164 / 437
第九章:道に迷う
9-8村の封印
しおりを挟む村の結界の封印が不幸にも壊されると、しばらくしてこの地に地鳴りが始まった。
「な、何ですかこれ?」
「なんかゴゴゴゴゴぉ~って言ってる!!」
ものすごい揺れという訳ではないけど地面が揺らいでいる。
この世界で地震って感じた事が無い。
だからこの地鳴りも地震ではないだろう。
そしてイリカさんを見るとやはり動揺している。
「分かりません、こんなの初めて。まさか結界が壊れたから?」
イリカさんはそう言って青ざめる。
不注意で村の結界を壊した張本人なのだから。
しかしいくら結界が壊れたとしても地鳴りがおこるってあるのだろうか?
私は不安がっているイリカさんに言う。
「とにかく長老さんに聞きに行った方が良いのでは?」
「そうですね、行きましょう!!」
私は長老さんなら何か知っているかもしれないと思い、そう提案する。
イリカさんもすぐにそれに同意して私たちは長老さんの家に向かうのだった。
* * *
「あんれまぁ、エルフの嬢ちゃんにイリカでねか、どったん?」
「あ、お婆さん! 長老さんは何処ですか? この地鳴りってなんだかわかりますか??」
慌てて長老さんの家に来たけど姿が見えない。
仕方なく家の中を探していたらお婆さんがいたので長老さんが何処か聞いてみる。
「あんれま、あの人さ畑で問題さあった言うて村のんと行ったがに」
「ええぇとぉ……」
やっぱり分かり辛いコモン語だった。
なんか用があって出かけてるっぽいのは分かる。
でも正確には何言ってるか理解できていない。
するとそんな私の様子を見てイリカさんが言う。
「どうやら畑に行っているみたいですね、村の人と」
「イリカさん、分かるんですか!?」
「伊達にここに住んでませんよ。長老は畑ですね、行ってみましょう」
ナイス、イリカさん!
イリカさんに説明してもらい何を言っていたか理解した私はお婆さんに言う。
「お婆さん、長老さんの所へ行きますね!」
「ほうかい? んだば気ぃ付けてな」
私はそう言ってお婆さんに畑行くと伝えて急いでイリカさんについて畑へ向かうのだった。
* * *
村の畑は北側の森がぽっかりと開けた場所にあった。
そこは結界内なのだろう、普通の畑だった。
まさしくほのぼのとした田園風景。
しかしそこにあろうはずの無い者がいた。
私は思わずそれに声を上げる。
「何あの化け物、魔物!?」
「お姉ちゃん下がって!!」
「あ、あれはオーガ!? なんで村の中に!?」
到着した畑の真ん中に化け物が立っていた。
屈強そうな身体に人の倍近くあるのではないだろうかと言う程の巨体。
申し訳程度に腰に布らしきものを巻いている。
そして肌は赤茶色く、いかつい顔には角が生えている。
イリカさんがオーガと言った。
あれが鬼。
確かに鬼そのものだった。
そんな化け物を見ていたらルラが叫ぶ。
「お姉ちゃんあそこ! 長老さんが!!」
ルはそう言って駆けだす。
「あたしは『最強』!!」
「長老さん!!」
まずい、オーガの陰に隠れて発見が遅れたけどそこには間違いなく長老さんの姿があった。
もし伝承の通りであればオーガは狂暴で場合によっては人の肉も食べる。
長老さんのようなご老体なんか一発でやられてしまう。
このままでは!!
『あんれぇ、ずいぶんめんこい娘っ子だなや。長老、あれが言っとったエルフの娘っ子かえ?』
「ほうさな、うちさ泊めてんだ。それよりお前さんちぃと見んね間にえらい体さおっきくなったすな?」
ルラはチートスキル「最強」を使って長老さんを助け出そうとしたら長老さんはほのぼのとそのオーガと話をしている。
『なんさ言うがね? おらぁ今までどおりっぺ? おんや、服破れとんけね??』
「あれ?」
ルラは拳をそのオーガに叩き込もうとして止める。
そして更に驚くことが目の前で起こった。
みし、みしみしみしみし!
びりびりびりっ!
むきむきむき……
「え? あ、あれぇっ!?」
ルラが素っ頓狂な声を上げる。
でもそれは誰だって目の前でそうなれば同じだろう。
「ちょ、長老さんがオーガになっていく!?」
「ちょ、長老!?」
それは正しく変身と言ってもいいだろう。
長老さんはその体を膨らませ、衣服を破りながらオーガの姿になってゆく。
『あんれぇ? 何ぞ体さおっきくなっでねか?』
『んだよ、長老さまるでオーガみたいだなや!』
いやいや、オーガになってんのよ!
いったいこれってどう言う事!?
その光景に私もルラもそしてイリカさんも驚愕するのだった。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる