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第六章:ドドス共和国

6-11賢者の石

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「このぉ!」


 カリナさんは剣を抜きながらジュメルの神父に飛び込み切りつける。
 が、見えない壁に阻まれてその剣は途中で止まる。


 がんっ!


「ふん、エルフ如きがこの防壁を破れるものか! 貴様らにはジーグの村で邪魔をされた。ちょうどいい、今ここでその報いを受けるがいい!!」

 その神父はそう言って片手をカリナさんに向ける。
 と、カリナさんは慌ててその場から剣を手放し転げながら避ける。


 ぼしゅっ!


 変な音がしたと思ったらカリナさんの手放した剣が一瞬で真っ赤になってその場で溶けてしまいぐにゃぐにゃになって床にボトリと音を立てて落ちる。


「ふん、カンの良いやつだ。あのまま剣を握っていれば一緒に焼け死んだものを」

「ちっ! 水の精霊よ!!」

 カリナさんは転げながらもいつの間にか水筒の蓋を開けてその中の媒介の水を使って水の精霊を呼び出した。


「水の刃よ、我が敵を切り裂け!!」


 エルフ語でそう言うと水の精霊は水筒の水をまるで水の刃のように薄く引き伸ばし神父に切りつける。


「無駄だ!」


 パシャんっ!


 しかし水の刃は神父に届く前にその力を失いただの水滴に戻り床を濡らす。


「なっ!? 精霊力がかき消された!?」


「カリナ下がれ!! うぉおおおぉぉっ!!」

「このぉっ!」

 驚くカリナさんに代わり剣を抜いていたトーイさんとザラスさんが斬り込む。
 しかしやはりカリナさんと同じく見えない壁でその剣は弾かれる。


「トーイ、ザラス剣を捨てて引いて!」


 カリナさんがそう叫ぶとトーイさんもザラスさんもカリナさんと同じく剣を手放しすぐにその場から飛び退く。

 するとトーイさんの剣もザラスさんの剣も宙でカリナさんの剣と同じく真っ赤になって溶け出し床にボトリと音を立てて落ちる。


「なっ!?」

「お、おいっ!」

「駄目よ、やつに触れようとすると周りの温度をやたらと上げていて触るものすべてを燃やし尽くすわ。精霊力が変に渦巻いている。こんな事って……」


カリナさんはそう言ってその神父を睨みつける。


「【水壁】!!」


しかしそんな所へネッドさんが唱えていた呪文が完成してその神父の周りに水の壁を出現させる。

「どう言う原理か知りませんがその高温を拭い去ってしまえばいいのです!!」


「無駄だ。一介の魔術師にどうこう出来るものではないわ!」


 神父はそう言って手を振るなんと水の壁が一瞬で煮え立ってもの凄い蒸気を放ちながら消え去ってしまった。  


 ぼしゅっ!

 ぶわぁっ!!


「熱っ!」

「ぶわっ!」

「くっ! 水の精霊よ!!」


 神父の前にいた前衛の三人は迫り来る高熱の蒸気をカリナさんの水の精霊が造りだした水の膜で何とか防ぐ。
 しかし、その勢いは衰えず凄い勢いで水蒸気が一気にこちらにまでやって来る。
 私は慌てて水蒸気を消し去る。


「うわっ! 『消し去る』!!」


 間一髪大やけどする所だった。
 あんなのまともにに浴びたらひとたまりもない。


「ふん、やはりお前か…… それとその後ろにいるエルフも。確かリルとか言ったな。貴様のそのスキルもしやギフトか?」

「なんだか知らないけど、あなたが天候を操っていたのね!?」


「そうだ、我が名はデベローネ、ジュメル七大使徒の一人よ」


 そう言ってデベローネと名乗ったその神父は経典をかかげ十字を切る。
 それから私に手を向ける。


「貴様は危険な存在だ、新たに授かりしこの力で灰になるがいい!」


 そう言って私に向けた手から空気が焼ける匂いがしてくる。
 とっさに私はチートスキル「消し去る」で熱を消し去る。


「目の前の熱を『消し去る』!!」


 するとさっきまでチリチリと熱くなっていた目の前の空間が一瞬で熱を失う。

「ちっ、この力をも消し去るとは。そのスキル、本物か!?」

「ごちゃごちゃうるさい! あたしは『最強』! お姉ちゃんに手を出すなあっ!!」


 ばっ!


