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第十二章:留学
12-7クラスメート
しおりを挟むヤリスと自己紹介してきた美少女は年の頃十五、六歳位に見えた。
「よろしくね~。あたしルラね」
「よろしくお願いします、リルです」
改めて挨拶すると彼女は嬉しそうに頷く。
「うん、よろしく~」
屈託のない笑顔を見せてくれるのでこちらの緊張もほぐれる。
そして授業が始まるので大人しく教壇の方を向いて真面目に勉強を始めるのだった。
* * *
「ねぇねぇ、リルさんにルラさんってエルフの村から来たんだよね? やっぱり何百歳とか?」
「へぇ~、エルフでも双子っているんだ~」
「人間の街って初めてかな?」
わいのわいの。
お約束の転校生イベントで女生徒たちが集まって来てあれやこれやと聞かれる。
ルラあたりはにこにこしながら答えてるけど、私たちが生まれて十七年しか経っていないと言うのが一番驚かれた。
「エルフって、人の街に出てくるのはみんな二百歳を超えた人ばかりって聞いてたけど、本当に十七歳なんだ!?」
「十七歳って言っても私たちとあまり変わらないね?」
「ソルミナ教授って何千歳も年取ってるって聞いたけど、本当?」
色々と聞きたいのは分かるけど、どうして女子ってこう転校生に質問攻めするのだろうか?
「はははは、エルフって最初は人族と同じ位の速度で成長して私たち位になるとしばらく外観も変わらないらしいですよ。多分二百歳位超えないとこれ以上の変化はないとか聞きましたけど」
私がそう答えるとみんな黄色い声をあげる。
「うらやましいぃ! じゃあずっとその可愛らしい姿のまま!?」
「いいなぁ、何百年もそのままだなんて!」
「一番可愛い時期に成長が止まるだなんて羨まし過ぎ!!」
そうですよね~。
花の女子高生で成長がしばらく止まっているのって確かにもの凄いアドバンテージですよね~。
しかもこの学園の制服可愛いからしばらくこれが着られると思うとかつての女子高生魂が燃えると言うもの。
生前出来なかったあーんな事やこーんな事しまくってかつての青春を取り戻すのだ!!
「うーんでもさぁ、あたしたち成長止まるとお姉ちゃんじゃないけどなかなかおっぱい大きくならないんだよねぇ~」
「はうっ!」
おいこらルラ、人がせっかくテンション上げていると言うのになんて事言うのよ!!
私は思わず自分の胸を隠してしまった。
そしてあまり気にしない様にしていたけど周りのみんなの胸をチラ見する。
ぼんっ!
ばんっ!
どどんっ!!
「ぐぅっ!!」
なんか色々と刺さって来た。
分かってはいたけど、何なんだこの世界!
みんな美少女で胸が大きいのがほとんど!!
しかも見た目は十五、六歳っぽい若い人がほとんだと言うのに!!
「ああ、そう言えばエルフ族ってその、スレンダーな方が多いって話よね?」
「ソルミナ教授も大人のわりにねぇ~」
「何でも人によっては男性だか女性だか分からないほどの胸の方もいるとか……」
自然とみんなの視線が私の胸に集まる。
「神は二物を与えずか……」
誰かがボソッとそう言う。
思わず顔を赤くして自分の胸を隠してしまう私。
「そ、そのうちきっと大きくなるんですってば、絶対にぃっ!!」
私の空しい叫び声が教室にこだまするのだった。
* * *
「はぁ、終わった……」
「なんかよく分からないよ~」
久しぶりの授業は魔力についての解説だった。
今まで意識せずに使っていたそれは実はそれ自体がとても特殊なもので、生物は全てがその魂の内から魔力を生み出しているそうな。
魂の中に「魔素」と呼ばれるものがあり、それが「魔力」になって湧き出て万物を成型する「マナ」に作用して魔法が発動すると言う過程を行っているのだとか。
魔力はマナに作用するわけだけど、マナは全ての物質に存在するもので極端な話、マナを分解して魔力に変換する事も出来るそうな。
分かりやすく言うと水に例えられる。
自分から魔力と言う水を流し込み、固まっている氷を溶かし、水蒸気に変えたり氷にしたり、水にして流し出したりとする感じだとか。
言われてみれば【水生成魔法】なんか呪文を唱えながら手に魔力を流して水のイメージを明確にするとその流れた魔力が水に変換されて水球になる。
精霊魔法についてもソルミナ教授は少し話してくれた。
エルフは樹木と精霊から女神様が作った種族と言われている。
ドワーフも同じく岩と精霊からできているらしく、亜人と呼ばれる私たちは土より作り出された人族とは使われた素材が違うらしい。
なので精霊たちに近いのでエルフ語で精霊たちに魔力のこもった言葉で語りかけると、魔力と引き換えにその力を貸してくれる。
だから人族は精霊使いが少ないのだとか。
「どうだった? 授業で分からない所があれば教えるけど?」
今日の授業の事を考えていたら隣のヤリスさんが話しかけて来る。
「うぇ~ん、よくわからなかったよぉ~勉強きらいぃ~」
「こらこらルラ、まだ初日でしょうに。ありがとうございます、ヤリスさん。何とか付いて行くよう頑張りますよ」
「ヤリスでいいよ、ここでは私だって一人の学生でいられるのだもの」
そう言ってにっこりと笑う。
そして手を出し握手を求める。
「エルフのお友達は初めて。仲良くしましょ」
「はい、それじゃ私たちの事もリルとルラでお願いします」
私とヤリスはそう言ってにこやかに握手をするのだった。
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