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第十二章:留学

12-33大魔導士杯第二戦目その4

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「くっ! ハイリスこの場から私たちを引っ張って!」


 現在ホリゾンチームと魔道研究チームは【重力魔法】の力場に捕らえられ身動きを封じられている。
 その中で唯一獣人であるホリゾンチームのハイリスさんはかろうじて動き回れている。

 七人中ハイリスさんと言うオオカミっぽい獣人族の女性だけがじりじりとその先に行ってその力場から脱出する。


「ミラーナ、ラッシュ!!」


 すぐさまハイリスさんは呪文を唱え魔法のロープを発生させて仲間にそれを投げつける。
 魔法のロープを投げつけられたホリゾンチームの残り二人はそれにしがみつくとハイリスさんがその魔法のロープをぐっと引っ張る。
 そして重力の力場から仲間を助け出す。


「チャンスよ、みんなこのままゴールへ向かうわ!!」

 リーダーらしいミラーナさんはそう言ってすぐに駆け出す。
 魔道研究チームは未だ重力の枷に苛まれて動きが取れてない。

「くそ、ラドラ【強化魔法】をかけるからお前だけでもゴールを目指してくれ!」

 魔道研究チームのリーダーであるロベルさんはそう叫んで高速で呪文を唱える。
 そして【強化魔法】をかけられたラドラさんはその重力場から立ち上がりすぐさま走り出す。

 両チーム仲間が脱落している中ゴールを目指す。


『さぁ、仲間が脱落する中ホリゾンチームが残り三人、魔道研究チームが一人になったぞ! しかしこの勝負、チームの誰か一人でも先にゴールすればそのチームの勝ちです、まだまだ結果は分からないぞ!?』

 司会のアナウンスが入り、観客席からも歓声が上がり始める。

 勝負はまだついていない。
 先行するホリゾンチームは獣人族のハイリスさんが大きく先行をしている。

 が、ここで三つ目の障害だ!
 それはロープが何本もぶら下げられたもので、浮いている足場が無い。

 プールに入って進んでも失格にはならないけど、海洋生物の洗礼を受ける可能性がある。
 となればあのロープ伝いで移動するしかない。
  
 先行するハイリスさんはすぐにそのロープに飛びつく。
 そして体を振って振り子のように勢いをつけて隣のロープに飛び移ろうとしたその瞬間だった。


「な、なにこれっ!? ちょ、絡む!!」


 飛び移ろうとした途端にそのロープや他のロープがハイリスさんに絡み付いて来た!

「うわっ、まるでロープが触手のようね」

「あ、あれは! 何と言う締め付けですの!? しかもあの縛り方は正しく伝説の『至高の拷問』、亀の甲羅縛りでは無いのですの!?」

 もがくハイリスさんを吊るされたロープたちが次々と絡み付き、何時しかハイリスさんは両手両足を背に完全に吊るされてしまった。

「くうぅ、な、縄が食い込むぅっ!」

 それはスレンダーな彼女の肢体をものの見事に縛り上げ、控えめな胸だって縛り上げられた事により大きく見えるほど縄が食い込んでいる。
 そしてその縄はハイリスさんの下半身もしっかりと締めあげている!!


「くぅううぅぅぅ、駄目ぇ、そこ食いこんじゃ駄目なのぉっ///////」


 ぶら下げられている状態でギリギリと締め付けられているハイリスさん。
 心なしかその顔も赤く染まっている。
 きっと苦しんだろう。
 うん、そうに違いない。


「ハイリス! く、こうなったらあのロープを断ち切ってハイリスを助け出すわよ! ラッシュ合わせて!!」

 哀れな姿に拘束されているハイリスさんを助けるべくミラーナさんとラッシュさんが呪文詠唱に入る。
 しかし魔力が高まりもう少しで呪文が完成する時だった。


 ばしゃっ!
 びゅっ、はしっ!


