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第十二章:留学
12-42大魔導士杯第三戦目その5
しおりを挟む『はい、そこまでです! 時間が来ましたので各チーム出来上がった【美しき料理】を審査員の前に出してください!』
司会のメリヤさんがそう言って第三戦の制限所間が終わる。
どうやら四チームともお料理は間に合ったみたいで、カートに乗せられてふたを閉められ審査員の前に運ばれる。
って、なんで今回は学園長が審査員の中に?
『それでは順に【美しき料理】を審査してもらいましょう。今回は飛び入りの特別ゲストとして我が学園の学園長にも参加していただきました。さあ我が生徒の料理の味や如何に!?』
疑問に思っていたらメリヤさんが説明してくれたけど、忙しい癖にこう言う所は職権乱用してくる。
喫茶店の時もそうだったしね。
『それではまずはホリゾンチームの一品だぁ!!』
言いながらホリゾンチームの蓋を開ける。
ほわんっ!
そこには大きな器にスープが入っていた。
どうやらシチューか何かのようだった。
表面は少し黄色だけど、そこへ赤いソースのような物が波のように引かれて、朱色の小さな木の実らしきものがふられていた。
器も北欧を思わせるような白地に青で模様が刻まれ、全体的に落ち着きのある。雰囲気だった。
「ほう、これはホリゾン王家でふるまわれると言われる王者のシチューですな」
「北の物資が少ない中、王家だけに食べることが許されたと言うあのシチューですか?」
「これはまた、面白いものを」
審査員の人たちは口々にそう言って何かメモに記入していく。
そして各審査員のお椀にとりわけがされて運ばれる。
「ふむ、気品があるシチューですな」
「寒い国特有のしっかりとした栄養の取り方らしいですぞ」
「どれ」
そう言って審査員の人たちはそれを味わう。
ひと口、ふた口。
そして口をナプキンで拭ってからスプーンを置く。
『さあ、続きましてはボヘーミャチームの番だぁ! さあどんな【美しき料理】になるか!?』
ホリゾン帝国の相手はボヘーミャチームだった。
そう言えば、ここボヘーミャ出身のチームがいたんだっけ?
紹介をされてボヘーミャチームの蓋がとられると……
「これは…… たこ焼きですな」
「ええ、たこ焼きですな」
「たこ焼きですか……」
途端に審査員たちのテンションが下がる。
それもそのはず、ふたを開けたそこにはボヘーミャのソウルフードたこ焼きが湯気を立てていたのだった。
「ふむ、見慣れた物ですが確かにその辺の物とは少し違いますかな?」
「確かに、使っている船はなかなかの作り」
「焼き上げたたこ焼きの表面も滑らかに均一に焼かれていますな」
いや、たこ焼きの外観なんてなんか違いってあるの?
流石はボヘーミャ、たこ焼きへの愛は半端ないのか!?
審査員は何やらメモ書きをしてから取り分けられたタコ焼きに楊枝を突き刺して一気に口に放り込む。
そしてみんな一斉にハフハフしている。
あ、学園長もちゃんとハフハフしている。
「ふむ、食感に関しては見事ですな」
「ええ、しかもこの味付けは『たこ道楽ワナ』に近いですぞ!」
「なるほど、だからソースをかける事無く出てきたのですな!!」
駄目だ、素人に違いが良く分からない。
そう言えば濃い茶色が見えないからソースがかかっていないのか。
となれば確かに見た目がつるりとしているかもしれない。
テンションの下がっていた審査員たちであったが、流石にたこ焼きについて語りだすとテンションが上がり始める。
そしてこのボヘーミャチームのたこ焼きの良い所を探し出す。
これって地元ひいきが結構入るんじゃないだろうか?
『さあ、両チームの【美しき料理】が出た所で、次はスィーフチームだぁ!』
ここで勝敗が決まるのかと思いきや、先に審査員に次のスィーフチームのお料理が紹介される。
がばっ!
ほわんっ!
スィーフチームのお料理の蓋が開かれた。
そしてそこにはなんと魚の頭が飛び出すパイがあった!
なんか生前の世界にあったヨーロッパの伝統料理見たい。
確かスターゲージーパイだったっけな?
「これはまた驚かされますな!」
「確かに見た目のインパクトは凄いですな」
「魚の頭が飛び出しているパイと言うのは確かスィーフの白銀の小魚の卵焼きに並ぶ名物料理でしたな。しかし魚の下処理がしっかりと出来ていないと生臭くなってしまうと言う料理、果たしてこれはどうでしょうな」
審査員の人たちはそう言いながらメモと取って行く。
そして切り分けて審査員に配られようとするとミリンディアさんたちが動き出した!
「これはうまく切り分けないとその美味しさが半減します。切り分けには私たちスィーフチームの者が当たりましょう」
そう言ってお料理の近くにまで行って手際よく切り分け、その取り分け皿を審査員の人たちの所へ持ってゆく。
そう、あの裸エプロンで!!
