上 下
243 / 437
第十一章:南の大陸

11-26確認

しおりを挟む

 そこは「緑樹の塔」と呼ばれる場所だった。


 驚いたのがこの精霊都市ユグリアにはたくさんの人種の人がいた。
 人族は勿論、ドワーフやリザードマン、草原の民らしき人もいる。


「凄いねお姉ちゃん、いろんな人がいるね!」

「う、うん。でもエルフの村のすぐ近くでこんなに沢山の種族の人たちがいるだなんて……」

 きょろきょろと周りを言ているとお母さんは説明をしてくれる。

「ここはね、エルフ族が外界とつながりを持つために作られた街なのよ。エルフの村ではなかなか手に入らない鉄製品とかをエルフ族が作った魔法の道具と交換するのが始まりだったって聞いてるわ。でもそのうち冒険者がその話を聞いて集まり始めるようになっていろいろな人たちが訪れる街になったのよ」

 お母さんはそう言って懐かしそうな眼をしてその街並みを見る。
 お父さんはそんなお母さんを見て苦笑する。

「レミンは昔冒険者をしていたからね。君を追って僕も外の世界に出る羽目になったんだけどね」

 お父さんはそう言ってお母さんと同じく街並みを眺める。
 
 なんですと?
 お母さんが冒険者していただなんて初耳。
 それにお母さんを追ってお父さんも外の世界に出ただなんて、ちょっとその辺お話を詳しく聞かせてちょーだいっ!!

 思わず目を輝かせてお母さんとお父さんのなれそめを聞こうとするとソルガさんが声をかけて来た。


「着いたぞ、みんな少しここで待っていてもらえるか?」

 そう言って一階のフロアーに入る。
 気付いたらもう塔についていたんだ。
 ソルガさんはズカズカと歩いて行って奥にあるカウンターで何やら話し込んでいる。

 私たちはフロアーでしばし待つけどここにもいろいろな人種の人がいる。

「よし、大丈夫だ。ファイナス長老のいる部屋に行くぞ。ついて来てくれ」

 そう言ってソルガさんは私たちを階段の方へと呼び寄せるのだった。


 * * *


「はぁはぁ、やっと着いた……」


 結構上の階だった、ファイナス長老がいる部屋は。
 この「緑樹の塔」って思いの外高い塔だった。
 多分二十階分は上ったと思う。
 
 この世界にはエレベーターなどと言うものは存在しない。
 だから上の階に行くには階段を上らなければならない。

「お姉ちゃん大丈夫?」

 一緒に上って来ていたルラは平然としている。
 それどころかお母さんもお父さんも。
 もしかして私って部運動不足??

 そんな事を思っているとソルガさんは扉を叩く。


 こんこん


「ソルガです、リルとルラを連れて来ました」

「お入りなさい」

 ソルガさんは扉越しにノックして名乗ると部屋の中から女性の声がする。
 この声、間違いなくファイナス長老だ。
 
 ソルガさんは扉を開け「失礼します」と言いながら入っていく。
 私もルラもその後を追って部屋に入ると部屋の奥の机にファイナス長老は座っていた。


「ファイナス長老、二人を連れて来ました」

「ご苦労様です、ソルガ。おや? レミンとデューラも一緒でしたか」

 言いながらファイナス長老は机から立ち上がる。
 そしてすぐ近くのソファーに座っていた女性の方へ歩きながら私たちを手招きする。


「リル、ルラよく無事で戻って来てくれました。レミンやデューラも二人が戻って来てさぞかし安心したでしょう。二人の事は渡りのエルフたちからもいろいろ聞いていました。さあ、こちらへいらっしゃい」

 ファイナス長老がそう言ているとその女性は立ち上がってこちらに向かって軽く会釈する。
 しかし私とルラはその女性にちょっと驚く。

 目元はマスクで隠しているけど、どう見ても東洋人。
 いや、その物腰や会釈する様子は完全に日本人のそれだった。

「紹介します、こちらは英雄ユカ・コバヤシ。魔法学園の学園長でもあります。私の古い友人です」

「ユカ・コバヤシと申します」

 そう言ってその目元をマスクで隠した黒髪に白い肌のどう見ても十七、八歳くらいの人は今度は深々とお辞儀をして来た。
 しかも角度四十五度で両の手を前に軽く合わせての完全な日本式のお辞儀。

 思わず私も慌てて同じように挨拶する。


「あ、リ、リルと申します」

「えっと、こんにちはルラです」


 ルラも私に合わせて同じように挨拶をする。
 すると彼女は顔をあげてにっこりと笑う。


『もしかしてこの言葉も分かるのではないでしょうか? だとするとあなたたちのそのチートスキルも納得で来ますわね』

 
 に、日本ごぉっ!?


 思わず呆気に取られてしまった。
 勿論ルラも。


「日本語だ…… 久しぶりに聞いたねお姉ちゃん!」

「え、あ、ど、どう言う事なんですか??」


 驚いて入るモノの私たちは慣れたコモン語でそう言ってしまう。
 するとその女性は不思議そうに今度はコモン語で聞いてくる。

「おや? 日本語は忘れてしまいましたか? しかしそちらの子は『日本語』と言っていましたね、どうやら間違いは無さそうですね」

 そう言ってファイナス長老を見る。
 するとファイナス長老は大きくため息をついてから言う。

「やはりそうですか。今までの話を総合するとやはりそうだったのですね? リル、ルラ、あなたたちは異世界からの転生者なのですね?」



 そう言うファイナス長老に私とルラは思わず固まってしまうのだった。 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

TSしちゃった!

恋愛
朝起きたら突然銀髪美少女になってしまった高校生、宇佐美一輝。 性転換に悩みながら苦しみどういう選択をしていくのか。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

新しい自分(女体化しても生きていく)

雪城朝香
ファンタジー
明日から大学生となる節目に突如女性になってしまった少年の話です♪♪ 男では絶対にありえない痛みから始まり、最後には・・・。

処理中です...