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第五章:足止め

5-12黒龍不在

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 わさびを探しにジマの国の山間部に入っていた私たちはたまたま見つけた古代遺跡でとんでもないメッセージを見つけてしまった。


「とにかく急いでこれを黒龍様に見せないと」

「ああそうだな、しかしジーグの民って連中はこの事知らないのか?」

「だろうな、元ローグの民の分家だ。しかもディメア様を殺してその怒りを黒龍様から受け一度は全滅しかかっているんだろ? だったらこの話がちゃんと伝わっているかどうかも怪しい」

「それにジュメルとか言う秘密結社、ジーグの民はそれと手を組んでいるようですね。となればなおさら真実は知らないでしょう」


 カリナさんたちは急いで出口に向かいながらそう話している。

 ジーグの民ってとんでもない連中だと思っていたけど実は彼らも被害者だった。
 遠い過去の話が歪み伝えられそして恨みだけが募ってゆく。

 そんな不幸、早く終わらせなければいけない。


「急ぎましょう!」


 私もそう言って急ぎお城に戻るのだった。


 * * * * *


「黒龍様がいない?」


「ああ、ベルトバッツ様が黒龍様にご報告に参られた後にクロ様、クロエ様を引き連れてお出かけになられた」


 お城に戻り急ぎコクさんに会いに行ったら何処にもいない。
 仕方ないので摂政のヒュードさんに聞いたら出かけたとか。
 しかもベルトバッツさんが来て報告をした後にクロさんやクロエさんを引き連れてだ。


「まさかジーグの民の隠れ家でも見つけたのか?」

「あのローグの民のベルトバッツさんってのが報告に来たんだろ? 間違いないだろう」

「まずいですね、今回の件で黒龍様のお怒りを受けかねない」


「あああぁっ、本当に間が悪い!!」


 トーイさんやザラスさん、ネッドさんにカリナさんも頭を抱える。
 まさかこんなにタイミング悪くすれ違うとは。


「すみませんヒュードさん、コクさんたち何処行ったか分かりませんか?」

「さあ、黒龍様は何時もふらりと現れそしてふらりといなくなられる。どちらに行かれるか聞いても『野暮用だ』とだけ仰っていたからな……」


 駄目だこりゃ。
 これって完全にジーグの民を殲滅に行ったって事だよね? 


「あれ? そう言えばあの遺跡で捕まえた黒ずくめはどうなったの?」

 ルラがそう言って私たちは一緒に居たあの三人のローグの民を思いだす。


「そうよそれ! えーと、確かソルスタさん、アビシュさん、ボッシュさん! いるなら出て来て!」


 カリナさんはすぐにあの三人を呼ぶ。
 するとあちらこちらのモノ影からすっと忍者装束にスキンヘッドのあの三人が現れる。


「お呼びでござるか?」

「良かった、あの洞窟で何が有ったか知ってる?」

「ディメア様の事でござるな?」


 あの後の事をこの三人も知っている様だった。

 
「だったら話は早い、黒龍様が何処へ行ったか分からない? この水晶を何としても黒龍様にお渡ししなきゃ!」


 カリナさんは懐からあの水晶を大切そうに取り出す。
 しかしこの三人はじっと黙っている。

「どうかしたの?」

「黒龍様はジーグの民と話し合いにいかれたでござるよ」


 話し合い?
 あれだけ大騒ぎをしてそれで話し合い??


「それ、本当?」

「……本当でござるよ」


 あれ?
 なんか歯切れが悪い。

 私はおかしく思って彼らを見るとなぜか視線を外す。


「んん~?」


 それに気付いたルラも彼らを見るけどさらにこの三人は他の所へ視線を外す。


「……何か知ってるわね?」


「い、いや、我らは何も知らんでござるよ!!」

「そ、そうでござる、ベルトバッツ様が速攻で『至高の拷問』できゃつらを骨抜きにしてきゃつらの里のありかをしゃべらせたなど全くと言って良いほど知らないでござる!!」

「そうでござるよ、しかもリル殿たちに心配かけないよう黒龍様のご配慮で行先を口止めされているなどと言う事は決してござらん!!」

  
 いや、思い切り喋ってんじゃん!!
 ローグの民のこの三人、えーとソルスタさん、アビシュさん、ボッシュさんは私たちに詰め寄られ脂汗を流している。


「そ、そうだ、我々は用事が有る故これにてごめんするでござる!!」

「おお、そうであったでござる!」

「申し訳ござらんでござる!」


 そう言って三人とも逃げ出そうとする。


「あたしは捕獲も『最強』!」


 一瞬で逃げ出そうとするこの三人だったけど先にルラが動いた。
 しかもチートスキルまで使って一瞬でこの三人を捕まえる。


「何と!? でござる!」

「まさか我らを捕まえられるとはでござる!!」

「ルラ殿は一体何者でござるか!?」


 まあチートスキル使われたらこの世界で太刀打ちできる人っていないと思う。
 しかし、こんな使い方まであるなんてこのチートスキルまだまだ使い方次第でいろいろできそうだ。


「よくやったルラ! それじゃあ大人しくしゃべってもらおうかしら?」



 カリナさんはそう言ってこの三人ににっこりと笑うのだった。

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