「どうぞ、皆様お召し上がりくださいな。何でしたら私たちが食べるのをお手伝いしますわよ?」
ミリンディアさんはそう言って色っぽくフォークを掲げる。
これには審査員の方々も動揺の色を示す。
しかし……
「給仕は無用です。あなた方の作ったこの料理、全身全霊を持って味わさせてもらいます!」
学園長はそう言って彼女たちの手からそのお皿を引き取る。
流石に学園長がそう言えば他の審査員も鼻の下を伸ばしていられない。
スィーフチームの皆さんは渋々引き下がるしか無かった。
学園長は手渡された魚パイを口にする。
「ふむ、魚の下処理がしっかりとされていて苦みも無い、小骨もうまく処理されていてわずらわしさも無い。見た目でのインパクトに対してしっかりとした仕事がされていますね」
そう言ってお皿を置き、口元をナプキンで拭き取る。
「見事でした、スィーフチーム」
そう言って他の審査員を見る。
他の審査員も慌てて試食し、各々の意見を述べる。
それを見た学園長は満足そうに軽く頷いたのだった。
『さぁさぁ、それでは最後の料理の登場だぁ! エルフは私の嫁チーム、一体どんな料理を見せてくれるのか? さあこれだぁッ!!』
司会のメリアさんが最後とばかりにテンションアゲアゲでそう言って私たちの料理の蓋を取る。
かぱっ!
おおぉおおおぉぉぉぉ~
途端に歓声が上がる。
そこにはエルフの少女の彫刻がされた白いお皿の上に色とりどりの料理が載せられていた。
それを見た審査員たちは思わずこれに見入る。
「これはまた何とも」
「一体どれだけの料理が載せられているのだ?」
「これは、見ているだけで楽しくなってきますな」
そう言って私たちの料理を見ながら早速何かメモを取り始める。
しかしここで問題が発生する。
今までの料理と違いお皿に載ったものを切り分けるには不便であった。
『これは、とりわけはどうしたものか!?』
「ご心配なく、こんな事も有ろうかとこちらに同じものを作ってあります!」
お子様ランチの最大の問題は大人ならその上にあるおかずを一口で食べきってしまう事だった。
それを試食と言う形で食べるとなれば味を確認できるほどの量に小分けする事は難しい。
なので事前に審査員分のお子様ランチを別皿で作っておいたのだ。
もし余ったら私たちで食べるつもりで。
審査員の方々に私たちのお子様ランチが配られる。
そして審査員の方々はもう一度それを見てまるで子供のような表情をする。
「これはまた、何ともにぎやかですな」
「ええ、近くでもう一度見てるだけで楽しくなってきますな」
「この端にあるのはデザートですかな? いやはや、すべてがこの一皿に有るとは」
そう言いながら皆さん早速料理を口にする。
さくっ!
「ほぉ、これはエビですな」
「ふむ、この隣に置かれた白いソースをつけるとまた格別に旨いですな」
「どれどれ…… さくっ! おお、これは何とも!!」
まずはエビフライなどから食べ始めている様だ。
サクサクのタルタルソースと言う鉄板の組み合わせは絶対に美味しい。
次いで皆さんハンバーグに手を出す。
「ふむ、これは肉のようですが細かくした肉を練ったものを焼き上げているのですな?」
「どれどれ」
「はむっ! おおほぉ、これもまた美味い!」
ハンバーグも大人なら一口だけど、しっかりと作り込んでいるのでその肉汁もたっぷりとある。
審査員の人たちはあれやこれやと言いながらお子様ランチを平らげていく。
と、学園長が最後のプリンに手を出し始めた。
「ふむ、しっかりと裏ごしをして滑らかさを保っていますね。上にかけられたカラメルも苦みが少なく好感が持てます。魔法で冷たくしているあたり、甘味としての配慮も十分ですね」
そう言いながら嬉しそうに食べている。
思わず私は拳を握って心の中で、よっしゃーっ! とかやっている。
『さあ全てのお料理の審査が終わったぞ! 果たしてこの勝負に残ったチームは何処と何処だ!?』
司会のメリヤさんはそう言って審査員たちの集計を持ってきてもらう。
そしてその内容を確かめながら声高々に言う。
「さあ、まずはホリゾンチームとボヘーミャチームの結果だぁっ! いいですか、行きますよ!? 勝者…… ホリゾンチーム!!」
おおぉおおおおぉぉぉっッ!!!!
これは意外にも地元のボヘーミャでなくホリゾンチームが勝者となった。
メリヤさんは続けてその内容を読みあげる。
『はい、これは審査員の方々もかなり悩んだようです。【美しき料理】のコンセプトに対して、見た目だけでは僅差でありました。しかし決定打はその伝統の中にあるものだと言う事らしいです。曰く、素材では確実にたこ焼きが上であったが貧しい北の大地に根付くどうにかしてそこにある素材だけで美味しく、そして栄養のとれる食事を作るかと言う心意気に勝敗が決まったようです。勿論たこ焼きのその技、洗礼された味付けも決して負けてはいないものの素材の良さが素材同士の味のぶつかり合いをしてしまい、わずかにそこへの雑味が感じられたとの事でした』
おおおおぉぉ~
司会のメリアさんのその説明に会場一同が唸る。
流石に審査員、学園長張りにその料理に対する目線は厳しい。
私がボヘーミャチームを見ると皆さんがっくりと膝を落し悔しがっている。
「くっ、とろろと昆布の合わせ技が裏目に出たか! いや、カツオといりこだしの配分か? くぅ、策士策に溺れたか! 旨味の掛け合いが裏目に出るとは!!」
なんかものすごく悔しがっているみたい。
いや、確かにボヘーミャのたこ焼きはレベルが高いよ?
しかしそこまでのこだわりがあったとは……
『さあ、続きましてスィーフチームとエルフは私の嫁チームの勝敗だぁ!!』
司会のメリヤさんの次の言葉に私たち一同は唾を飲み込むのだった。
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