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第九章:道に迷う

9-1街道

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 ドドスの街を出てとぼとぼと街道を歩いている。

 
 ドドスの街から南へ向かう街道は歩きだと目的の港には大体二週間くらいで着くらしい。
 なので街道を歩いているのだが流石にキャラバンの時とは違いその歩みは遅い。


「ふわぁ~、歩いても歩いても先に進んだ気がしないねぇ~」

「うん、思ったより進まないもんなんだね、歩きって」


 周りの岩肌がごつごつした風景は全くと言って良いほど変わってない。
 時たま林の様なものが有るけど、後は所々に雑草が生えているくらいかな?

 幸いなことに今の所魔物には遭遇していない。


「あと少し進んだら野宿の準備しましょ。流石にこの辺には小川が無いからポーチから水を出さなきゃだね」

 一応水とか食料とかもエルフの魔法のポーチに沢山しまってある。
 このポーチ、見た目はリンゴ二個くらいしか入りそうにないけど実は中が数次元ポケットのようにいろいろなものが入る。
 しかも食べ物なんかは入れたその時のままなので鮮度とかが落ちないので大変助かる。


「カリナさんたちと野宿してたから大丈夫と思ってたけど、やっぱり自分ですべてするのって大変なんだね~」

 そろそろ頃合いと思い、野宿できそうな場所を見つけて街道からやや離れる。
 岩場を背に付近を大地の精霊に奇麗に整理してもらい、焚火台やかまど、寝床となる台座を作ってもらう。

「ルラ、それでも私たちには精霊魔法があって同じ野宿でもまだいい方なんだよ?」

「うん、それは分かるけどやっぱりいろいろと面倒だよね?」

 キャンプとかした事のある人は分かると思うけど、大自然の中で寝泊まりするにはいろいろと準備が必要だ。
 明かりだってそうそう簡単には準備できないし、火だって水だって確保が本来難しい。
 更に言うなら食事の準備だって野宿でするときは如何に簡単で後片づけが便利なものにするかが重要となって来る。
  
 とにかくやる事がずっと増える。


「ルラ、近くで薪になりそうなもの探して来て。この先のこと考えると手持ちは温存しておきたいから」

「うん、分かった~」

 ルラに薪を拾ってきてくれと言うとルラは近くの林に行く。
 そして薪でも拾うのかと思ったらいきなりチートスキルを使う。


「あたしは『最強』!」


 ばきっ!


 めきめきめき……
 ばった~んッ!!


 チートスキル「最強」を使いながらいきなり目の前の木を殴って倒す。
 そして手刀で木をバラバラにしていく。


「うぉおおおおおぉぉぉぉっ!」

「こらこらこらぁっ! ルラ、生木じゃ燃えない! 落ちた枝で良いの、乾いたやつ!!」


 もしこの子を放っておいたら環境破壊しまくるだろうなぁ……
 そんな言葉が頭の片隅をよぎる。

 が、そんな考えもつかの間だった。


「ぐるるるるるるぅ!」


 林の中から子供くらいの身長で全身緑色っぽい腰に申し訳程度布を巻いた魔物が現れた。


「ゴブリン? こんな所にもいるんだ、ゴブリンって」

 仕方なくポーチから薪を取り出していたら大木を薪に手刀で変えているルラの近くにゴブリンたちが現れる。
 数はざっと十匹。
 

「ルラ、ゴブリン、ゴブリンだよ!」

「へっ? あ、ほんとだいつの間に」


 いや、きっとあんたが木をなぎ倒したので出てきたんだと思う。
 ゴブリンたちはなんか私たちを見てひそひそ話している。

 もしかしてエルフの娘二人だから襲ってしまおうかとか、ルラが異常だから要注意だとか言っているのかな?


