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第十一章:南の大陸
11-11怨念
しおりを挟む私が見たそれは透明な卵と言う表現がぴったりだった。
ちょうどローストビーフ丼のお山のてっぺんに生卵を落としたような感じでそびえたつ。
そしてその中に女性のシルエットが見える。
髪の毛がメデューサのようにウナギのようなものがうねうねと束になっていて、全裸の肌も何となく田ウナギの肌と同じような色をしている。
「なんなんですかあれは!?」
「お姉ちゃん、あの人動いてる!!」
『むう、人でもリザードマンでもないな……』
透明な殻の中にいたその女性らしき人物はふるふると震えて手足をゆっくりと動かし始める。
そして目を開くと真っ赤なその瞳がぎょろりと動く。
『我ここに復活せり! 下僕共よ、今こそ復讐の時だ!!』
そう言って両の手を広げるとあの透明な卵のような殻が割れて羊水のような水が流れ出す。
それは空気に触れて久しくしていなかった呼吸を始める。
「あれってまさか『田ウナギ女伝説』の放置されたって子供!?」
「うわぁ~、お肌ぬめぬめ~」
『そうすると、田ウナギと人の合いの子か!?』
まずい、聞いた話では母親は出産後死んでしまい赤子であったその子供は放置されたままになってたはず。
運良く生き残っても人からもリザードマンからも見放されていただろうその人生はきっと良いモノでは無かったはず。
もし生き残ったとしたらそれらを恨んでいるかもしれない。
「復讐の時って言ってたわ、まさかスィーフの街にあの田ウナギたちをけしかけるつもり!?」
もしあれだけの巨体の田ウナギが街になだれ込んだら大騒ぎになる。
しかも雑食らしい田ウナギはパキムさんを食べようともした。
あんなのが街中に入られたら住民が襲われるかもしれない。
「ちょっと、そこの人! あなたは何者で何に復讐をしようとしているの!?」
私は大声で彼女に質問をする。
話し合いで済むならそれが一番いい。
私の大声に彼女はこちらに気付きじろりとその赤い瞳を向ける。
『エルフか? 我に何用じゃ?』
「あなた、田ウナギ女伝説の人なの? 復讐するって言ってたけど一体何を復讐するのよ!?」
『田ウナギ女じゃと? 失礼な、我はヤツメウナギ女じゃ!!』
そう言って彼女は更に身体のあちらこちらに赤い瞳を開く。
「「『な、何だってぇーっ!?』」」
思わず私とルラ、そしてパキムさんの声が見事にハモる。
いやだって、今ここに集まっているのは田ウナギたちでそこにあった祠は田ウナギ女の伝説を残したものだったのじゃないの!?
唖然としながら彼女を見ると確かに八つの目のような物があった。
「え、ええとぉ、じゃあヤツメウナギ女さんは一体何に復讐をしようと言うのですか? それにこの田ウナギどもって何でここに集まっているんですか?」
『ふむ、まあよかろう。エルフ族とはその昔共に戦った仲じゃて、教えて進ぜよう!』
「はいっ!? その昔一緒に戦ったぁ?」
何それ聞いてない!
エルフの村にいた時もこんなにょりょにょろとしたヤツメウナギ女と一緒に戦ったと言う話は聞いた事がないわよ!?
私は呆然としながら彼女の話を聞き始める。
『あれは女神様たちがそのお美しさを競い合い始めた頃の話じゃ……』
そう言って彼女はそれはそれは長いお話を始めるのだった。
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