 どごっ!


 いきなり後ろから飛び出たルラが「最強」スキルを使ってデベローネ神父を殴り飛ばしに行く。
 しかし神父の目の前にはいつの間にか鎧を身にまとった骸骨がルラの拳をその盾で受け止めていた。


「あれっ!? うわっ!」


 その骸骨は見た目に反してもの凄い力でルラを弾き飛ばす。
 そして腰の剣を引き抜きルラに対峙する。

「なんだかわからないけど、こいつも悪いやつだね? よぉし、あたしは『最強』! 行くぞっ!!」


 ばっ!


 ルラは「最強」スキルを使って飛び込む。
 すると骸骨は剣を振りルラを切り裂こうとするもルラもその剣を寸での所でかわしてしゃがみ込んでその足元をすくう。
 予想外の動きに骸骨は足元をすくわれるけどそれでも体をひねりながら返す剣をルラに叩き込む。

「くっ!」
 
 流石にこの体勢から剣をかわすので精一杯なルラは転げながらその一撃を避ける。
 そして起き上がりざまに今度は最強スキルと防御へと回す。


 がんっ!


「へへへへ、あたしはもう防御も『最強』なんだよ! それっ!」

 倒れた鎧はそのままルラに剣を投げつけていたけど防御を最強スキルで上げていたルラは腕でそれを弾き飛ばし、また駆けだす。

「あたしは『最強』! 喰らえ必殺ぱーんち!!」


 どごっ!


 ルラの一撃は起き上がって盾を構えた骸骨を盾ごと吹き飛ばす。
 そして向こうの壁まで吹き飛ばし続けざまに飛び蹴りを喰らわす。

「必殺きーっく!!」


 ばぎゃっ!!


 骸骨はルラの飛び蹴りを喰らって鎧ごと粉々に吹き飛んでしまった。
 流石に頭蓋骨もバラバラに砕け散ったからお約束の再生もできないだろう、多分。

「なんだと? ドラゴンの牙から作ったドラゴンスケルトンがやられただと!?」

 ジュメルの七大使徒、デベローネ神父はルラに骸骨がやられて驚いている。
 しかしまた手をかかげて握ったそこからぽろぽろと何かを落とすとそれがどんどん膨らみ先ほどの鎧をつけたあの骸骨になってゆく。

「ふははははは、いくら貴様が強くともこれだけのドラゴンスケルトンを相手には出来まい。やってしまえ!」

 デベローネ神父がそう言うと鎧骸骨は一斉にルラに飛び掛かる。

「うわっ! 卑怯な、あたしは『最強』!」

 飛び掛かる鎧骸骨にルラは「最強」スキルで対応するけど、流石に多勢に無勢で何体か倒しても次々と襲ってくるそれに押され始めていた。


「馬鹿な、あれほどのドラゴンスケルトンを一度に作り上げるなんて! そんな膨大な魔力があるはずがない!!」


 ネッドさんはデベローネ神父が使った魔法の消費魔力に驚いている様だ。
 確かにあんなに沢山の鎧骸骨を発生させるなんて相当な魔力を使うだろう。


「ふははははは、貴様らでは出来んだろう、しかし我にはこれがあるのだ!」


 そう言いながら掲げた腕を裏返し、その中指に輝く真っ赤な宝石を見せびらかせる。

 何なのだろう、あの真赤な宝石は?
 男のくせして指輪の宝石を見せびらかしているっての?

 しかしネッドさんはそれを見てわなわなと震えている。


「ま、まさかそれは、いや、しかしそれはもう遠の昔に遺失したはず……」

「何なのよネッド!?」


 何かに驚いているネッドさんにカリナさんは注意深くデベローネ神父を見ながら聞く。
 するとネッドさんが答えるより早くデベローネ神父はいやらしい笑みを浮かべて言う。

「ふはははははは、分かるか、これこそが賢者の石だ! そう無限の魔力を生み出す秘宝なのだよ!!」



 デベローネ神父は声高々に笑いながらそう言うのだった。
 
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