「ぐろ?」

「ぐろろろ、ぐろ!」

「ぐろろろぉ~」


 こうして冷静にゴブリンの様子を見ていると一応は知恵があると言うのが分かる。
 一説ではゴブリンは子供並みの知恵はあるらしい。
 もっとも、その行動は限りなく欲望に忠実らしいけど。


「うーんと、君たちあたしとやり合うつもり? あたしは『最強』だから君たちが敵うとは思わないけどね?」


 ルラも手を止めゴブリンに向き直る。
 それを見たゴブリンに動揺が走る。

 少なくとも素手で木を倒すエルフの少女。
 どうあがいても勝てそうにない。
 
 だとすると……


「ぐろっ!」

「ぐろぐろっ!!」

「ぐろろろろぉ~!!」


 あ、やっぱり一斉に私に向かって来た。
 私は既に土の精霊にお願いをしてゴブリンと私の間の地面に薄皮一枚残した穴を掘っていた。


「あっ、お姉ちゃん!!」

「大丈夫、大丈夫」


 ぼこっ!


「「「ぐろっ!?」」」


 哀れゴブリンたちは私の準備した落とし穴にそのほとんどが落ちた。
 何匹か後続はそれを見て慌てて立ち止まり一目散に林の方へ逃げて行く。

  
「えっと、お姉ちゃん逃げたのどうする?」

「追っても面倒だから放っておきましょ。それよりこいつらどうしよう?」

 私は穴の淵まで行って下を覗くと結構な高さがあった。
 ここまで深くするつもりはなかったけど、土の精霊ノーム君が頑張ってしまったらしい。

 ひょこひょこと泥人形の可愛らしい人の姿を取ったノーム君がやって来る。


「ありがと、でもこのゴブリンたちどうしようか?」


 私がそうノーム君に聞くと埋めてしまって大地の栄養にでもしようとか言っている様だ。
 流石にそれは私も後味が悪いので簡単には上ってこれないからそのまま放置する事とする。

 ノーム君、残念そうにするけど、仕草だけはかわいらしい。
 実際に提案している生き埋めはかなり残酷だけどね。

 私はゴブリンを放置してルラを呼んでご飯の準備を始めるのだった。


 * * * * *


「さてと、そろそろ出発しましょか?」

 
 簡単な朝食をとって出発をしようとする私。
 しかしルラはあの穴を見て私に言う。 


「お姉ちゃん、ゴブリンたちいなくなってるよ?」

「え?」


 あの穴を一晩かけてよじ登った?
 いやいや、そう簡単には登れないはず。
 下手すれば怪我だってしているはずなのにどうやって?


「あ~、なんか横穴があるね。あの穴から逃げたみたい」


 ずっと下を見ていたルラはそう言って指さす。
 そう言えばゴブリンって穴掘りも得意だって聞いたな。

 エルフの村ではゴブリンは害獣扱いで、見つけたら追い払うか弓矢で倒すかだった。
 もっとも村まで来た事は無いけどね。
 たまに迷いの森に迷って入ってくるのがいるって聞いたくらいだけど。


「うーん、やっぱり追っ払うようにした方が良いかな? 仕返しとか来ないよね?」

「多分大丈夫だろうけど、今後やっぱり魔物はやっつけるか追い払う方が良いかもね~」


 そんな事を言いながら出発をする私たちだった。


 * * * * *


「ま、迷った…… なんでぇっ!?」

「うーん、なんか途中から標識とか道しるべがめちゃくちゃだったけど、それのせい? なんかこん棒や何かで殴った後もあったよね?」


 本来南の街道はそんなに分岐点が無いはずなのにいつの間にやら道を間違えたようで森の中にいる。
 ルラに言われて思い出してみればまるで何かに殴られたりして道しるべとかがめちゃくちゃだったような気もする。

 森自体は問題無いのだけど、道が無くなってしまったために何処を歩いているか分からなくなった。


「どうしよう……」

「取りあえずここに居ても仕方ないから先進もうよ~」



 ルラにそう言われて私たちは道なき森を先にに進むのだった。  

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