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第十二章:留学

12-6転入

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 なんだかんだ言って学園長にも制服姿を見せたら心なしか喜んでいる様だった。


「よろしい、リルにルラはまず座学で魔法について勉強してもらいましょう。精霊魔法もスキルも魔力の根源となる魔素を使います。残念ながら私にはその魔力がほとんどなく、魔法自体が使えません。『心眼』を使い魔力の流れとマナの流れを操作して疑似魔法は使えますが、周りの魔力を利用しなければ出ません。しかしあなたたちは違う。莫大な魔素と魔力の流れを感じます」

 そう言ってあの目元だけを隠していた仮面を外す。
 そこに現れたの完全にヤマトナデシコ。
 黒髪に整った顔つき。
 ものすごい美人だった。

 しかしゆっくりと開いた眼の色を見て驚く。


「瞳が…… 金色に輝いている? シェルさんやエルハイミさんと同じ?」


「これが『同調』状態です。この世界の住人は魂から出て来る魔力をマナに作用させ魔法を使います。しかしその体と魂の結合が完璧でない。この『同調』は魂と体の結合をしっかりと出来た状態。こうする事により魔力の流れやマナ事態を見とれるのです。それが魔術の奥義となり、精霊魔法も同じ原理となります」

 学園長はそう言って瞳の色を日本人独特の黒い色に戻す。
 それは深い澄んだ黒い色。
 私たちエルフの深い緑の色とはまた違う美しさを持っていて、肌の白さも加わって吸い込まれるような感じさえする。


「うーんと、つまりあたしたちもそう言った事勉強するわけだね、ユカ父さん」

「う”っ、ル、ルラ、普通にユカ母さんでも良いのですよ?」


 あ、なんかダメージを受けている?
 もしかしてユカ母さんと呼ばれたいのかな?

「ユカはやっぱり『お父さん』だよね~。でもユカの言う通り、精霊魔法も根源は同じ。私たちが目に魔力を集中して精霊を見ているのは精霊も元をただせば魔素と魔力の塊だからね。それがああいった形をしていて、言霊に魔力を載せてお願いをする事により精霊魔法が使える訳よ。だからこう言った事も出来るの」

 横でそんな話を聞いていたマーヤさんはいきなり手の平に光の精霊を呼び出した。


 ふわんっ!


「えっ!? 精霊に語り掛けていないのにどうして!?」


「これが『同調』の力よ。理を知り、理を操る。そうすると精霊に語り掛けたり呪文を唱えなくてもこの位の事は出来てしまうの。それが女神様のお力の秘密なのよ。でも普通は簡単に行かない。だから口から言霊で魔力を載せた、イメージをした詠唱でその奇跡の力を発揮する、これが魔道の奥義なんだって」

 マーヤさんにそう説明されてもまだ実感がわかない。
 精霊魔法はエルフ語で精霊たちにお願いをしてその代価として魔力を与える。
 エルハイミさんに習った簡単な生活魔法は、呪文を唱えイメージをすると誰でも出来ると言うモノで、魔法の基礎と言われたけど無詠唱で出来る自信は無い。

「うーん、上手くいかないね~」

 ルラは隣で一生懸命マーヤさんの真似をして見るけど光の精霊は召喚できていない。


「故に先ずは座学からきちんと学び、魔術の基礎を覚える必要があるのです。そして最終的にはあなたたちのそのスキル。エルハイミと同じく女神の力を超える所から来ているその力、決して乱用せず己の内で確実に制御できるようにならなくてはなりません。良いですか、その力は下手をするとこの世界自体を滅ぼす事も出来る力なのです」

 いや、そんな大層なもんじゃないとは思うんだけど……
 でも確かに私の力、「消し去る」なんて冷静に考えると何でも消せてしまっているみたいだし気を付けるに越したことはないだろう。
 何せ物理的以外にも記憶とかも消せると言うトンでもスキル。
 使い方によっては確かにやばいのかもしれない。


「はーい分かりました、ユカ父さん」

「ぐっ! ル、ルラ、ユカ母さんでも良いのですよ……」


 どうも学園長は「ユカ父さん」で決まりのようだ。
 でも取りあえず私は「学園長」呼ばわりにでもしておこうかな?