「きゃっ、なにこれっ!?」

「うわっ、魚が襲って来た!?」

 見れば海水プールから次々に魚が飛び出てる。
 その魚は胸びれがやたらと長いトビウオにも見える。

「何あれ!?」

「あれは…… 南方の海に生息すると言われている『くっつきトビウオ』のようですわね。大型の動物にくっついて長距離を移動すると言われていますわ」

 確かにトビウオっぽいけど、そのお中には何やら蟹の足みたいなのがついていて一斉にミラーナさんたちにくっついている。

「ちょ、ちょっと何処に張り付いているのよ!? そこ駄目だって、いやぁ水着引っ張っちゃダメぇっ//////!」

「うがぁ、やめろ、海パンに引っ付くな、引っ張るなぁ、食い込むわッ!!」

「きゃーっ! 止めてぇ、ただでさえ縄で縛られていて身動き取れないのに、そんな所に引っ付いちゃ嫌ぁっ//////!!!!」


 おおおぉぉおおおぉぉぉぉ~


 ハイリスさんを助け出そうとしたホリゾンチームの面々に次々と引っ付く引っ付きトビウオ。
 なんであんなに……
 そんな様子に観衆も声を上げる。
 それも嬉しそうに。


「くっ、確かこいつらは群れを成しているから群れのいない場所へ行けば…… 仕方ない、プールを進むしか無いか!」

 どうやら後から追いついた魔道研究チームのラドラさんはこのチャンスにホリゾンチームを出し抜こうとする。
 そしてたくさんのくっつきトビウオが飛び交うコースから離れ、プールに入り先を進もうとする。


「あがっ!?」


 だが、半分くらいまで行って変な声を上げてその場で倒れてどざえもんになる。
 ぷかーっと水面に浮いて身動きが取れなくなっている?


『おおっと! 魔道研究チームどうしたのか? いきなり動かなくなったぞぉ!?』


 ざわざわざわ


 そのいきなりの事に観衆もざわめく。
 一体何が起こったのかよくよく見ると水面に何か半透明の白っぽーものがぷかぷか浮いている。

「あれは…… もしや痺れクラゲですの? 刺されると体が痺れてしばらく動けなくなると言うボヘーミャの近海にいるクラゲですわ!」

 アニシス様の話では痺れクラゲらしい。
 不用意にプールに入ると今度はクラゲが襲ってくるかもしれないのか、これはまた厄介な。

「くっぅ! いい加減にしなさいっ! 【紅蓮業火】!!」


 ぼんっ!


 くっつきトビウオにたかられていたホリゾンチームのミラーナさんは呪文を唱えるとその体から一気に炎の柱が立ち上り、くっつきトビウオを弾き飛ばす。そして手をかざし捕らえられているハイリスさんの縄を焼き切る。


「はっ!」

 ぶぎゅるっ!


 ハイリスさんは縄がほどけると同時に体にまとわりつくモノを引っぺがし、プールに浮いているラドラさんを踏み台にして対岸へと渡る。


「ハイリスそのままゴールに向かって!!」

「ミラーナ。分かった!!」


 ハイリスさんはそのままゴールに向かって走り出す。
 そしてそのままゴール!


『勝者ホリゾンチーム!!』


 わぁああああぁぁぁぁぁ!

 
 最後はあっけなかったけど、ハイリスさんがゴールする事でこの勝負は終わった。
 しかしこの第二回戦、何なのよ?

 私は戦慄を覚えながらアニシス様とヤリスを見る。


「ぐふふふ、この試合もしかしたらリルとルラのあーんな姿やこーんな姿が見られるかもしれないわね!」

「うふふふふふ、楽しみですわぁ~。リルさんとルラさんの悶える姿が見られるかもしれないだなんてですわ~」


 いやいやいや、あなたたちもこれに参加するんですよ?
 もしかしたら自分があんな目にあっちゃうかもしれないんですよ?

 大丈夫かこの二人?



 そんなこと思う私を他所に第二戦目が始まるのだった。
 
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