとルラも来てよ!」

 満面の笑みでそう言うヤリス。
 後宮の意味分かってんの?

「ガレント王国って、どんなところなの?」

「えーと、世界の穀物庫と呼ばれる位作物がたくさんあって、王都ガルザイルを中心に衛星都市が七つある所よ。私がいるガルザイルは『落ちてきた都市』の遺跡があって、それを取り囲むように高い城壁が有ってその上にお城があるの」

 なんかとんでもないような街に聞こえるのは私だけだろうか?
 街の、しかもお城のすぐ近くに遺跡がある?
 しかも「落ちてきた都市」なんてどう考えてもやばそうな響きだ。

「後は領内の衛星都市ユーベルトは聖地とされていてそこには女神神殿があって太古の竜、セキ様がいるの!」

「太古の竜? なんか黒龍のコク様みたい」

 ルラはその話を聞いてそう言うとヤリスは目を見開き言う。

「そう、それ! セキ様は黒龍のコク様と対を成す女神様の僕、女神殺しの竜と言われる赤竜と黒龍を従えるだなんてやっぱり女神様ってすごいよね!!」

 えーと、コクさんのエルハイミさん好きは良く分かっている。
 黒龍だけどエルハイミさんの大人バージョンそっくりのあのコクさんと同じ太古の竜って事は……

「あのヤリス、もしかしてそのセキ様とやらも人の姿になれるとか? しかも人の姿になると女性だとか?」

「よく知っているわね。普段は神殿の中にしかいないから人の姿でいるわ。神殿を守るためにずっとそこにいるのよ。私も一回だけ会った事があるけど、なんて言うか、女神様に少し似ているのよね。でも基本的には赤髪だから、伝説のティアナ姫の娘だって言われてるわ」

 ティアナ姫って、確か今は転生してジルの村とかにいて覚醒したけどいろいろ問題があってそれが原因でエルハイミさんとシェルさんが慌ててそこへ行こうとして私たちが巻き込まれて……

「やっぱりエルハイミさんがらみか…… シェルさんも災いを呼ぶエルフとか言われてたけど、そもそもの元凶ってエルハイミさんなんじゃないのだろうか……」

 思わずヤリスには聞こえない様にそう言ってしまう私。
 だってあの駄女神だってエルハイミさんと同じ姿をしてたし、ジマの国の近くの大迷宮でも分体のエルハイミさんも結局とんでも無かったし……

 やっぱりエルハイミさんが全ての元凶なのでは?


「とにかく、リルもルラもガレント王国に遊びに来てよ! 歓迎するわ!!」

 強引なヤリスのそれに私はユカ父さんたちの許可をもらわなければならないと言ってその場はおさめた。


 * * * * *


「まあ、ガレント王国に行くのですの? そんな、リルさんとルラさんには是非ティナの国に来てもらいたかったのにですわ」

 ソルミナ教授の研究室に行ったらアニシス様がいた。
 先ほどの話をしたらアニシス様もグイっと近寄ってきてそう言う。

「私もスィーフの皆さんが私に仕えると言う事で今回はティナの国に一度戻らなければなりませんわ。外交的な手続きもありますし、これだけはやっておかないとミリンディアたちの立場もありますもの」

「あ、アニシス様。あたしたちはもう国とは縁を切ってもいいって言ってるだろう? 一生アニシス様に付いて行きますよ!」

 ミリンディアさんがそう言うと他のエレノアさんやハーミリアさん、クロアさんも力強く頷いてアニシス様に近寄る。
 なんか見えない尻尾がぶんぶん振られている感じさえする。

「まぁまぁ、みんな嬉しい事を言ってくれますわ。大丈夫、あなたたちが望むなら私はずっとあなたたちの主でいますよ、そして変わらず愛でてあげますわよ♡」

「「「「アニシス様ぁ♡」」」」

 駄目だ。
 スィーフのお姉さん方は完全にアニシス様の犬と化している。
 自国を捨ててでもアニシス様が良いとか、何されたのやら……

「だけど、リルたちの保護者である学園長の許可がいるって、ちょっと過保護じゃないの? うちの国に来たらVIP対応で迎えるって言うのに」

 ヤリスはそれでも口をとがらせてそう言う。
 いや、気持ちはうれしいのだけど元々の私たちの目的はこのチートスキルをしっかりと使いこなすのが目的で、その保護者としてユカ父さんとマーヤ母さんがいる訳だから勝手な事は出来ない。

「あら、そうですの? 学園長の許可がいりますの??」

「はい、一応私たちのボヘーミャでの保護者なので」

 私がアニシス様にそう言うと少し残念そうに言う。

「それは仕方ありませんわね。でもできればうちのティナの国にも是非とも来ていただきたいですわ。ティナの国はガレント王国の北方にある小さな国ですが、特殊産業が盛んなうえ絹の下着のメッカでもありますの。来ていただければ当然リルさんやルラさんにぴったりな下着を私が選定して差し上げますわ!!」


 じゅるり


 にこやかにそう言いながら何故かよだれを拭き取る。
 いやアニシス様、そういうのはいいですから!!



「ちょっとあなたたち、夏季休暇で盛り上がるのは良いけどこっちの研究は全然進んでいないのよ? もうじきファイナス長老たちが来るって言うのに!!」

 奥からソルミナ教授の声がする。
 そちらを見ると自分の胸にお椀のようなガラスの容器を付けてすこすこと管の先の丸いものを握っている。

「ソルミナ教授、それは……」

 これ見たことある。
 前世の通販か何かの雑誌で!
 
 女性の胸部に装着してあの管の先のスポイトで中の空気を吸い出し吸引して乳房を大きくする道具!

 まったく効果が無いと言われていて世の貧乳女子の望みを砕いたアイテム。
 謳い文句は素晴らしいのに、その効果なんて全然ない。
 いや、使って少しの間は多少は胸が張った感じがして大きくなったように感じてもまたすぐに戻ってしまうと言うアイテム。

 それをソルミナ教授は乳丸出しで一生懸命にやっている。

「どうですのソルミナ教授、効果を感じますの? はぁはぁ♡」

「どうと言われても、胸を吸われているようで大きくなった感じはしないわね……」

 アニシス様はなんか変な目付きでそれでも言う。

「まだまだ吸い出す力が弱いのではありませんの? 何なら私が手伝いますわよ、ユーベルト産のこの道具ですもの、きっと女神様のご利益があって効くはずですわ! 文官たちの間でも今話題になっていますもの! そう、もっと吸い出すように、いいですわぁガラス越しにエルフの方の乳房が鑑賞できるだなんてですわ♡」

 いやこれきっとアニシス様がソルミナ教授の胸見たいだけなんじゃないの?
 絶対騙されてるよ、ソルミナ教授!

「あの、ソルミナ教授これって効かないんじゃないんですか?」

「それでも少しでも大きくしないと、もう少しで兄さんが来るのよ! 今度こそ兄さんを私のモノにするこの機会を逃す事は出来ないわ!! 待っててね兄さん、絶対にマニー義姉さんより大きくなって兄さん好みのエルフになるから!!」


 すこすこすこすこっ!


 必死にスポイトの空気を抜き出すその鬼気迫るソルミナ教授に私はこれ以上何も言えなくなるのだった。

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