 ルラと学園長のそのやり取りを見ながらそう思うのだった。


 * * * * *


「はい、それでは今日から皆さんと一緒に勉強をする二人を紹介します。エルフの村から来たリルとルラです」


 なんだかんだ言って翌日から転入が始まった。
 本来は入学試験があるらしいけど、学園長権限でそれらは免除された。
 精霊魔法もちゃんと使えるし最低限の生活魔法も使えるので基本的には問題無いとの事だ。

 そして今日からこの初等科に転入してお勉強の始まりである。

 ちなみに、私たちの担任になる教授は同じエルフ族でソルガさんの妹、ソルミナさんであった。
 昨日学園長とマーヤさんに連れられてソルミナさんの研究所に行ったのだけど、何と風のメッセンジャー作ったのがこの人だとか。
 その他天候の予報を知るアイテムとか水を生成する魔法の壺とか結構いろいろなものを作っているらしい。
 そしてお母さんの古い友人だとか。


 * * *

「くぅっ! レミンにこんなかわいい子供が出来ただなんて!! ここはやはり私も兄さんを襲って私も子供を作ってしまい既成事実を!!」

「ソルミナ、まだソルガの事諦めていないの? ソルガとマニーが分かれることはまずないし、風の噂ではまた子供が出来たって聞いたわよ?」


 なんかここへ来てもの凄い事を連続で聞かされているような気がする。

 学園長とマーヤさんは女どうしなのに子供を欲しがっている。
 これはエルハイミさんが関わるので、まあ女神様だし、めしべとめしべでもあの人が関われば何とかなるらしいと言う事で無理矢理納得した。

 しかし今度は一応男女ではあってもソルガさんとソルミナさんは兄妹と聞いている。
 それも血の繋がった実の兄妹。


「あの、マーヤさん。ソルミナさんが言っているソルガさんってお兄さんのソルガさんですよね?」

「ん? そうだけど??」

「きょ、兄妹でその、そう言った事ってまずいんじゃないんですか?」

「あ~、子供? まあエルフって稀に近親者同士でつがいになる事もあるからね~。確かに親兄弟と一緒になりたいってのは稀だけど、過去にもそう言ったつがいはいたからね。人間界だとまずないらしいけど、エルフだと何千年かに一人くらいソルミナみたいのが出るのよね~」

 それを聞いて私は目を丸くする。
 いや、それって倫理上まずいんじゃないの?


「え、えーと近親者で子供を残すと身体的に問題が出るんじゃ……」

「うん? そんな話は聞いた事無いわよね? ああ、そう言えば人族にはそう言うのあるらしいけどエルフ族だとそう言った事は無いみたいね。多分草木が自己受粉するのと同じくエルフも半分は樹木から出いてるって言われているしね~」

 そうあっけらかんと言うマーヤさんに驚かされたものだ。


 * * *


「それじゃ、自己紹介して」

 大学の講堂みたいに後ろの席に行くほど高くなっているその教室の一番前、一番低くなっている教壇から私とルラは教室を見渡して自己紹介を始める。


「えっと、エルフの村から来ましたリルです。どうぞよろしくお願いします」

「ルラだよ! よろしく~」


 ルラと二人で教室に向かってそう言いながら頭を下げる。
 大体教室は二十人ちょっと位いたかな?
 みんな私たち位の年齢っぽく、成人したばかりの人が多いみたい。 

 そんな事を思っていると途端にさわさわと小声が聞こえてくる。


「はいはい、それじゃぁリルとルラの二人はあの辺の空いている席に座って。授業を始めますよ~」

 ソルミナ教授はそう言って私たちを空いている席へと行かせる。
 私とルラはそこへ座ると隣に座っていた女の子が小声で挨拶をして来た。

「こんにちは、えっと、リルさんとルラさん。私はヤリス。よろしくね!」



 にっこりとそう笑う青髪で深い赤っぽい瞳の美少女がいたのだった。 

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