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第六章:ドドス共和国

6-4ユエバの街食べ歩きツアー

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 商業ギルドのドドス共和国行きのキャラバンが大雨による街道の川の氾濫でそれが収まるまでしばらく動けない事を聞いて私たちはしばしこのユエバの街に滞在する事となった。


「ここはね、『冒険者の街』って言われて近くの大迷宮は勿論、近隣にはまだまだ遺跡が沢山有ってしかも素材となる魔獣や鉱石も取れるのよ。三国の国境付近で一番大きなイザンカ王国領でもあるけどね」

 カリナさんはそう言って街中を歩きながら説明をしてくれる。
 そしておもむろに露店に吸い込まれていきそこで売っている串焼きを人数分購入する。


「これこれ、ドラゴンフライの串焼き! これって意外とサクサクして美味しいのよねぇ~」

「ドラゴンフライ? 何ですかそれ??」

「とにかく食べて見なさいよ、美味しいんだから」


 手渡されたそれは白っぽくなっていてなんか鶏皮のやきとりっぽい。
 カリナさんがおいしそうに食べているのを見て私たちも食べてみる。


 さくっ!


「こ、これは! 鶏皮よりあっさりしているのにまるで油で揚げたかのようにサクサク! しかも何とも言えない味わいで薄味なのにその食感が面白くてついつい食べちゃう!?」

「さくさく、これ美味しいねえ~」


「うーん、相変わらずカリナの奴はこう言った変わり種好きだな?」

「まあ、これはこれで食べ歩くには悪く無いんだがね」

「久しぶりに食べますが、カリナが買わなければ普通は買わないですよ」


 ルラはサクサクとすぐに食べ終わってしまった。
 物欲しそうにまだ露店を見ているとカリナさんが言う。

「ルラ、ユエバの街にはまだまだ美味しい露店が沢山有るから今は我慢しておきなさい。他にも美味しいモノ沢山有るんだから」

「う~、わかったぁ~」

 サクサクと私も食べ終わり確かにこれなら二本くらい行けそうだなと思う。
 ただ、食べた事の無いその味と食感は一体何なのか気になるけど……


「お、次々~!」


 私がこれがいったい何か聞こうと思ったらカリナさんは既に次の露店に行っていた。
 そしてヤシの実みたいなのにストローが刺さってるのを人数分購入する。

「カリナ、これって……」

「飲んでみないと分からないから面白いんじゃない? ほら、リル、ルラ」

 ネッドさんが何か言いかけているのを無視してカリナさんは私たちにそのヤシの実みたいなのを手渡して来る。

 ストローが有るのだからやっぱり飲み物よね?
 カリナさんは躊躇なくそのストローに口をつけて飲み始める。


「ん~、あまぁ~いぃ。まあ、こんなもんかな?」


「知らねえぞ、誰かが当たっても」

「ま、そんときゃそん時だ。街中だから大丈夫だろう」

 カリナさんが飲んでいるのを見てトーイさんとザラスさんはそんな事を言っている。

 なんかさっきから気になるような事ばかり言ってるけど、なんだろう?


「お姉ちゃん! これすごく甘くて美味しい!! なんかよく冷えてるし!」


 私がそんな事を思っているとルラは既にストローに口をつけて飲み始めていた。
 まあ、毒ではないだろうから私も口をつけて飲み始める。


「んっ! これって乳酸菌飲料みたいな味!? 原液を水で薄めるアレみたいな!?」


 生前有名な乳酸菌飲料の味によく似ている。
 あれよりもう少しさっぱりとしているけど、これって正しくあの白い乳酸菌飲料と味がそっくりだ。
 先ほどのサクサクで喉が少し乾いていた所によく冷えたこの飲み物がとても合う。


「ぷはぁ、これ美味しいですね!?」

「でしょう? 私これ結構気に入ってるのよ~。熟したやつは特に美味しいのよね~」


 にっこりと笑うカリナさん。
 うん、これってエルフの味覚にも十分合っている。

 思わずニコニコ顔で私はそれを飲み続ける。


「あ~、リル、悪い事言わないからゆっくり飲め……」

「そうですね、特にストローつかってますからね」


 なんかザラスさんとネッドさんが言っている。
 もしかしてまだ他の露店に行くから飲み物取っておけって意味かな?

「ユエバの街って食べたり飲んだ事の無いもの沢山有るねぇ~」

「ほんと、これって買い置きしておこうかな?」

 魔法のポーチにはまだまだ余裕があるからこのヤシの実みたいなの買い置きしてもいいかも。
 そんな事を考えていると既にカリナさんは他の露店に行っていた。

 私たちは慌ててカリナさんの後を追うのだった。


 * * * * * 


「いやぁ~意外でした。露店の食べ物ってかなり美味しんですね~」


 なんかとても気分が良い。
 あの後カリナさんに連れられて行ったお店はどれもこれも食べた事の無いモノばかりだった。
 その都度トーイさんやザラスさん、ネッドさんが苦笑していたけど。
 でもおかげでお昼ご飯も夜ご飯もいらない位にお腹がいっぱいだった。


「うぅ~ん、もうたべられなぁ~ぃ」

「うん、私もぉ~。あ、あれ? なんかふらふらするぅ~」


 もの凄く気分が良いのでまたあのヤシの実ジュースを飲む。
 これって当たりはずれがあるのかな?
 既に三個目を飲み始めると中にはなんか薄いのがある。
 
 あの乳酸菌飲料に水を入れ過ぎたかのような味がするのがある。
 ああ、でも運動とかしてとても喉乾いている時は薄めの方が美味しく感じるんだけどね。


「おいおいリル、お前に当たってたか?」

「ああ、こりゃ確実に当たってたな」

「まあ、毒じゃないですから大丈夫ですけど」


 なんかトーイさんたちが言っている。
 ふらふらしてトーイさんたちの顔もなんかぐにゃぐにゃしてきた。


「あ、あれぇ~? にゃんかトーイさんたちの顔、おきゃしぃ~ きゃはははははっ!」


「お、お姉ちゃん?」

 何だろう、とても気分が良いしふわふわしてきた。


「うーん、まさかのリルに当たったかぁ。これだから『テキーラの実』は面白くてやめられないのよ」

 カリナさんは嬉しそうにそう言ってる。
 そしてカリナさんもアレを飲んでいる。

「ぷはぁっ! 私の発酵がまだ弱いからそれほどじゃないけど、濃い味は特に発酵が進んでいるから時間を置いて効いてくるのよね~。リルのはだいぶ濃かったみたいね?」

「ひゃい?」



 ニヤニヤしているカリナさんの顔がぐにゃりとなって私は意識を失うのだった。

 
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