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第十章:港町へ

10-22四角関係?

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 海獣である一角獣が実は人語をしゃべりそして理性的だったと言うのは驚かされた。
 そして身の上話で航行する船や討伐隊に被害を与えた張本人であるセイレーンとマーメイドの問題を何とかしないといけない運びとなってしまった。


「とは言え、一体どうしたものやら……」

 私は一角獣とセイレーン、マーメイドを見比べ悩む。
 するとルラが聞いてくる。

「この一角獣ってオットセイが好きなんでしょ? じゃあそれをあの二人に言ってやればいいんじゃない?」

「いや、そうしたらそのオットセイがどうにかなってしまうんじゃないかと心配で……」

 女の争いは時になりふり構わなくなる。
 好きな人を奪い合って思いが通じなければその好きな人を刺して自分も死のうとか極端な例もある。

 ましてや航行する船や討伐隊を撃滅させた二人だ。
 穏便に事を運ばせないとこちらにも被害が来そうだし。

 そんな事を考えていてふと私はそのオットセイについて気になった。


「ねえ、そのひとめぼれしたって言いうオットセイってどんなの?」

『ふむ、では語ってやろう彼女のすばらしさを! まずその愛くるしい瞳、うるんだまなこはかわいらしく我を映し、口元の髭は柔らかく流美にそろっておってな、更に美しい肌はその豊満な肢体を包みこう、ぷりぷりとしておってなぁ~』

 一角獣はそれはそれは嬉しそうにそのひとめぼれしたオットセイの彼女について語り始めた。
 それも延々と一時間近く。
 
 勿論その間あっちの女の言い争いも一向に終わる感じはしない。

 私は一角獣のお惚気と頭が痛くなるようなヒステリックな女の言い争いにいい加減うんざりしていた。


『と、言う訳で我が今まで出会った中であれほど美しく愛おしい雌はいなかったのだよ!!』

 ぐっとこぶしを握るような雰囲気が伝わって来る。
 そしていまだ鼻息荒い一角獣はドヤ顔で水面から顔をこちらに向けて笑う。


 ざばぁ~っ!

 びんっ!


「うわぁ、立派で硬そうでおっきぃ~」

「いや、ルラ言い方ぁっ!」


 今まで水面下にいたのがいきなりこちらに顔なんか向けるから特徴である一角も船のマストと同じくらいにビンビンに立ってしまう。
 
 しかしこれがまずかった。
 一角獣のその存在が皆さんにもバレた。


「なっ!? 一角獣だと!?」

「いつの間に!!」

「大砲、大砲を早く!!」


 もともと一角獣の討伐を考えて来ていたデーヴィッドさんや水夫の皆さんは大慌てで大砲の準備をする。


「待ってください! この一角獣は会話が出来ます!! 皆さん落ち着いてください!!」


 私は慌ててそう言って皆さんに落ち着くよう言う。
 そして一角獣にもすぐに敵意が無い事を証明させる。

「一角獣! 皆さんに敵意が無い事を説明して!!」

『ふむ、わかった。こちらに危害を加える意図は無い。落ち着かれよ人間たち』

 一角獣がそう言って大きな口を開けると皆さん思わずその場に座り込んでしまうほどの迫力があった。
 なんか竜の咆哮みたい。


「一角獣よ! 何処へ行っておったのだ!? はよう我を娶ってくれぬか!?」

「一角獣様、私こそあなた様の伴侶にふさわしき者! あなた様は私が必要と言ってくださったではないですか!?」


 当然あの二人も一角獣がここへいる事に気付いた。
 そしてあのうるさい喧嘩をやめてすぐにこちらに来る。


『ぬううぅ、人間よ後は頼む!』


「いやちょっと!」

 一角獣はそう言ってまた海の中に潜り込もうとする。
 まさかこの面倒そうなセイレーンとマーメイドを放って逃げる気か!?

「あたしは釣りも『最強』!!」

 しかしとっさにルラが近くにあった釣り竿を振って一角獣に針をひっかけカツオの一本釣りの如くその巨体を吊り上げる。


『ぬおっ!?』


 「「「うわぁああああぁぁぁぁぁっ!」」」


 釣り上げた衝撃でこの船が大きく揺れる。
 不幸中の幸いはそれで転覆して沈まずに済んだと言う事かな?

 でもルラのスキルって何なの?
 あんな細い竿と糸でこの船よりデカい一角獣を一本釣りしちゃうなんて!


 ばしゃぁ~ん!

 ひゅ~~~ん


 どがぁ~~~~んッ!!


 哀れ一角獣はその巨体を宙に浮かせそしてオノゴロン島に水揚げされてしまう。


『ぐはっ!』


「一角獣よ!」

「一角獣様っ!!」 

 慌ててセイレーンもマーメイドも島に向かっていく。

 そしてまだ揺れている船にへばりついている私はルラに文句を言う。


「ちょっとルラ! いくら何でもいきなり危ないじゃないの!!」

「ん~、でも一角獣は逃がさないですんだよ? さてっと!」

 そう言ってルラはひょいっと岬に飛んで行ってトタトタと一角獣の方へ行く。


「駄目じゃない、逃げちゃ。ほら、この二人にちゃんと誰が好きか言ってあげないといつまでたってもオットセイと仲良くなれないよ?」

『は、初めてだ…… こんなの……』

 陸に引き上げられた一角獣はごろんとこちらを向いてルラを見る。
 そして……


『惚れた、我と結婚してくれ!!』


 はぁっ!?

 何いきなり突拍子もない事言い出すのよこの海獣!?


「ん?」

 
 一角獣を前に首をかしげるルラ。
 そして一角獣のその言葉に固まるセイレーンとマーメイド。




 こうして見事にここに四角関係が成り立ってしまうのだった。

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